第十章 ウメ視点 冷たい現実が 銃口を向ける
しかし、不運な足音は徐々に私達を追い詰めて来る。ぼやけてくる視界と、冷たくなる空気。
山に雲が被さって、視界が悪くなってしまった。こんな状態で山の中を彷徨うのは、自分から谷底へ進んでいるようなもの。
私でも何処にいるのかさっぱり分からないのに、サバネはとにかく無我夢中で走っていた。でもさすがに体力が限界になったのか、サバネは大きな木に寄り掛かったまま倒れ込んでしまう。
でもまだ遠くで爆発音は聞こえている。すぐに何処かへ身を隠さないと、取り返しのつかない事になる。
山の中には、洞窟や大きな木の穴はあるけど、村民達がその場所を熟知していても不思議ではない。やっぱり、村人達の把握できていない、山を超えた先まで行かないと、安全とは言い切れない。
でも今はその手段すらも難しくなってしまった。でも村長さん達に捕まってしまえば、どんなことになるのか、想像もしたくない。
だからと言って、サバネに人を傷つけてほしくない。村長さんや村人達は、サバネにとって命の恩人。どんな事情があるにしても、その人達を傷つける事は絶対にさせたくない。
でも、このまま何もしなければ、最悪の事態に飲み込まれるだけ。私は必死になって、何か案がないか頭を凝らしていた。
そんな中、サバネは懐から私を出して、こう言った。
「君なら、まだ飛べる
・・・前、君に話した事があるよね。山に住む不思議な巫女様の話
彼女なら、きっとこの事態を終わらせる事ができると思うんだ
何日、何年かかってもいい、その人を探すんだ!!
この村に住み、この村を愛する人達を救ってほしい・・・!!」
涙の滲んだサバネの表情に、私も一瞬で覚悟を決める。とにかく雲を切り抜ける為に、真上へ飛び立った。
その『弾』に撃ち抜かれたモノは
全てを吸い尽くされる
お金も 時間も 人生も




