第十七章 村の子供視点 絶望にのしかかったのは・・・
闇に覆われた村に
「・・・じゃあサバネ兄さんは・・・」
「あぁ、きっともう・・・」
「・・・・・」
最初から諦めてた、なんて言えない。今この状況を生き残る為には、例え妄想でもいいから、希望への道筋を信じるしかないから。
そうじゃないと、遅かれ早かれ、私達の気は狂ってしまうんだろう。もう私の友人の何人かは、気が狂ったまま行方知れずになった。
この村から無事に逃げ出したのか、それとも息絶えてしまったのか、私達が知る事はできない。知ろうとすれば、私たちも行方知れずになった人達の二の舞になるから。
此処では、いかに自分の『心』と『思考』を表に出さないかで、生死が別れる。少しでも自分の色を濃く出してしまうと、後々どんな結末になるのか、考えたくもない。
幸い、逆らっても命が助かった村人もいるけど、もう普通の生活を送れないほど、体と心が壊れていた。
もう正気を保っている村人も少ない、俺自身も、明日命が終わるかもしれない状態。
でも、だとしても此処から逃げ出す事なんて、できるわけがない。村の周りには銃を持った人が数人、朝も昼も夜も、鋭い目で見回っている。
運良く逃げ出せたとしても、山の中を身一つで乗り越える事なんて、不可能だ。見つかってしまえばもう最悪、今までに脱走に失敗した人は、俺達の前で晒された。
耳が割れる様な悲鳴、背けられない現実と光景、日に日に蝕まれていく心。もう過去にどんな生活をしていたかのかも、忘れている。
村の風景も随分様変わりしてしまった。もうあの村長以外の家は全て取り壊されて、畑を化してしまった。
村長は言っていた、「金が払えないのなら、家を壊して畑にしろ」と。僕達家族が長年住んでいた家も、野菜の住処になった。
毎日毎日、休み無く働かされて。後ろでは常に銃や刀を持った大人が見張っている。疲れて倒れ込んだ子供が、例え女の子でも、大人は容赦無く武器を俺達に向ける。
それに、ご飯も満足に食べさせてもらえない。一日一食、硬いご飯を一握りのみ。ご飯はとても冷たくて、噛む度にガリガリと音がする。大人に逆らって、ご飯を食べさせてもらえない子供も珍しくない。
お父さんとお母さんには、もうしばらく会っていない。今一体何処で、何をしているのかも分からない。
友達の噂では、俺達子供とは別の仕事をさせられて、その仕事は俺達よりもずっと大変な仕事らしい。
山に行って木を切ったり、村長の屋敷を掃除したり、村長の世話をしたり。
昔、俺達が山へ遊びに行った時、木を蹴って遊んでいたら、村長から注意された事があった。
「木にも命がある、心がある
君達は、蹴られて楽しいかい?」
って、優しい顔をしていたけど、声はすごく怒っていた。だから俺達は、蹴っていたその木に頭を下げて謝った。
その後村長は、俺達におやつをくれた。毎日木の実ばかりがおやつだった俺達にとって、そのおやつはとても色鮮やかで、木の実よりも甘かった。




