第十七問「最後まで面倒は見れません」
よろしくお願いします。
これにて無事に(?)1章は終了です。結局戦闘シーンはほとんどないVRって…。
そして、ここまでの内容も少しずつ誤字修正しています。話の流れは変わっていません。
さて、ギークさんに無事に相談できて適正な条件でクエストも発行出来たし、ついでに領主様にごみ問題の相談をして色々手を打ってくれるって約束も取り付けた。
これで後は少しずつ沈静化待つだけだね。
ちなみに今回のクエストは、街の為だって言うギークさんと、元々は僕が招いた問題だっていう僕の主張がぶつかった結果、褒賞金は僕と街とで半々に出すことになった。
なんで僕にそんなお金があるかというと、例の街建設における収益の一部が発案者たる僕に入ってるからだ。打ち合わせの時は全然そんなこと言ってなかったから、所持金の額を見てびっくりした。桁が3つ4つ増えてるんだもん。
そして、もっと驚いたのがこれ。
『ステータス情報
名前:テンドウ
種族:人族
職業:道士
レベル:37
称号:「クエストの仕掛人」「こころを通わすモノ」
スキル:
武器術Lv3、格闘術Lv2、魔術Lv3、近接戦闘術Lv2、遠距離戦闘術Lv2、身体強化Lv3、精神強化Lv3、魔力操作Lv2、肉体抵抗Lv1、精神抵抗Lv1、呼吸法Lv1、先見Lv2、空間把握Lv2、直感Lv1、思考加速Lv1、探索Lv2、探知Lv2、隠密Lv2、生産一般Lv3、加工一般Lv3、薬学Lv3、統率Lv1、指揮Lv1、交渉術Lv2、話術Lv3、念話Lv2、教育Lv2、料理Lv2、接客Lv2……etc.
魔法:
全属性魔法初級Lv5、回復魔法初級Lv2、強化魔法初級Lv4、弱体化魔法初級Lv3、守護魔法Lv1、結界魔法Lv1、召喚魔法Lv1』
前にあったスキルが無くなってたり、逆に身に覚えのないスキルが増えてる。っていうか多すぎ。
なんでこんな事になってるのかをギークさんに聞いてみたら、
「金の件と同じだ。クエスト中に得られた経験値、クエスト報酬の経験値、そういったものが胴元のお前の所に少しずつ送られていった結果だ。まぁスキルなんてものは有ればいいってもんじゃなくて、実際の経験を伴ってなんぼだ。おまけみたいに思っておけばいい」
ってことらしい。ギークさんも言ってたし有って困るものじゃないし、気にしないでおこう。うん。
それから3日ほど僕もゴブリンを討伐するために、森に入っていた。
幸い黒い蜘蛛には会わなかったし、あの巨大ゴブリン以上のゴブリンにも遭遇しなかったし数自体減ってきてる気がする。なにより、気が付いたら周りに茶色の蜘蛛が2、3匹居て一緒に戦ってくれるから凄く楽だった。多分、アシダカさんの仲間なんだと思う。一度何て『お勤めご苦労様です。兄貴』とか念話で声を掛けられた。兄貴って、ヤクザじゃないんだから。
そんなある日。
『こんにちは、兄弟。ちょっと相談事があるんけど、今からそっちに行っても良いかな』
アシダカさんからの念話だ。相談事、か。前にアシダカさんも知り合いに呼ばれたって言ってたからそれ関連かな?
(もちろん。僕の位置は分かる?ここで待っていれば大丈夫?)
『うん。友誼を結んだ相手の大体の位置は分かるし、周りに僕の仲間たちがいるでしょ。そのお陰で、そっちの大体の状況も分かるんだ』
それから5分と経たない内に、緑色の蜘蛛、アシダカさんがやってきた。心なし前に会った時より色艶が良くなってる気がする。
『おまたせ。ごめんな、急に相談なんて持ち掛けて』
(気にしないで。頼られるのは嫌いじゃないから)
『そう言ってもらえると助かるよ。それで相談事なんだけど、僕の友人のお世話になっているヒトが悩み事を抱えているらしくてね。それを解決出来そうな人を探してるんだけど、僕には心当たりが君しかいなくてね』
(うん、解決出来るかは分からないけど、出来る限り協力はするよ。具体的な所も聞いても良いかな)
『申し訳ないけど、僕の口からは言えないんだ。直接本人から聞いてほしい。そして、もう分かってるかもしれないけど、この話は一切、他には漏らさないで欲しいんだ。悩み事についてもそうだし、これから行く場所もだ。
改めて聞くけど、それでも引き受けてくれるかい?』
ポンッ!
