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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十六章 キセキ視点 事実と誤認

私は、やけに静かになったウメが気になって、一旦視線を後ろに向ける。でもそこに、ウメの姿はなかった。

慌てた私は男性に布を被せて、辺りをなるべく移動しないように見回したけど、何処にもウメの姿が見えない。

私の脳に、嫌な予感と『過去』が同時に流れ込む。冷や汗が出て、少し体がよろめいた。唾を飲み込み、左手を強く握り締める。そして私は、必死になって懇願した。


また『あの時の様な事』には

ならないでほしい と


でも、願っていても何も変わらない事を自分に言い聞かせた私は、倒れている男性の元へ戻った。とりあえず、男性の体を温めてあげようと、その場で即席の焚火を作り、傷口の処理をする。

持って来た包帯などで対処できるか分からないほど、男性の傷は多かった。私はどうにか、持って来た物で間に合わせようと試行錯誤をする。その間に、温めておいた水はお湯に変わった。

私は、処置とは別に取っておいた布にお湯を染み込ませて、手首や足首に巻きつける。

血管を温めれば、いずれ体中に熱が伝わる。そう信じて、私は持っていた水を全てお湯に変えて、時間を忘れて処置を続けた。

そして、真夜中を迎える頃。そろそろ私も睡魔と疲労が限界になりかけて、目の前が少し霞んで見える様になってしまう。

でも私は信じ続けた。彼がウメに賭けたのなら、私も彼に賭けたかった。今サバネに命を絶たれてしまっては、此処までの旅が全て無駄足と化してしまう。

行方が分からないウメが心配だけど、今はまず一人の事を優先して考えていた。同時に二人を目で追っても、結局見失ってしまうだけ。

とにかく目の前にいるサバネから目を離さず、私は必死に手を動かしていた。私自身、森に住む野生動物に襲われるか分からない危険な状態にいる事は、重々承知している。

でも、今から山を降りて医者を探しても間に合わない。だったら今この場で、できる事を精一杯こなして、彼を信じる。






「・・・・・・・




 ・・・うっ・・・・・


 ・・・うぅう・・・・・」


「っ!!!

 起きて!!!戻って来て!!!」

生命の流れは残っている

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