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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
第3章:夏とダンジョン問題
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第三十三問「氷の妹と樹の妹との関係性」

よろしくお願いします。

久々の戦闘回。前の話とのギャップがひどいかも。

勉強会とか、お祭りとかあったけど、その間もちょくちょくAOFにログインして、みんなでダンジョンの開拓を進めている。

というか、むしろ僕が居ない間にどんどん開拓が進んでる。

……前に来たときあっちの山、無かったよね。


ちなみに、みんなにはサブマスターみたいな感じで役職を渡しているので、ある程度自由にダンジョンポイントを使って作業が出来る。

ダンジョンポイントも何故かしらどんどん溜まっている。恐らくは前の街作りイベントの時の様に何かの副産物として僕に入ってくるはずの経験値などがダンジョンポイントに変換されてるんだと思う。


そんな訳で、ダンジョンならではのフィールドを幾つか追加してみた。その名も極地フィールド。

って恰好付けてみたけど、つまり、極寒の地とか、火山地帯とか、超高山とか、深海とかの存在は知ってるけど、なかなか行けない場所を疑似体験できるようにしてみた。これらのフィールドは罠フィールドの次の場所として追加した迷路フィールドから行けるようにしてある。

フィールドが出来て一番喜んだのは、言うまでもなく師匠だ。これで新たな鍛錬が出来るって。

ただ、ここで苦情というか注文が来た。フィールドが出来たのは良いが、そこに居るはずの生き物や魔物が居ないぞって。

まぁ確かに。僕たちが出会ったことのある魔物でないと生み出すことは出来ないらしいから、今のままじゃ無理だね。


そこでふと気が付いた。僕ってこの世界に来てから、始めの街より先に進んでなかった。2つ目の街がどこにあるのかも知らないし、もちろん火山があるのかも知らない。

「よし、決めた。これから世界中を回って来ることにするよ。極地にも行くから、その時に出会った友達に声を掛けて、それぞれのフィールドが充実するようにお願いしてみるよ」

そう言うと、なぜかみんな達観した目で僕を見て来た。なんで?

『僕は兄弟がまた何かに巻き込まれてくる気がしてならないよ』

「愚問だな。わが弟子ならば当然だな」

「まったく。仕方がないから、私が付いて行ってあげるわ」

みんなは僕の事を何だと思ってるんだろう。あ、ちなみにカゲロウは地下道を掘っていてここには居ないから、後でカゲロウの意見も聞いてみよう。


「さ、そうと決まれば行くわよ」

そう言って僕の手を取るサラ。あ、でも待ってほしい。

「待って、サラ。これから向かうのって、雪山とか火山とかだけど、大丈夫?」

「世界樹をなめないでしょね。私たちはどんな環境にだって適応出来るんだから」

「あ、そうなんだ。それは凄いね。あとさ、どう行けば良いかは分かる?」

「……森の外れまでなら、分かるけど」

だよね。サラってずっと世界樹の森に居たはずだし。まあ僕も人の事は言えないか。

「うん、そういう訳で、僕の友達に応援をお願いしようと思う」


えっと、ホノカは試験勉強するって言ってたから誘わない方が良いかな。そうすると、水菜ちゃん(ミーナ)にお願いしてみる。

『あ、お兄さん。どうされました?え?冒険のお誘いですか。はい、是非お願いします♪はい?はい、任せて下さい。そういう場所に心当たりあるので、ばっちり案内しますね。待ち合わせ場所は……』