【シークレットクエスト「アシダカさんの相談」を受けますか? [はい/いいえ]
このクエスト受諾後、このクエストに関する一切を他者に伝えることが出来ません。
それに伴い、このクエスト遂行中は、一部の行動が制限されます。】
シークレットクエストか。それだけ重要だって事だよね。迷わず「はい」を選択する。
『引き受けてくれてありがとう。向こうに行ったら、当分戻っては来れなくないと思うんだ。もしやり残したことがあるなら、出発を遅らせても良いよ』
あ、そうだよね。突然居なくなったら、みんなを心配させるよね。
(ありがとう。じゃあちょっと街まで行って挨拶だけしてくるよ。ここからだと、3時間くらいで戻って来れると思うから待っててもらっても良いかな)
『うん、分かった。別に急がなくても大丈夫だよ。僕も待ってる間に久しぶりにゴブリン退治をしてるからさ』
(わかった。じゃあ、また後で)
そう言って街に向けて移動した。途中で何度かゴブリンに遭遇したけど、時間を掛けたくなかったので、邪魔なのだけ蹴り倒していく。
15分程で森を抜けて、農家に着いたので、おっちゃんとエリスさんとエルザに、街を出ることになった事と、今までお世話になったお礼を伝えた。
エルザから「また戻ってくる?」って聞かれたけど、クエストの詳細も分からないので「ごめん、約束は出来ない、かな」って答えたら、泣きそうな顔になっちゃったけど、エリスさんがエルザの肩に手を置いたことで堪えたようだった。
その後も、冒険者ギルドや領主館など、お世話になった人に挨拶をして、ついでに新しい街の様子を見てきて(もう8割方稼働してるみたいだった)、ホノカにも会って行こうかと思ったんだけど、森に行ってて会えなかったので、メッセージで伝えることにした。
『うん、その感じだとクエスト絡みだよね。分かってる。聞いても答えられないんだよね。そういうのって難易度高いのばかりだから気を付けて行ってきてね。また終わったら、今度は一緒に冒険しようね』
この感じだとホノカもシークレットクエストを受けた事があるんだろうね。
さて、これで挨拶しておきたい人は全部かな。じゃあアシダカさんも待ってるし、急いで戻ろう。
そうして森に戻って5分程走った所で、突然、僕の前に黒い蜘蛛が躍り出て来た。
咄嗟にアイテムボックスから合成杖を取り出して構える。
いつ襲い掛かって来ても良いように相手の全身を捉えながら視線を合わせる。って、あれ?敵意がない。黒いからてっきり人を襲うタイプだと思ったんだけど、違うのかな。もしかしたら……
(こんにちは。僕はテンドウって言います。僕の言葉、分かるかな)
『ああ、驚かせてすまない。テンドウ殿。我に貴殿を襲う意思はない。ただ礼を伝えに来たのみだ』
良かった。スキルに「念話」ってあったから僕からも話掛けれるかなって思ったんだけど、上手く行った。
構えを解いて自然体になりつつ話をつづけた。
(お礼、ですか?)
『そうだ。我々は本来争いは好まぬ。この黒き姿も森と仲間を守るために已むに已まれずなったものだ。それが最近、森に入ってくる人間達が我らと積極的に敵対しなくなったのだが、理由を調べてみたところ貴殿の尽力の賜物だと分かり、こうして会いに来た』
あ、なるほど。クエストに茶色の蜘蛛を攻撃しないようにって記載したのをみんな守ってくれたんだね。
(それ、僕はほとんど何もしてないですよ。みんなが頑張ってくれたお陰です)
『それでもだ。貴殿が動いてくれなければこの森に棲む我々の全てが黒き姿となり、取り返しが付かなくなっていただろう。本当に感謝している。
そして我々黒き者は森の奥へと行くつもりだ。もう人間達と争う事もないだろう。
後はそうだな。この恩を何かの形で返せれば良いのだが、何かないだろうか』
(う~ん、急に何かって言われてもね。……あ、折角こうして会えたんだから。これで、はいさようなら。じゃなくて、また会えたら嬉しいな。だから僕と友達になってもらう事は出来ないかな)
『……』
あれ、ダメだったかな。というか……呆れられてる?表情とか流石に分からないけど、そんな雰囲気が伝わってくる。
『……ふはははっ。アシダカさんからは聞いていたが、貴殿は不思議な御仁だ。あい分かった。今から我らは友だ。何かあればいつでも我を呼ぶがいい。……ふむ、そうだな。それであれば我にも名を付けてはもらえぬか。アシダカさんだけ名があるのはちと悔しいでな』
(悔しいってw。んー、名前、なまえかぁ。じゃあ、黒い毛並みが綺麗だから「カゲロウ」でどうかな)
『「カゲロウ」……ふむ。良き名だ。感謝する』
ポポンッ!
【アサシンレッグスパイダーは真名「カゲロウ」を得ました】
【アサシンレッグスパイダー「カゲロウ」は、シャドウガーディアンスパイダーに進化しました】
【カゲロウと盟友になりました】
アシダカさんと同様に、カゲロウも進化したみたいだ。黒かった体がさらに黒く、まるでそこにただ影があるかのような錯覚を覚える姿に変わった。
『それでは、テンドウ殿。また会おう』
そう言い残してカゲロウは影のように消えて行った。
突然の事に色々驚いたけど、友達になれたし、良かった。さ、気を取り直してアシダカさんの所に行こう。
そうして更に10分程森を走った所でアシダカさんと合流した。
何というか、凄く嬉しそう?な雰囲気が漂ってる。何か良いことあったみたい。
『おかえり。アサシンレッグスパイダー、あ。カゲロウとも友達になったんだって?やっぱり君って凄いね!!
さて、それじゃあ知り合いの所まで連れて行くから、僕の背中に乗って』
そう言って背中を向けてくれるので、恐る恐る乗ってみた。
あ、背中の毛が硬くて刺さるんじゃないかって思ったけど、むしろフワフワしてて気持ちいい。
(乗ったよ。重くはない?)
『全然平気さ。じゃあしっかり掴まっていて。行くよ』
そうして僕が走る数倍の速度で森の奥へと駆け抜けて行くのだった。
お付き合いありがとうございます。
スキルについて「え、そんなスキルの経験値入る訳ないじゃん」って思うものに関しては、一応理由があって取得できてます。きっと。
そして正に予定外の出演者「カゲロウ」。この話の後半になって突然「あ、ほしいな」と思って誕生しました。
次回から2章に突入します。次章で主人公の育成が捗る予定ですが、戦闘シーンは……。