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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第十章 ウメ視点 冷たい現実が 銃口を向ける

冷たい現実

その中にあるのは、『欲望』という名の『弾』



高い壁を飛び越えてサバネを探していると、今度は食器が割れる音がした。

一気に寒気が走った私はかまどへ向かう。でもそこにサバネはいない。


「やっやめて下さい!!!」


「うるさい!!!

 落ちたくなかったら、言う事を聞け!!!」


井戸の方から聞こえた、二人の言い争う声。私が外に目を向けると、村長さんがサバネを井戸へ押し込んでいた。

辺りには高そうな食器の破片が散乱して、屋敷の中から村長の奥さんと娘さんが、真っ青な顔で二人を見ていた。

でも奥さんも娘さんも、手を伸ばしたまま、動けない様子だった。恐らく止める勇気が無いんだ。私だって、村長さんの真っ赤に怒り狂う顔を見て、その場からすぐに逃げ出したかった。

でもサバネをこのまま放っておけば、井戸に落とされてしまう。そう思った私は、小さな体で村長さんに体当たりする。

村長さんは太い腕を振り上げて、私を地面に振り落とした。その衝撃で私は地面に叩きつけられ、全身に痛みが響く。

その光景を遠くで見ていた雀達が、村長さんを一斉に取り囲み、頭や頬を突き回す。その間に、サバネは井戸から這い出て、地面で倒れている私に駆け寄る。

騒ぎを聞きつけたのか、屋敷に居た村長さんの妻子も駆けつけてくれた。幸い、何処も怪我はしなかったんだけど、それよりも問題なのは、暴れ回っている村長さんの方だ。

村長さんは腰に差してあった刀を振りまわし、妻と子供が近くにいるにも関わらず、乱暴な口調で雀に斬りかかろうとする。

でも雀達は、小さいし動きも素早い。それに村長さんは刀を振る事に慣れていないのか、一羽も傷つけられない。

村長さんの娘さんは、呆れた様子で村長さんを見ている。実際私も呆れていた。まるで見る事も触れる事もできない幽霊を刀で斬ろうとしている様な、無様すぎる光景。

威勢だけはいいのに、腰がガクガクと震えている村長さん。私や雀達は、途中から笑いを堪えるのに必死になっていた。


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