第九章 ウメ視点 『汚れた欲』に支配された村
でもその時、私はある違和感を感じる。それはサバネにではなく、私達が居るこの村長さんの屋敷にだ。
何故か壁や床に何かを叩きつけるような音が数回響いて、人間の大声も聞こえた。私は気になって、声のする方向に行こうとする。でもそれをサバネが止めた。
そしてサバネは足早に私を森に連れて行き、帰してくれた。その時のサバネの手が、急に冷たく感じてしまう。
そして村長の屋敷から聞こえた2種類の音は、山の方にも響き渡っていた。確かめたい気持ちもあったけど、サバネの様子が気にかかって、私は普段仲良くしている雀達に聞いた。
すると雀達は、村長さんの悪口を次々に言い始める。普段人間に対してとても温厚な雀達なのに、その時だけは目を尖らせていた。
「最近、あの屋敷に行くと村長に石を投げられるんだ」
「僕達だけじゃなくて、村人も虐めてるらしいぞ
あの村長」
「この前なんて、まだちっちゃい子供達を怒鳴りつけてたんだ」
その話の数々を、私は信じる事ができなかった。
だって村長さんは、身一つの状態のサバネを助けた、とても優しくて温厚な人だったから。サバネに仕事をあげたり、村を案内したり、時々山にも来てくれる。私にとっても、恩を感じている人だ。
だって、こんな特異な力を持った私を、何の抵抗も無くこの森に置いてくれてるんだから。普通の人だったら、怖がって近寄ろうともしない。最悪虐められてしまう。
でも此処の村長さんは、いつもニコニコしながら私に話をしてくれる。サバネを助けてくれた感謝も込めて、村長さんが山に足を踏み入れた時は、いつも私は村長さんの前に沢山の花を咲かせた。
その度に村長さんが喜んでくれるから、私も張り切っていた。