第十三章 キセキ 過去編二幕
一直線に伸びる刃に
歪みや迷いは無し
私の戦い方は、主に自分で作った『刀』を握る。私はその刀に、『残桜』と名付けている。
例え大風に襲われようと、季節外れの冷たい雪が降ろうとも、散らずに残った桜の様に、強く勇しい刀・・・という意味合いを込めた。
鉄の段階から叩き上げ、鍔・鞘も自分で作り、今も手入れをして、一度も欠けた事はない。
元々母の家系は、自分で一から作った刀で妖怪や悪霊を斬り、陰陽師として名を残していた。私は学校などに行けなかった分、刀造りに精進できたから、色々と試行錯誤してようやく完成。
鍔には桜をあしらい、鞘には金箔で季節の花を描いた。その出来栄えに、両親だけではなく天野原の皆が絶賛してくれた。
多分、私が外に出て狙われる要因の一つが、この刀なのかもしれない。値打ちがあると思ってくれるのは一向に構わないんだけど、これは金儲けの為に作ったのではない。
この刀には、邪気を払い、この世を影から乱す存在を切る事のできる、特別な能力を持っている。
通常、妖怪や悪霊は、対人間用の武器は通用しない。例えどんなに鋭い刃でも、簡単に取り扱いのできる銃でも。妖力の低い存在にはある程度通用するけど、妖力や呪力が強い存在には、逆効果になる事も。
この刀は、『命有し存在』にも『命亡き存在』にも通用する、とても特殊な刀。
『命亡き存在』の未練などを絶ち、『命有し存在』には罰を与える。私はこの刀で、幾多もの異変を解決へ導いた。
でもいくら刀が強くても、持ち手である私の技量も必要となる。でも、私に剣術の師範はいない。殆ど自分の独学で剣術を学んだ。
一度天野原を出て、ちゃんとした道場で修行しようと思った事もある。でも私の『本職』は、天野原の村長であり、陰陽師ではない。だから私は独学を選んだ。
暇さえあればいつでも稽古ができるし、自分に合った戦い方をみっちり研究する事ができた。
私は元々体が細いから、腕力などははそれほど強くない。でも、体の柔らかさは皆から驚かれるほど良い事が分かった。
また私は体力が並の男性以上あり、周りをよく見ながら適切な行動を瞬時に行える。両親から昔、「周りがよく見えているという事は、とても良い事なんだよ」と教わった事があるけど、その通りだと思った。
例え相手が多数だったとしても、自分がいかに不利な状況に立っていたとしても、考え方一つで結末が大きく分かれる。
私はあらゆる局面を経験しながら、自分なりの戦い方・答えを導いていた。




