第十七章 村の子供視点 絶望にのしかかったのは・・・
ザッ ザッ ザッ
「・・・・・?」
何処からか、足音が聞こえる。こんな夜中に村を出歩けばすぐ捕まる筈、なのにその足音の主は、落ち着いた様子で歩き続けている。
音に気づいたのは俺だけではなく、蔵に居た数人も気付いて、壁の穴から外を覗き込む。
村長にしては、足音が軽いし、足音は聞こえるのに灯りは見えない。村長は普段、夜中に出歩く際には、付き人に灯りを持たせる筈。
それに、村長の足音にしては軽すぎる気がした。「もしかしたら、誰かが脱走している最中なのかもしれない。」と、久しぶりに湧き上がった希望。
しかしそれと同時に、「きっと今回もダメなんだろうな・・・」という、絶望も湧き上がった。そんな心の摩擦は、足音が近付くと同時に強くなり、胸が苦しくて、熱くなる。
体がウズウズして、今すぐにでも蔵から飛び出して、足音の主を確かめたい。でも、体の痛みと村長への恐怖で、なかなか前に踏み出せない。
蔵の扉にはいつも鍵がかかっているけど、隙間を潜り抜ければ外へは簡単に出られる。俺は意を決して、すぐに隙間からは外に出ず、隙間から外の様子を覗き込んだ。
灯が灯っている家は、村長の屋敷以外には見られない。だから辺りはかなり真っ暗だ。
こんな状態で足音の主を見つけられるか不安だったけど、この暗闇で夜を過ごす環境に慣れているから、輪郭だけなら判別できる。