第五章 ウメ視点 待ち焦がれた季節
彼の手に止まると、暖かい彼の温もりを久しぶりに感じて、ついウトウトとしてしまう。さっきまで全速力で飛び回っていた事もあって、まだ午前中なのに私の体はフラフラになっていた。
手から足を踏み外してしまった私を、サバネは慌てて受け止めてくれる。彼の手は少し硬いけど、私の事を気遣ってくれている思いが感じ取れた。
とても力持ちなサバネは、山で倒れた木を村まで運んだり、山の清水を樽いっぱいに入れて持ち帰る事もある。
でも私に触れる時だけ、その力は嘘のように消えている。でも、まだ私に触れる事に不安があるのか、若干手が震えていた。
多分、「握り潰しちゃったらどうしよう・・・」と、サバネは考えているみたい。だけど、何があっても彼はそんな事しない、私は自信を持って保証できる。
だってサバネは、私以外の動物にも優しい。だからサバネが山に少し姿を表すだけでも、山の中から色んな動物が駆け下りて来る。
今も、数匹のリスがサバネの着物をよじ登っている。彼も久しぶりに皆と会えて嬉しかったのか、満足そうに笑っていた。
サバネは手も暖かいけど、笑顔も温かい。だから、本能的に温かい場所を好む私達動物は、暖かいサバネが自然と好きになる。
そして彼は、冬を越した私にお祝いの言葉をくれた。
「冬越し、お疲れ様だな
お互い」
『来ない春』はない
『終わらない季節』はない




