第九章 ウメ視点 『汚れた欲』に支配された村
不安は積み重なり
徐々に『知りたくなかった事実』となる
私とサバネが出会ってから、数年が経とうとしていた。サバネはすっかり村の生活に慣れて、村の皆とも仲良くしている様子。
でも最近まで、私は妙な不安と闘っていた。サバネが両親を探す為に、この村を出て行ってしまうんじゃないかと。
そして、私の気持ちをサバネ自身が察してくれたのか、昨日彼は自分の本心を私に話してくれた。
「自分はね、生まれた時から旅商人として、色々な地を渡り歩いてたんだ
雪の降る積もる島に行ったり、海が綺麗な街にも行った。でも自分は、幼い頃から『その場所に生き
る』生活に憧れてたんだ。」
その後、サバネは自分の家系を話し始めた。でも、その内容はとても悲しい話。
サバネの祖父母、そしてサバネの両親は、元々とある土地を収めていた地主。サバネの父は、その地主の息子。サバネの母は、地主の屋敷に仕えていたお手伝いさんだった。
サバネの両親は互いに愛し合い、サバネの父も、地主になる努力を惜しまなかったそう。
でも、雪の降り積もるある夜の事。地主の家が盗賊に襲われ、サバネの祖父母は亡くなってしまった。サバネの両親はどうにか屋敷からは抜け出せたけど、金品は全て盗まれてしまう。
しばらく二人は、屋敷近くの家でお世話になっていたけど、これ以上迷惑をかけられないと、二人でこっそり家を出たらしい。
それから二人は旅商人として生計を立てて、サバネを産んで育てた。このまま順調に時が過ぎれば、どれだけ幸せだったことか・・・。
サバネの両親を襲ったのも、サバネの両親の人生を狂わせたのも、土地土地を荒らしまわる盗賊だったなんて、皮肉にも程がある。
私の目からは涙がこぼれ落ち、サバネは慌てて私を抱きかかえてくれた。サバネの暖かい手が顔を撫でてくれる、でもその度に、涙が止まらなくなってしまう。結局昨日私はは、サバネの部屋で夜を過ごした。
サバネは私の為に、自分の持っている数少ない着物や布を巣の形にして、布団の隣に置いてくれた。
着物の巣の中はとても暖かくて、過ごしやすかったんだけど、サバネの優しい寝顔を見ていたら、あっという間に朝が来てしまう。
その朝サバネは、私に炊きたてのご飯をくれた。小さい小皿にご飯を少し盛って、サバネと共に朝ごはんを食べた。