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花ノ鳥 儚キ鳥 背負ウ鳥  作者: 秋の鶯
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第七章 ウメ視点 特異

でも、私が変わっているのは『外見』だけではなく、生まれ持っている『能力』も変わっていた。

今だって、私がとまった木の枝から、桜が咲き始めている。さっきまでは蕾が一つもなかった筈なのに。

一つ・二つと、まるで波の様に大きな幹に向かって桜が咲き、あっという間に木は鮮やかな桜色に染まった。

私は、どんな老木でも若木でも、季節を問わず様々な花を咲かせる能力を持っている。それだけではない、私が地面にある岩に降り立てば、そこからも苔や草花が生え始める。

普通苔が育つには、長い間条件の揃った環境がなければ生まれないし、少しでも環境が変わればすぐに枯れてしまう。

でもこの森には、私が降り立ったあとがいくつも点在している。その青々とした地面と植物に、訪れる人は皆息を飲んでいた。

この森はいつの間にか、私の名前である『ウメ』を取って、『生メル森』として呼ばれるようになった。

でも最近知ったのだが、この名前はサバネが勝手につけた名前らしい。この森に元々名前はなかったんだけど、サバネが言い続けているうちに、村人の皆にも浸透してしまった。

しかし、森に名前がついたのにも、ちゃんと理由がある。それはこの森を訪れる旅人の為であった。この美しく鮮やかな山の噂は村の外にも広がり、いつしか村を訪れる旅人の目的が、『宿』以外になっていた。

村自体が、『トウキョウ』に繋がる中間地点として、この村で一休みする旅人が多く行き交っている。

でも最近、『トウキョウ』に繋がる道が多く作られているらしく、宿商売をしている村人は頭を抱えていた。

この前私が、かなり高い場所からあちこちを見回した。まるで蛇が通った跡の様に、色々な場所に繋がる道が作られている事は確かだ。

『トウキョウ』と言われている場所を、私は実際見た事がない。でも南の方から来る人は、大抵派手な格好をしている。

村の人達が来ている着物とは全く違う、派手な色や柄。男の人は黒い筒を被って、女の人の口元は赤く、甘い香りを漂わせている。

村の人達の話によると、そんな派手な格好が、『トウキョウ』では流行っているらしい。つまりこの村の南の方角に、『トウキョウ』はある。

私は何度も目を凝らして確認しようとしたけど、山からの風が邪魔して、いつも失敗している。

この前は、髪の色が変な人が数人、この森に来た。黒髪ではなく、まるで朝日の様な髪色をした人。しかもその人達、目の色まで変だった。顔の形も変だったから、私は咄嗟に巣穴の中に隠れた。

その人達が何を話しているのかも、さっぱり分からなかった。だって、そもそも口調や言葉が一つも理解できなかったから。

勝手に森の花を取ろうとしてたから、私は慌てて外に飛び出して、その人の手を突く。でも、その人はちゃんと謝っている様子だったから、許してあげた。優しい人達だったから、とても安心した。

女の人は私の頭を撫でてくれたし、男の人は私を肩に乗せてくれた。その人達も、この森の自然を満喫してくれた様子だった。

でもその最中、サバネは遠くで涙目になりながら震えていた。どうやら村長さんから、森を『ガイコクジン』の人達に紹介する役目を担っていたらしい。

でも言葉が通じないし、『ガイコクジン』の容姿が怖かったのか、結局私が代わりに案内した。

その後私はサバネに大泣きしながらお礼を言われて、新米を沢山貰えた。後々サバネに聞いたけど、『ガイコクジン』とは、この国とは違う国の人間の事を言うらしい。

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