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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第八章 キセキ視点 利点と向かい風

「動物は、細かい感情を持たないの

 人間のように、『周囲の目』や『見せかけの価値観』を持たない」

「へぇー・・・、花の精ね・・・

 どうりで貴女から、花の甘い香りが漂ってると思った

 ちなみに好きな花とかある?」


「皆大好きですよ

 山では、四季によって咲く花が違うから、季節の変わり目が一番楽しみでした」


「なるほどね・・・

 貴女は間違いなく、本物の聖霊さんである事に、間違いないね」


私は、話の途中でウメを庭に誘い、試しに桜の木に触れてもらった。

すると、ウメの話していた通り、彼女の手に触れた木の枝にあった桜の蕾が、まるで目を覚ましたかの様にポンポンと咲く。

彼女の素足が触れた地面からも、草花が生え始めている。しかし、ウメの手が離れると、その成長は止まってしまう。そしてウメの周りには、神社の屋根で一休みしていた雀達が寄って来る。

ウメは手を伸ばし、雀と会話をしている様子だった。そしてその光景を周りで見ていた巫女達は、目を点にしながら見つめている。

私の肩にも腕にも雀が止まって、まるで案山子の様な体制になってしまう。ウメは私を見て、笑いを堪えていた。

私も一応動物に好かれやすいんだけど、好かれる度合いが強すぎて、時々とんでもない珍事件が起きる事も。

この前は、村で飼われている馬が後ろ姿の私めがけて突進して来たから、しばらく腰を痛めてしまった。

でもその馬は私を嫌っているのではなく、会いたかったから突進してしまったそうだ。

冬の時期は、私が敷いておいた布団に入って寝ようとすると、中で猫が数十匹も丸まって寝ている事も。

今も、数匹の雀が私の髪を引っ張り合っている。ウメは慌てて止めようとするけど、慣れている私は痛くも痒くもない。

幼い頃に両親を失った私にとって、動物は数少ない遊び相手でもあり、良き相棒でもある。山に登ればどんな動物も一緒に遊んでくれたし、危ない事をすれば叱ってくれる動物だっていた。

まだ体の小さかった私を、大きな熊は背中に乗せてくれた。山の中で喉が渇いた時には、鳥達が水場へ案内してくれた。

そしてこの関係は、私が成長した今でも変わらない。だからこの神社には、色んな種類の動物が遊びに来ている。

神社の屋根を見れば、昼寝していた猫と狐が大きなあくびをしている。鳥居には鳥の巣、木の穴にはリスやイタチが住み着いている。

でも、熊や狼などの大きな動物は、決して村や神社には近づかない。彼らもちゃんと、自分や村人の生活範囲を分かっているのだ。だから私自身が山に登って、動物達と子供の様にはしゃぐ時もある。

ウメも動物は好きだけど、肉食である鷹や鷲は苦手らしい。確かに小さな鳥は猛鳥類の餌食になりやすい。

今も神社の周りを鷹が餌を求めて飛び回っている。ウメはその光景を見ると、すぐ神社の中へ引っ込んでしまった。

昔ウメは、飛んでいる最中、鷹に襲われた事があるらしい。首をわしづかみにされたけど、鷹が木にぶつかってどうにか逃げ出せた。

ウメの首元を確認すると、確かに猛鳥類の爪痕が残っていた。確かに猛鳥類は、時に人間の害鳥にもなってしまう。

ウメの話を聞いて、サカネイさんの話を思い出した私は、彼女に聞いてみた。

「猟師は怖くないの?」と。

でもウメは、笑顔で「そんな事ないよ」と返した。

ウメは村の人達からとても大切にされていたらしく、その村の猟師中では、「小鳥は狙わない」という暗黙の了解があったそうだ。小鳥に銃を構えた新米猟師が、村長にこっぴどく叱られるほど。

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