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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十一章 キセキ視点 旅立ちと約束

そして出発前日の晩、私はウメと二人きりで、色々な決まり事の確認をする。ウメは人間の姿のまま、なるべく変化を解かない事。もしも変化を解きたくなったら、私に許可を得る事。

でもそれはどうしてなのか、ウメは私に聞いた。


「今回の村の異変にウメさんが関わっているなら、村長さん達は、今血眼になって貴女を探しているわ」


「??」


「まぁ、事件の全容が明らかにならないと、異変の原因が何なのかは、まだはっきりしないけど


 でもよく考えて

 今まで大切にしていた家族を、何の躊躇いも無く傷つけた村長さんが、その一部始終を目撃してしまっ

 た貴女を野放しにすると思う?」


「そっそんな・・・!!!」


ウメは立ち上がって反論しようとするが、言葉が出ずにゆっくり座り込んだ。

彼女が言い返したい気持ちも分かる、酷な事実を認める事は、とても難しい事。否定した方が、心情が楽だから。

でも、ウメは自分の目で見てしまった。豹変した村長さんの、身震いする殺気を。

彼女自身が見てしまったからには、『否定』という道は閉ざされてしまう。でも彼女は、『認める』という道への進行も拒んでいる。

その要因は、過去の優しい記憶と思い出。そして彼女の優しさが、逆に彼女を苦しめている。でも、彼女を苦しめている呪縛を解かないと、事件は収束できない。むしろ彼女に更なる絶望を与えかねない。

私はウメの頭を優しく撫でた後、両手で彼女の両肩を掴んで、しっかり目を合わせて話を続ける。


「貴女の気持ちも、痛いくらいよく分かるよ

 でもね、さっきも言ったけど、今回の事件の要因が全く予想できない。要因が、貴女である可能性も、

 あの村の村民である可能性も考えられる

 となると、村長さんが貴女に何をするのかも、見当がつかない

 ・・・最悪、貴女やサバネさんだけでは済まない事態も考えられる」


その私の言葉に、ウメは目を見開いた。彼女の目は徐々に潤み、胸に手を当てて苦しみ始める。きっとウメの頭の中では、村人との楽しい記憶が過っているのだろう。

・・・サバネや村人が無事なのかも、今は確認できない。最悪の事態だって簡単に想像できてしまう。でも、ウメやサバネの生きる気持ちを無駄にしない為にも、最悪な事態はなるべく考えない方がいい。

だから、今はユラユラと揺れ動いているウメの心を安定させないと、私の仕事は務まらない。依頼が曖昧になっては、計画も立てられないし、出発もできない。ウメにとっては過酷な選択だとは思う。

でも決めなきゃいけない事はちゃんと自分自身で決めないと、後々になってからひどく後悔してしまう。

私だって、そんな経験は何度もしている。だからこそ、決断の重要性を人一倍理解しているつもり。

でも実際、決断をするのはいつだって辛い。


「・・・貴女はとても優しい、それは悪い事ではない

 でもね、貴女ももう分かってるんでしょ、村長さんがあの時した事は、酷い事だって

 サバネさんを井戸に突き落とそうとした事、妻を斬りつけるなんて行為、どんな事情があっても許され

 る行為ではない」


「・・・っ・・・っ・・・」


ウメは、泣きながら小さく頷く。彼女がこの言葉を、心の何処かで望んでいたのは、何となく分かった。

彼女は、サバネを助けたいという強い思いがある。でもそれを叶えるには、越えなければいけない壁(村長)が佇んでいる。

決して逃げられない、避けられない道。でもその道を通るには、『色々な勇気』が必要。それが、『過去を捨てる』勇気。優しい記憶から『決別する』勇気。

私には分かる、優しい人こそ、そうゆう勇気がなかなか切り出せず、踏み止まってしまう。

でも、いつまでもウジウジ悩んでいても、サバネもあの村も救えない。今はとにかく一歩でも踏み出さないといけない。


「・・・ウメさん、私はね。サバネさんの勇敢な決断を無駄にしたくないの。大切な人を危機から逃した

 事は、すごく立派な事。そしてそれを成し遂げたサバネさんは、とても勇敢な心の持ち主

 でも、もし貴女が消えてしまっては、サバネさんの勇気ある行動は、全て無駄になってしまう

 だからまず第一に、貴女を『無事』に、サバネさんと再会させてあげたい。でもその為には、やっぱり

 村長さんときっちり決別する必要がある




 貴女は、『誰』を助けたくて、此処まで来たの?

 サバネさん?それとも村長さん?それとも・・・」




「・・・・・・・



 ・・・サバネを・・・

 サバネを・・・助けたい・・・!

 だから・・・!!」


「うん、分かった

 私も全力を尽くすから

 

 大丈夫

 今はまず、前に進む事を考えて」

得られるモノも

多いからこそ

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