という感じに、サクッと約束を取り付けられたので、サラを連れて待ち合わせ場所に移動する。


待ち合わせ場所には、先にミーナが待っていてくれた。

「お待たせ、ミーナ。今日はよろしくね」

「はい、お兄さん。こちらこそ、よろしくお願いします」

そう挨拶をしたミーナの肩に氷の彫像のような鳥が停まっている。あれがミーナの世界樹なのかな。

「あ、紹介しますね。この子は『セツナ』っていいます」

そう呼ばれたセツナは「ピィィィ」って鳴きながら羽を広げて挨拶してくれる。


と、そこで僕の後ろに隠れる形になっていたサラが僕の右腕を掴みながら前に出て、ミーナと視線がぶつかる。

「お兄ちゃん、その子は誰?お兄ちゃんの妹??」

「『おにいちゃん』って……。お兄さん、その人はどなたですか?」

あ、れ。なんか突然気温が10度くらい下がったような……って、本気でミーナの魔力が冷気になって漏れてるし。

「えっと、ミーナ。彼女はサラって言って世界樹の精霊体だよ。

で、サラ。ミーナは僕と同じ外来人で、行きつけの喫茶店の娘さんなんだ」

そう説明すると、ミーナがサラとは反対側の手に掴まってきた。

「そっか、世界樹だったんですね。人の姿なんて、さすがお兄さんですね」

「でしょ。やっぱりお兄ちゃんは凄いわよね」

えへへ~って笑い合ってるけど、ふたりの視線が怖い。それと、ミーナさん。腕凍り始めてるので、冷気押さえてほしい。

「今日の道案内は、ミーナに任せてください。ばっちり期待通りの場所に連れて行きますからね」

「お兄ちゃんの護衛は私に任せてね」

二人が僕の役に立とうと頑張ってくれてるのは分かるんだけど。まぁ喧嘩してる訳じゃないしもう少し時間が経てば仲良くなるかな。二人とも良い子だし。


そうして、ミーナが用意してくれた転移石を使って、目的の場所へと飛ぶ。

飛んだ先は、氷の神殿で、壁も柱も氷で出来ている幻想的な場所だった。

ただ、防寒具とかの準備をしてきていないので、めっちゃ寒かった。慌てて魔力で全身を包む事で一息つけた。僕より薄着にしか見えないミーナとサラが平然としてるのが納得できないけど。ミーナに限って言えば、氷魔法が絶好調なのか楽しそうな気配が伝わってくる。

ミーナに付いて行って神殿の外に出ると、一面の白。猛吹雪で1m先も見通せない状態になっていた。

「ミーナ、ここっていつもこうなの?」

そう聞くと、ミーナも予想外だったらしく呆然としながら答えてくれた。

「いえ。前来たときは晴れていて、雪フクロウとか、ホワイトラビットとか、フロストウルフとかが居たはずなんですけど……」

そうやって困惑してた所に、サラが助け舟を出してくれた。

「お兄ちゃん、うっすらだけど、この雪から世界樹の気配がするわ。恐らく、世界樹の卵が魔物に食われて暴走してるんだと思う」

え、世界樹の卵ってそんなに危険アイテムだったの?あ、そう言えば魔王軍も世界樹の力を奪いに来ていたし、卵とか小さい段階でもそれなりに力を宿しているって事なのか。僕のしたことで連鎖的に色々と問題が起きてしまってるんだね。

「知ってしまったからには何とかしよう。まずは世界樹の卵を食べた魔物の位置の特定からだね」

そう言って、魔力探知を広域展開する。……いた。ひとつだけ強力な力を発しているから、多分これだろう。

「ミーナ。ここから南西方向に5kmくらい行った所に何かあったりするかな。魔物がそこからほとんど動いていないみたいなんだ」

「そこなら多分、氷の湖がある当たりだと思います」

少しだけ考えた素振りを見せた後に答えてくれる。

「よし、じゃあ、そこに向けて移動しよう。途中にも何体か強力な個体が居たから気を付けながらね」

そう言いながら僕は周囲に半径10mほどの防御結界を張りながら移動することにした。

進むにつれて吹雪は更に勢いを増し、防御結界の奥は全く視界が通らない状態だ。と、そこで魔物が結界にぶつかった。身長6mくらいのフロストジャイアントだ。

「お兄さん、行きます!」

そう短く宣言したミーナがひとっ跳びに突撃して、手にした氷槍で魔物の胸に大穴を空けて即死させる。

「ご苦労様。さすが『氷槍のミーナ』だね」

「やるわね、ミーナ」

戻って来たミーナを褒めてあげると、嬉しそうに僕の左腕に掴まって来た。

さらに進んだ所で、今度は雪熊の群れにぶつかる。身長3mくらいの熊が30頭ほど。結界を囲むようにしてこちらを狙ってきている。

「今度は私の番ね」

そう言ってサラは右手を上げると、その先に木の矢が魔物の数と同じだけ作られて魔物へと飛んでいき、狙い過たずその頭部を破壊していく。

「サラさんも凄いです」

「まあね」

ミーナの褒め言葉を軽く胸を逸らして答えるサラ。

良かった。ちゃんと打ち解け合ってくれてるみたいだ。


そうしてぶつかった魔物を倒しつつ進むと、ようやく氷の湖の外縁まで辿り着いた。

その中心に、今回の目標と思われるものが見える。

それを一言で表すと、氷の柱だった。かろうじて頭部と思われるものが付いているので魔物なのだろうと分かる。また、柱の中に様々な魔物の姿が見えることから、何らかの方法でこの湖に来た魔物をを体内に取り込んでいるんだと思う。

であるならば、ミーナに突撃させるのは危険だろうし、サラの矢も急所に当てないと効果は薄いだろう。ならここは僕の出番かな。といっても直接攻撃は無駄だろうから別方向からアプローチだね。

「二人とも。これから僕が攻めるから、その間に、サラはあれの核がどこにあるか探してほしい。多分世界樹のエネルギーが一番強い場所にあると思うから。ミーナはあれの攻撃から僕たちを守って」

