第四十二問「嗜好とセンスが問われる場」
よろしくお願いします。
なぜかイチャラブパートが増えて来た気がします。
それから何日かはVRでは世界樹の力を取り込んだらしい、狂暴化した魔物をみんなで討伐して回り、リアルでは夏休みの宿題を済ませたり、小説を書いたり、映画の打ち合わせをしたりして過ごした。
そして、日曜日。
そこは男子にとって禁断の地と呼ぶべき場所に、僕は来ていた。
目に映るのは白とピンクを中心としたパステルカラーに染められた世界。周りに居るのは女性だけの孤立無援状態。そう。女性水着専門店だ。
「お兄さん、今日はよろしくお願いしますね」
そう言って水菜ちゃんが僕の右手に抱き着く。
「天道くんから見て、私たちに似合うのを選んでね」
そう言ってほのかが左手を握ってくる。
両手に花と思うかもしれないが、僕には『逃がさないわ』って言われているようにしか思えない。まぁここまで来て逃げたりはしないけど。お店に入った瞬間、中に居た人の視線が僕に釘付けになった気がする。同い年くらいの女の子からは熱い眼差しが送られ、年上のお姉さんからは微笑ましいものを見るような視線が送られる。
「いらっしゃいませ」
そう声を掛けてきてくれた店員さんに連れられて、まずは水菜ちゃんの水着を選びに行く。水菜ちゃんの体系は中学生並に成長している。
ただ、それくらいの女性水着って膨大な種類がある。唯一の救いは清楚系が多い事か。
「それでは、お兄さん。よろしくお願いします」
「天道くんって服のセンスも良いから心配してないけど、変なのは選ばないでね」
そう言って、いっそうキラキラした目で僕を見上げる水菜ちゃんと、そんな僕らを一歩下がって眺めるほのか。
「そうは言っても、水菜ちゃんのスリーサイズとかは知らないから、デザインだけね」
「あ、お兄さんが知りたかったらお伝えしますよ。上から7……」
「って水菜ちゃんストップ!! 教えてくれなくて大丈夫だから」
「むぅ、そうですか」
ってなんでそこで残念そうなのかな。
うん、早く選ばないと僕の精神が持ちそうにないから急ごう。
さて。水菜ちゃんに合うのは……水菜ちゃんって言えば、しっかり者っていうイメージと、ミーナとして槍を持って力強く突撃していく姿が浮かぶ。であれば、色のベースは白と青かな。デザインはワンピースタイプとセパレートタイプからそれぞれ1つ2つ選ぶ。それらを水菜ちゃんに渡して、試着室に送る。
その際、ほのかが水菜ちゃんに何かを伝えて、水菜ちゃんは少し考えてから僕の方をちらっと見て頷いてから試着室に入っていった。
「さ、天道くん。次は私のを選んでね♪」
そう言ってほのかが僕の手を引いていこうとするけど、
「水菜ちゃんは待たなくて良いの?」
「大丈夫よ。先に行くことは伝えたし、選び終わったら店員さんが連れてきてくれるわ」
店員さんの方を向くと頷いてくれるので、大丈夫なのだろう。
そして連れられてきたコーナーは、さっきに比べて大分その、あれだ。目のやり場に困るのが多い。
ちょうど目の前にディスプレイされているのを見たら、紐に申し訳程度に布が付いている水着があった。
「あ、て、天道くん。さすがにそれは、恥ずかしい、かな」
「うん、大丈夫だいじょうぶ。流石にこんなのは人前じゃ着れないよね」
「天道くんがどうしてもって言うなら着てみても良いけど、ふたりっきりで、ね」
そう言いながら赤くなるほのか。ってふたりっきりなら良いの?
っと。一瞬色々と妄想してしまったけど、気を取り直してほのかに合う水着を選ぶ。
ほのかのイメージっていうと、普段大人しめなのに、テンション上がると積極的になったり、あとVRのホノカが活き活きと火炎を扱う姿が頭に浮かぶ。であれば、色は赤とオレンジがベースだろうか。そういえばさっきの紐水着も赤だった。ってそれは良くて。デザイン的にはどうだろう。水菜ちゃん同様、ほのかもこの数か月ですごく魅力的に成長してると思う。
そう考えながら、ほのかの方を眺めてると、ほのかがそっと囁いた。
「84、55、82のDカップだよ」
「ちょっ」
多分、僕は耳まで赤くなってるんじゃないかな。そんな僕を見てほのかはクスクス笑ってるし。
「私のことをじっと見てるから知りたいんじゃないかって思ったんだけど、違ったかな」
そう言いながら更に上目遣いにのぞき込んでくるほのか。最近、小悪魔度が上がってきたんじゃないかな。
って、近いから。もう少し離れて。ね。
ふぅ。さて、気を取り直して。こうなったら少しきわどいデザインのも選んでしまおう。そうしてタイプの違う2つを選んでほのかを試着室へ送る。
入れ違いで水菜ちゃんが戻ってきた。無事に選べたみたいだけど、どれにしたかは当日のお楽しみらしい。なのでお金を渡して会計を任せる。
少し時間が出来そうなので一つ用事を済ませてから、ほのかの試着が終わるのを待つ。
「天道くん、そこにいる?」
試着室の中からほのかの声が聞こえたので返事をすると、試着室のカーテンが開き、水着姿のほのかが姿を現した。赤をベースにオレンジのラインが入ったビキニにパレオを巻いたその水着は、ほのかの魅力を十分に引き出せてると思う、我ながら会心の選択だ。
「天道くん、どうかな。……ふむふむ。うん、なるほど」
ほのかは僕が何か答える前に自分で結論を出したみたいで、カーテンを閉めてしまう。
そして少しすると元の私服姿で出てきた。どうやらさっきので決まったみたいだね。
ほのかの分の会計も済ませて、お店を出るとどっと汗が出てきた。気付かないうちに大分緊張していたみたいだ。
「今日はありがとうございました。お兄さん。これ大事にしますね」
「ありがとね天道くん。さて、この後はどうしよっか。前にスケジュール表は貰ったけど、明日からの細かい予定も話たいし、水菜ちゃんちの喫茶店に行く?」
「そうだね。旅行って行く前にみんなで計画を練るのも楽しいよね」
そう言って僕らは喫茶「ファミーユ」に向かうのだった。
色々とお約束なのはご容赦を。
そして、誰だろう1泊2日なんていったの。
もう1話でVRに戻ろうと思ってたのに終われる気がしない。




