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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第4章:野盗と戦争
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第四十五問「何をするかより、誰と居るか」

よろしくお願いします。

少しずつブックマークが増えて行くのを見ると胸が震えますね。

朝。カーテン越しに顔に当たる日差しを感じながら、目を醒ますと、自分の上に何かが乗っている事に気がつく。

って布団じゃないか。久々の感覚過ぎて逆に焦ってしまった。思えば日差しが顔に当たるのも随分懐かしい。まだ3か月も経ってないんだけどね。


時計を確認したら5:40。みんなは……さすがにまだ寝てるか。昨日は遅くまで盛り上がってたみたいだし、ゆっくり寝かせておこう。

そう考えながら支度を済ませて外に出る。

さて。折角だから海で何かしようかな。そう思って水平線を眺めると遠くに小島が見えたので、まずはそこまで走って行ってみよう。周りに誰も居ない事を念入りに確認してから海上へと飛び出すと、まるで水上歩行をしているかのように走り抜ける。

あ、どこかの超人のように「足が沈む前に次の一歩を踏み出す」なんてとんでも理論ではなく、気弾を板状にして足場にしているだけだ。まぁ、それもだいぶひどい話に聞こえるけど。


無事に小島に着いたのは良いんだけど。見事に何もないな。特に目的があった訳でも無かったし、ただ目に入ったから行ってみたくなっただけなんだけど、このまますぐ帰るのもつまらない気がする。と思ってた所で何かが動いた気がする。……水中?あ、魚かな。周りを見渡すと丁度良い感じに流れ着いた木の枝があるので、釣り、ではなく、枝を銛の代わりにして漁をしよう。

そうと決まればやる事は単純だ。適当な枝を見つけて一本の銛状に整える。水中の気配を探せば、種類は分からないけど、なかなかに大きいサイズの魚が結構いる。その内の一匹に狙いを定めて銛で撃つ。撃つ。撃つ。

5匹も狩った所で、これ以上多くなると持って帰れなくなるので終わりにする。血抜きをしつつ、枯れ草で尻尾を纏めて縛って銛に吊るして別荘に戻る。えっと、まだみんなは寝ているみたいだ。

クーラーボックスを取り出して氷を敷き詰めて、そこに魚を入れる。業務用の製氷機がある当たりに改めてこの別荘の凄さが伺えるね。あとはネットで狩ってきた魚を調べて食べられることを確認。うん、刺身でも十分食べられるみたいだ。でも素人でも魚って捌けるんだっけ。そう思っていた所で千堂さんが起きて来た。


「おはようございます、千堂さん」

「おはようございます。天川先生は朝早いんですね。あら?その魚はどうされたんですか?」

あ、どう説明しよう。まさか今海から狩ってきたんですとは言いにくいし。なんとか誤魔化しておこう。

「えっと、新鮮なのが手に入ったので刺身にしようかと思ったんですけど、何分捌いた事が無くて困ってた所なんです。千堂さんは魚捌けたりしますか?」

「ええ、お任せください。折角ご一緒させて頂いているのに昨日から年長者らしいことを何もしていないので、その魚を含め、朝食は私が準備しますよ」

「ありがとうございます。じゃあ、その間に僕は届け物をしてきますね。30分くらいで戻って来れると思います」

そう言って僕は台所を千堂さんにお任せして、クーラーボックスを担いで出かける。

向かう先は昨日のオーナーのお店だ。ちょっと早い時間だからまだ開いていないかもしれないけど、その時は書置きを残しておけば良いだろう。

いつものランニングの感覚で走れば5分くらいで到着する。表の札はまだClosedだけど、窓から店長さんの姿が見えるので手を振って呼ぶと、僕に気付いて扉を開けてくれる。


「いらっしゃい。こんな朝早くになにかあったかね」

そう気遣わし気に声を掛けてくれる。って、もしかしなくても問題があって助けを呼びに来たように思われてるみたい。

「おはようございます。とても良い天気だったから朝の散歩に来たんです」

そう答える僕を不思議そうに眺めた所で、持っているクーラーボックスに気が付いたようだ。なら早めに渡してしまおう。

「あ、こちらは海で釣れた魚です。お世話になっているお礼にお裾分けしようと思いまして」

そう言いながらクーラーボックスの蓋を開けて氷詰めになった魚を見せる。

あれ?予想以上に驚かせてしまったかな。まあ突然こんなに釣って来たなんて言われたら、これくらい驚いても無理は無いのかな。ひとまずクーラーボックスごと渡して帰ろう。

「それでは、オーナーさんにもよろしくお伝えください。では失礼します」

「あ、おい。まちたま……」

呼び止められる前に来た道を走って帰る。問い詰められても困るしね。


そうして別荘まで戻ると、玄関前に千堂さんが待っていてくれた。いや、これは待ち構えていたって言った方が正しそうな。……なにか悪いことしたかな。


「お帰りなさいませ。天川先生。朝食の準備が出来ていますよ。あと、先ほどオーナーから電話があり、魚の礼が後日必ず、との事でした。聞けば漁師でもなかなかお目にかかれない高級魚だったそうですね」

凄いじと目だ。さらに(お刺身はともかく、浜汁にしてしまったじゃないですか)ってつぶやいてるのは、聞こえなかったふりをしておこう。


食堂にはもうみんな起きてきていて、僕の帰りを待っていてくれたみたいだ。

「おはようございます、お兄さん」

「おはよう天道くん。朝からお刺身なんて豪勢だね」

全員が席に着いた所で朝食を頂く事にする。テーブルの上にはサラダをはじめ、色とりどりの料理が並んでいるけど、まずは件の刺身を食べてみる。

「あ、これは確かに美味しいね」

何というか、口の中で旨味になって溶けていくようだ。みんなも言葉もなく堪能している。

アラでだしを取っている浜汁の方も絶妙な塩加減で、これなら何杯でも食べられてしまいそうだ。というか、みんな美味しすぎて動けなくなるまで食べてしまっているので、食休みにお茶を入れてのんびりする。

その後はみんなで海岸沿いに散策したり磯を巡ったりしてまったりする。

1日目みたいに遊ぶのも良いけど、こうしてゆっくり過ごすのも良いねって話しながら、午前中は過ぎて行った。

昼過ぎには別荘を引き上げる予定だったので、ちょっと早めに荷物を纏めて、オーナーのお店に行き鍵を返しがてら遅めの昼食を頂く。すると食事代を奢っていただき、デザートまで出してもらえた。

「あの人のあんな嬉しそうな顔は滅多に見れないからな」

そう話す店長も凄く嬉しそうだった。


帰りはまた千堂さんに運転をお願いすると、後ろのふたりは早々に眠ってしまったので、行きの時とは打って変わって静かだった。僕と千堂さんのふたりだと、ぽつりぽつりとゆっくりとしたペースの会話になる。主にこの二日間の感想だったりお礼の言い合いだったけど。

そうして皆を家まで送り届けて行き、最後に僕の家の前まで送ってもらう。


「それでは天道さん。今日は本当にありがとうございました」


そう別れの挨拶を送って走り去っていく千堂さんを見送って、1泊2日の旅行は無事に終わった。


という訳で旅行終了です。

主人公が頑張ったせいでナンパ撃退イベントとかが吹き飛びました。

はらはらドキドキよりも、気楽に読めるのがこの作品の売りということで(今考えたけど)


次回からはようやくVRに戻ります。

と、その前に要塞争奪戦の模様をお送りします。

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