第二十九問「男の子が求めるもの」
よろしくお願いします。
最近少しずつ読んで下さる方が増えているようで、とても感謝しています。
さて、勢い込んでダンジョンを作ると言ったは良いけど、どうやれば良いんだろう。
まずはさっきのスキルを確認してみるかな。
【スキル「ダンジョン生成」
ダンジョンマスターまたはダンジョンオーナーのみ使用可能。
各種エネルギーを糧にダンジョンを生成する。
ダンジョンの基本構成はひとつないし複数のフィールドと、それらを繋ぐゲート及び外部に繋がる門からなる。
消費するエネルギーは生成するものの規模等により変動する。
生成したものは後から変更、削除が可能。その場合、差分のエネルギーが消費または還元される。
生成出来るものは以下の通り(詳細は更に各項目を確認すること)
・門生成
・ゲート生成
・フィールド生成
・フィールド構築
・魔物召喚
・拠点生成
・施設生成
・各種修復
・機能拡張
現在のエネルギー:3,700,000ポイント】
詳細も見てみたら、門やゲートは1000ポイント~、フィールド生成は100,000ポイント~。魔物は今まで会ってきたものの基本種が召喚出来て、追加ポイントを払えば上位種の召喚が可能らしい。
ちなみに、ちょっと気になってフェンリルを召喚するのはいくらか確認したら1億だった。さすが師匠、桁が違う。
なるほど。ご利用は計画的にというか、贅沢をすると直ぐにエネルギーが枯渇しそうだ。
さて、じゃあ先にどういうダンジョンにしようか決めよう。自分専用のダンジョンって言ったら……うーん。隠れ家、かな。というか隠れ里。うん、こっちで出会ったみんなで暮らせるような自然豊かな村を創ろう。とは言っても、完成させるにはポイント足りないだろうからまずは基礎から。
そうと決まれば、必要なものもある程度は決まる。
まずは門から繋がるフィールド。ここは招かれざる客にお帰り頂く為のトラップを満載させて、将来的には門番なんかも用意しよう。
次にメインの村を含む自然豊かで広大なフィールド、その元となる状態を創り上げる。拘ってたらここだけで1,500,000ポイントも使ってしまった。
後は何か災害が起きたときに逃げ込める緊急避難フィールドと、たまにはひとりになれる自分専用フィールドを創る。
後はこれらのフィールドをゲートで繋ぎ、外に繋がる門を創ると、あっという間に3,500,000ポイントがなくなった。
残りの190,000ポイントを使って各フィールドの維持管理する機能を充実させる。
最後の10,000ポイントは修復などの予備費として残しておこう。
さて、ひとまずはこんなところかな。
出来上がった各フィールドを回ってみる。……静かだ。僕以外誰も居ないんだから当たり前なんだけど、ずっとこんな所に独りで居たらおかしくなりそうだ。……あ、うん。そうだな。今後は時々、ダスターの所に顔を出すことにしよう。あいつも一人じゃ暇してるだろうし……。
っと、アンニュイになってる場合じゃない。気を取り直して。無事に外に繋がる門も出来たし、外に出てみよう。みんなとも世界樹の森で別れたっきりで心配させてるかもしれないしね。
そうと決まれば早速、門の所に移動する。あれ?そういえば、門ってどこに繋げたんだっけ。まぁ出てみれば分かるか。
思いきって外に出るとそこは、2ヶ月間過ごした師匠の寝床のすぐ横だった。無意識の内に印象深い所にしてたんだね。
そして、僕の事を待っていてくれたんだろう。アシダカさんに師匠にカゲロウと皆勢揃いだった。あと、同い年位の女の子?
『お帰りなさい、兄弟。無事とは分かっていたけど、こうしてまた会えて良かったよ』
「遅かったではないか。弟子のくせに師匠を待たせるとは、これは再教育が必要だな」
『しばらく見ない間にまた強くなったようでなにより』
「うん、ただいま。みんな。心配かけてごめんなさい」
そう挨拶を交わす中、女の子が何も言わずに近付いてきたと思ったら、ぎゅっと抱き付いてきた。えっ、えっ!?