「分かったわ。ただ、大きさがあれだから少し時間がかかるわよ」

「わたしの方も、たとえあれが倒れてきても防ぎきってみせます」

うん、頼もしいね。じゃあ僕の方も負けないように頑張りますか。と言っても、凄く地味な作業だけど。


まずやる事は世界樹の杖を取り出して、湖の氷をブロック状に切り出す。切り出した氷に僕の魔力を流しながら並べる。とこれだけ。切るのも並べるのも魔力操作の応用で行っていくから、傍からは氷のブロックが飛び交う中、ゆっくりと湖の中心に向かっているようにしか見えないだろう。

その間、魔物から氷の塊が飛んでくるが、ミーナの槍によって粉砕され、それもまた僕がブロック状に加工していく。細かいのはセツナが吹き飛ばしてくれる。

「あぁ、なるほどね」

その様子を見て、経験のあるサラには僕の意図がすぐに分かったみたいだ。

「??サラさん。お兄さんが何をしてるか分かるんですか?」

逆にミーナは話には聞いたことがあっても自分でやったことは無いんだろう。

「ミーナ、世界樹を育てる方法の一つに、自分の領土からエネルギーを送るっていうのがあったよね。僕が今やっているのはその応用。あいつの領土のこの湖を僕の領土に塗り替えているんだ」

そう、あの魔物が世界樹を取り入れた事で土地からエネルギーを吸収するようになったのなら、その土地を奪えば、魔物の力も奪えるのではないかと考えたんだ。

そして、飛んでくる攻撃も、魔物の体自体も切り取って僕の領土の境界として組み上げていく。今ではもう、魔物の体の1/4くらいを削り取ってしまったし、魔物の立っている位置以外の湖は僕の領土になっている。さて、そろそろサラの方も行けるかな。

「お兄ちゃんお待たせ。あいつの核の位置が分かったわ。あの頭の部分のちょっと下にある黒い部分。あれがそうよ」

それを聞いて魔物を見上げた時、ちょうど魔物が周りの吹雪を吸い込み始めた。あ、口なんてあったんだね。

「お兄さん、ブレス攻撃が来るよ」

「みたいだね。さすがにあれを受けると結界で守っても結界ごと雪に埋まりそうだ。それなら」

僕は僕の魔力を込めて作っていた氷ブロックを魔物の口に大量に投げ入れた。さらに魔力を操作してブロックの氷どうしをくっ付けて吐き出せなくする。そしてある程度溜まった所で氷を爆発させる。その結果頭があった部分が吹き飛び、核の部分が露出した。

「ミーナ、とどめをお願い」

「はい、行ってきます」

そう言ったミーナは一気に飛び上がり、槍の一撃を核に突き刺した。核から溢れた経験値(エネルギー)は僕とミーナ、そしてセツナとサラに吸収されていく。心なしかセツナは少し大きくなったみたいだ。


核を失った魔物が消滅し、吹雪も止んで晴れ間が見えてきた。後には氷に閉じ込められていた魔物たちが放り出されていて、さて二回戦かなと身構えたけど、魔物たちの様子からして違うみたいだ。

僕に向けて魔物のうちの1匹、トナカイっぽいのが近づいてきた。


『助けて頂いた事、感謝する。あのままであればそう遠くない内に、消化され死んでいた事だろう。ついては、何かでこの礼を返せたら良いのだが、望みはあるか』


僕に念話が送られてきたので、他の皆にも伝えて相談した結果。


『ふむ、その新たな地に他の仲間と共に移り住んで欲しいと。聞けば十分に魔力の満ちた土地との事。であれば我らに否やはない。喜んで行かせてもらおう』


という事になった。また今回の副産物で湖一帯が僕の領土になったので、ついでにダンジョンの極地フィールドから出入り出来る門を作ってしまう。門を通る条件は僕に敵対しないことを誓ったものであること、としておいた。

そうして魔物たちに準備が出来たら門を通ってきてほしい事を伝えて、僕たちは一足先に帰る事にした。


ミーナが帰り際、サラと握手しながら何かの話で盛り上がっていた。話に入ろうとしたら

「お兄さん(お兄ちゃん)には内緒です」

って言われてしまった。むぅ。

まぁ何はともあれ仲良くなってくれたみたいで良かった。



さ、次は極寒フィールドをあの魔物たちに住みやすい状態に整えてから、残りの極地にも足を運んでみよう。

真面目な妹とツンが入った妹。あんまりツンっぽくないかも。

今回の氷の魔物。大きくなりすぎて歩けなくなりました。本当は結構激しく氷のつぶてを投げて来たりしてますが、ミーナにバシバシ破壊されてしまっています。

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