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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十五章 キセキ視点 見つけたモノ

そんな二人の珍道中はあっという間に過ぎて、とうとうこの山を降ればサバネの居る村に到着する。ウメは息を切らせながらも、一生懸命私に付いて来てくれた。

私は天野原近くにある山をよく登っているから、頂上まで休憩無しでも登りきれる。ウメはまだ山道を歩く事に慣れず、歩いている途中で転んだり、何度も息切れをしていた。

村までの道のりは、なるべく平坦で人気の多い道を選んでいた。けど、サバネの居る村に行くには、この山だけはどうしても避けられない。

途中で休憩を挟んだりしながら、徐々に徐々に登り詰め、やっと頂上近くまで辿り着いた。ウメは山を登っている最中、私に言っていた。「山頂から見える村の風景が好きなんです」と。

でもその村が、今どんな状態になっているのか分からない。良い意味で変わっているのか、それとも悪い意味で変わっているのか。

ウメが人に変化して私を探し、私を連れて此処に来るまで、どれだけの月日を要したのかは分からない。ウメが山を彷徨っていた時期が曖昧だけど、最低でも1ヶ月以上は経過していると考えた方がいい。それを踏まえた上で、ウメの過去話を合わせると、村が良い意味で変わっている考えはまず無いに等しい。

ウメが旅の目標にしているサバネも、今生きているのか、それとも死んでいるのかも分からない。でも私は、あえて口には出さなかった。せっかく此処まで来たのに、今更躊躇ってもいられない。

今の村の姿がどうであれ、仕事はきちんと遂行したい。途中で断念したりするのだけは一番嫌だから。

それに今回は、仕事の始終を見届けてくれるウメという存在も一緒に同行してくれた。それだけでも、この仕事にやりがいを感じる。

理解してもらえる事も、価値をつける事も難しいこの職。でも、「すごい」と思ってくれる人が一人でもいてくれるなら、これからも胸を張ってこの仕事が続けられる。

今回の旅で、つくづくそう感じた。旅の途中、私が過去に体験して仕事談義を聞いているウメの瞳は、とても輝いていた。

私の話を聞いた大抵の人間は、私を疑わしい目で見ていた。でもウメは、私の話を最初から最後まで全て信じてくれる。

私自身、自分の仕事に関して話をするのはあまり好きではなかった。けど、ウメと話をしている時だけ、何だか心が弾んでいた様な気分になった。

こんなにも真剣に、感慨深く私の話を聞いてくれる人は久しぶりだったから。

天野原に住む村民以外では、年を越して出会った様な感覚だ。でもこのたびももうすぐ終わってしまうと思うと、少し寂しい気もする。

でも、此処までの旅路は順調。後は問題の村のみ。ひとまず、村の今の状況を確認しないと作戦は立てられない。

だから山を少しずつ降りながら村の状況を確認して、まず異変の筆頭格である村長と顔を合わせる。

変に村人を刺激すると、収束できない事態にもなりかねない。この村の異変が全て村長絡みなら、村長さえどうにかすればどうにかなる。

作戦・・・といっても、私の作戦はだいぶ適当。あまり緻密な計算を作りすぎると時間が勿体無いし、いざという時動けない。

まず目標を決めてから、大まかな流れを組み立てて、即座に実行する。これが私の仕事のパターン。村長の居る場所まで辿り着けるかも、まだよく分からない。失敗したらまた作戦を練り直してもいい。

依頼人であるウメからの期限はないけど、「なるべく早め」を心がけるようにはしている。

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