「心配したんだから。帰ってこれるようになったんなら一目散に帰って来なさいよ。お兄ちゃんのばか」
え?お兄ちゃんっていうことは……
「もしかして、サラ?」
「そうよ。他の誰に見えるのよ」
「ごめんごめん。あまりに可愛くなってたから分からなかったよ」
「もう、そんなこと言っても騙されないんだから」
そう言いながら更に強く抱きしめて来たので、頭を撫でてあげる。
しばらくして漸く落ち着いてきたので、改めて聞いてみる。
「それで、少し見ない間に随分綺麗になっちゃったのはなんでだろう」
「たぶんだけど、この世界樹の森に張られていた結界の残滓が境界になって、この辺り一帯がお兄ちゃん所有の領土ってことになってるみたい。だから凄い勢いで私の元にエネルギーが送られてきてて、ここまで成長出来たみたいよ」
なるほど、この前の一件でこの森を僕が占領したことになってたんだ。言われてみれば、確かに森の隅々まで感知することが出来る。これも僕の領土だからなんだろうね。
「それで、私からも一つ聞いてもいいかしら。お兄ちゃんが出て来たダンジョンゲートから、お兄ちゃんの魔力と同じ波動を感じるんだけど、どうして?」
波動って。気付かなかったけど、そんなのが出てたんだ。
「えっと、ひとことで言うと、そのダンジョンのオーナーが僕だからだと思う」
「……はぁ。そんな気はしてたけど。お兄ちゃんは何でもかんでも引き寄せ過ぎだと思う。その内きっと魔王とかも拾ってくるんだわ」
「それは流石にありえないよ。みんなもそう思うよね」
……って、なんでみんな目を逸らすのかな。
『ちなみに兄弟。僕の知る限り、ここ300年くらいはダンジョンオーナーが新たに誕生した、何て話は聞いたことがないよ』
「私が知ってる限りでも1200年前に一人居たっきりね。それくらいレアなの。ちょっとは自覚してよね」
そうだったのか。ダスターが気軽に渡してくれるから、そう大したものじゃないだろうと思ってたのに。
「まぁ。なっちゃったものは仕方ないし、折角だからダンジョンの中を案内するよ」
「そうね。お兄ちゃんがどんな趣味なのか見させてもらうわ」
『僕たちもお邪魔させてもらうね』
そんな訳で、みんなでダンジョン観光ツアーみたいになった。
第一階層はトラップフィールド。今はトラップが作動しないようにしている。来たついでに皆の情報を登録してトラップが発動しないようにしておこう。フィールドの説明を聞いたみんなの感想は、
「お兄ちゃん、悪魔ね。よくこんなトラップを思いつくもんだわ」(サラ)
「これはなかなかに良い修練の場になりそうだ」(師匠)
『人間の頭脳って凄いね』(アシダカさん)
『ここに我らの巣を作っても良いだろうか』(カゲロウ)
うーん。前に読んだ漫画に出て来た各種物理トラップに、この世界の魔法を組み込んだんだけど、反応を見る限り効果は高そうだな。あ、師匠はトラップを壊しそうなので遠慮してください。
第二階層は隠れ里フィールド。と言っても、まだ植物も動物も居ない、大地と湖が広がるだけの状態だ。これの感想はというと、
「昔を思い出すわ。任せておきなさい。力を失ったとはいえ、これでも世界樹よ。あっという間に豊かな大地に創り上げてあげるんだから」
「ふむ。これだけ広ければ修練に持って来いだ。後は相手が必要だな(ちらっ)」
『土も水も空気も澄んでる。きっと創り出した人の影響なんだろうね。それにダンジョンの中のはずなのに太陽があるって不思議な感じ』
『……地下洞を作っても良いだろうか』
こっちも概ね好印象だね。カゲロウも秘密基地とか好きなのかな。そして師匠は僕の方を見ないでください。
最後に緊急避難フィールドの説明をした。こちらは何の変哲もない空間なので、反応は割愛する。
僕用フィールドの事と、ダスターのダンジョンに繋がるゲートの事は伏せておいた。
そんな感じで紹介していたら、大分遅くなったので、解散することにした。
別れ際にサラから「今までずっと放っておいた分、次来たときはしっかり構ってよね」と念を押されてしまった。
最近の子供は秘密基地とかは作るのでしょうか。
作者も子供の頃に空地に段ボールを敷いて遊んだ記憶があります。
そしてなぜかサラがツンデレキャラになりそうです。おかしいなー。
次回からはリアルパートに移ります。




