第二十六問「主人公は鈍感属性」
よろしくお願いします。
3章はリアルパート多めになるかも。
朝。いつものように起きて、いつものように支度して、いつもの公園に15分で移動する。
もう無意識で行えるようになった気配探知を、意識することで更に広範囲に広げていく。今日も公園の中には、離れたところに犬の散歩に来たおじいさんとお姉さんが計4組居るだけだね。
よし、イメージトレーニングを始めよう。まずは自分を中心に半径5mの球形のフィールドを展開する。
続いてその中に気弾を108個作り上げる。色も大きさもバラバラな気弾はフィールド内を気持ち良さそうに、ふわふわクルクル飛び回っている。うん、だいぶ慣れたお陰で100個以上も余裕を持って維持出来るようになった。ちなみに、僕には綺麗な光景だけど、他の人からは、ただ僕が広場の真ん中で立っているようにしか見えないらしい。
そうして1分その状態を維持してから、一気にすべてを弾き飛ばす。飛び散った気弾はフィールドの壁に反射し、気弾同士でもぶつかり、その軌道を複雑に変えていく。その中から自分に当たるものを選択して回避していく。
……まだ、行ける。余裕のある限り数を増やし、加速させていく。
15分続けた頃には数は200を越えた。最初の頃はVRとリアルの身体能力のギャップに戸惑ったけど、筋力はともかく反射神経や瞬発力は追い付いてきたかな。
よし。最後は全弾受けとめてひとつに纏める。さらにピンポン玉サイズに圧縮しながら限界まで気を籠める。……うん、やり過ぎた。気を緩めると大爆発しそうな気弾これ、どうしようかな。と視線をあげると三日月が見えたので、そこまで届けと言うように打ち出す。まぁ、間違いなく月に届く前に霧散するはずだし、そもそもイメージだからね。
時計を確認したら軽く型稽古をしてから帰宅。いつも通り準備をして学校に向かうんだけど、ひとつだけ前から変えた事がある。それは走るのを歩道ではなく、車道の脇にしたこと。歩道を走ってると追い抜かれた人がびっくりしていたので、そうしてみた。
教室に着いたら、友人に挨拶をして席につく。携帯PCを起動して小説を書く。高速思考と並列思考が鍛えられたお陰で3日で1冊分の原稿が書き上がる。なんと驚くことに、漫画化と映画化の話まで浮上しているらしくて、今度監督の人と顔合わせをすることになってる。
そうこうしてる内にほのかが学校に着いたみたいなので、切りの良いところまで書き上げてしまおう。
「おはよう天道くん。昨日はあれから大丈夫だったの?」
「おはようほのか。あぁ、メールでも伝えた通り、一時的に電波(?)が届かない状態になったけど、それは無事に解決したよ。心配してくれてありがとう」
あれからっていうのは、ホノカからのフレンド通話が魔王軍の結界によって途中で切れてしまった時の事だ。ログアウトした後に、深夜だったのでメールで無事な事だけ伝えてたんだった。
「それでさ。ほのかに教えてほしいことがあるんだけど、今日の放課後とか時間空いてたりするかな」
「教えてほしいこと?天道くんって何でも知ってるイメージがあるからちょっと意外だよ」
「僕もそんなに万能じゃないって。で、どうかな」
ちょっと悩む素振りを見せて教室の前の方を見るほのか。あれは緒方さん、だったかな。が親指と人差し指で〇を作って、ほのかに頷いてる。どうやら先約があったみたいだけど、譲ってくれたって事かな。
「うん、大丈夫みたい」
「先約があったんだ。無理言ったみたいで、悪いな」
「ううん、気にしないで」
そう言って手をぱたぱた振るほのか。心なし顔が少し赤い?
そこでふと思いついた事があったから提案してみる。
「もし良かったら僕のおすすめのお店を紹介しようと思うんだけど、そこって放課後すぐよりそれくらいの時間に行く方が良いんだ。だから先に約束してたのが17時半までに終わる内容なら予定通りに行ってきてほしい」
「えっと……うん。商店街で買い物しに行くのに付き合うだけだから1時間くらいで終わると思うから、お言葉に甘えて行ってくるね」
「うん。それなら僕も商店街の方で予定済ませておくから、終わったら携帯に連絡してほしい」
「うん、わかった」
「あと、話は変わるけど、世界樹の卵は無事に届いたんだよね。あれからどう?」
「!? そう、世界樹の卵!!もうね、すっごく可愛いの!!!」
あ、一瞬でスイッチ入っちゃった。これは当分帰ってこなさそう。
その後、朝の時間だけじゃ足りず、昼休み中もその話で持ち切りになってしまった。
将来は絶対に親ばかコース一直線かな、これは。
主人公はデートだと気が付いているのか。
なぜ世の8割の男主人公は朴念仁なのか。
そしてお気づきとは思いますが、主人公はリアルでも強くなっています。ただし、その出番はほとんどない(汗)
ただの将来への伏線です。
デート本番は長くなったので次に回します。




