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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十二章 キセキ視点 出発

でもその家族は、「旅をするのが楽しいから続けているんです」と、笑顔で答える。

子供達もとても良い子で、今までに旅をした思い出を自慢げに話していた。まだ幼いのに、海外の国で使われている言葉も分かるらしい。

私も海外の言葉については知識を持っているから、不思議と異国を訪れた様な感覚になる。

そんな私達を、他の旅人は唖然としながら見ている、ウメもだ。口を挟みたくても、交わしている言語がわからないと、手も足も出ない。

私も、異国の話で盛り上がったのは久しぶりだったから、ウメ達の存在を忘れて、その子供と話し込んでしまった。

でもウメはその時、晴れやかな顔で私達を見ていた気がする。それは、彼女の疑問が晴れた証拠だ。

私だって、家族連れの旅人が言ってくれた内容に同意する。自分が楽しいと感じた事を、他者が止める道理なんてない。

サバネがあの村に住み続けて、旅商人としての道を断ったのは、家族を失ったショックだけではないと思う。やっぱり、あの村での生活が楽しかったから。ウメや、村民達との触れ合いに、喜びを感じたから。


そして同時に、お茶屋ではサバネが居るであろう村の噂も聞く事ができた。そのどれもこれもが、だいぶ悪い噂。ウメは途中からその話に耐えきれずお茶屋を離れて、外の空気を吸っていた。

私でも、虫唾が走る様な内容だ。

権力と財力を振り回す村長は、村民からあらゆる財産・人材を奪い、男は外でただ働き、女は屋敷でただ働きさせられているらしい。

村にあった家屋を許可無く取り壊し、村長の住む屋敷の庭を広げているそうだ。そして、村に立ち寄った旅人からも大金を巻き上げている。払わない者は村に入れず、無断で入るとだいぶ酷い目に遭うらしい。

旅人の知り合いがその村に無断で潜入したそうだけど、その知り合いは未だに村からは出られていないそうだ。

しかも、ウメの住んでいた森に入るにも大金を払う必要があり、村を訪れる旅人は、悪い噂によって一気に立ち退いた。

村には村長の雇った警備隊が見回り、疲れきった村人に鞭を打つ始末。小さな子供さえも働かせているらしい。

話を聞いた旅人も、その村にある『生メル森』を観光したかったそうだ。きっとその『生メル森』とは、ウメの住んでいた森だろう。でも村に入るにも、森に入るにも大金をせがまれて、引き返したそうだ。

その側で、ウメが旅人に向かって、小さな声で「ごめんなさい」と言う。責任を感じてしまっているウメの顔は、暗く重くなっていた。

そんなウメに私は、「貴女が謝る事じゃないよ」と、小さな声で耳打ちする。

これ以上話を広げたらいけないと思った私は、ウメを連れてお茶屋さんを出た。



例えそれが「苦行」だったとしても・・・

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