第十一問「お金がない(物理的に)」
よろしくお願いします。
これまでの話を見返したら人名とか方角とか間違っていたので、そこだけ直していますm(_ _)m
やるべきことは、きっと前とそんなに変わらないはず。
現状把握とビジョンの共有だ。
「領主様、現状を教えて頂いてもよろしいですか?」
「建設予定地の選定と、国王陛下への報告、各街への告知を出したところです。各街からの報告で外来人と思われる方々が数万人規模でこちらに向かっていて、早い人たちは街の北側に野営しながらクラン勧誘をしているようですな。また商人達も商機と見て移動を開始しているそうです」
「なるほど。おおよそ期待通りですね」
良かった。これなら何とかうまく行きそうだ。ただ、急がないとまた人で溢れることになるな。
その為にも地元民の協力は必要不可欠だ。
「こちらでやることはそれほど多くはありませんが、見てのとおり僕は若輩者です。先ほどは大きな事を言いましたが、知恵も能力も足りません。ですので皆様のお力をお借りしてもよろしいでしょうか」
「まぁそうだろうな。むしろ自分一人で全部やるなんて言い出したら叩き出してるところだ」
「乗り掛かった船だ。無茶な事でなければ多少は何とかしよう」
「私たちの街の事ですからね。協力は惜しみませんよ」
うーん、こんな良い人たちの部下がなんであんなんだったのか、いまいち謎だね。まぁそれはともかく。
「ありがとうございます。まずやるべきことは街の区画を決める事です。その際、予めメインストリートを作ること、万が一、魔物の襲撃を受けた時に防衛拠点に出来ること、商業区、工業区、高級住宅街などの様に街の大まかな形を決めましょう」
これを聞いて冒険者ギルドのマスターが声を挙げた。
「最初の方のは分かるが、高級住宅街ってのはなんだ。貴族じゃあるまいし、外来人がそんなものに食いつくのか?」
「恐らく大丈夫です。自己顕示欲の強い人って何処にでも居ますから。万が一興味を持たれなかったら、一般の住宅街に改正すれば良いだけなので問題は無いと思います」
「区分けした後の、土地の配分はどうやって決めるのかしら。くじ引きって訳にも行かないでしょうし」
これは薬師マスターの発言。うん、皆興味を持って聞いてくれてるね。
僕は出されたお茶を一口飲んで間を空けてから皆を見渡した。
「少し話は変わりますが、今この街、いや、国全体かもしれませんが、一つ大きな問題を抱えてますよね」
「ん?そりゃ幾つも問題はあるだろうが、どれの事を言っている?」
「端的に言うと、お金、無いですよね。額面的な意味じゃなくて物理的に。外来人が大勢押し掛けてきて、その多くが魔物退治などをした報酬を懐にしまって、使わない。結果的に国内から多くの貨幣が無くなってしまっているんじゃないですか?」
「う、確かにな」
みんな心当たりがあるようで、憮然としてしまった。
やっぱりそうか。特に日本人ってお金を貯める傾向にあるし、稼いだまま辞めて行った人の分とか還ってこないだろうし。
「なのでそんな外来人の財布の紐を緩める為に、オークション。いや、入札をやりましょう」
「ふむ。オークションは分かるが、入札ってのはなんだ」
「オークションは、1つの商品に対して金額を公開して競り合うものじゃないですか。今回それをしようとすると凄い時間がかかると思うんですよ。
入札の場合、購入したい人達に幾らまでなら出すのかを書いた紙を提出してもらって、その中から一番高い人に売るんです。またその際、最低金額はこちらで決めておきます。例えばメインストリート沿いは高く、端の方は安くみたいに」
「なるほどな。だがそれだと結局、金を持ってる所が買い占めるんじゃないのか?」
「えぇ。そうならない為に、例えばバラバラの区画を一斉に入札するけれど、1クランで1か所しか入札できない。また、購入できるのは1クランにつき、1か所または住居と店舗1つずつとかに制限を掛けましょう。そうすることで、最初の1回目で勝負に出るクラン、後から掘り出し物を狙うクランとか、色んな駆け引きが起きると思います。予算の無いクランは最初の方に出た安い区画を狙えば良い訳です」
やっぱりゲームなんだし、駆け引きとか戦略とかあった方が楽しいよね。
「後は1階を地元の方の店舗、2階をクラン所有にすることを条件に安くしたり、特定のスキル、例えば飲食店なら料理スキルを持っているメンバーが居るクランを優遇するのはどうでしょう。そうすることで、街の施設もある程度コントロール出来ますし、他の街から支店を誘致することも出来ます」
「それなら確かにある程度安定した店舗経営になりそうですな」
「はい。あとは街道の整備やインフラ整備、外壁作りなどについても各クランから物資と人を出して貰いましょう。その辺りの出す量や、有償にするか無償にするかは後から検討しましょう。
差し当たってのイメージはこんな所ですが、如何でしょうか」
「ふむ。まだまだ荒い所は多くありますが、方針としては良さそうですな」
「急ぎ土地の区分けを行ってしまいます」
「土地の査定は商業ギルドが総力を挙げて2日で何とかしましょう」
「既にこの街まで来ている人達は、このまま街の北側に仮設キャンプ場という形で留まってもらいましょう」
「そうですね。既に露店を開いている商人もいるみたいですし。土地の割り当てさえ決まれば随時そちらに移動して頂きましょう」
「後はこの部分はどうするか」「こちらも詳細を早めに決めませんと」……
そこからどんどん議論は白熱していき、解散する頃には日が暮れるどころか朝日が登り始めていた。
うーー、僕の知識なんて前に読んだ歴史小説くらいなのに。絶対高校生が関わる内容じゃないと思う。
時間的にはログアウトして寝たいけど、やり残したことがあったので、疲れた頭を押して、街の南側、農家に顔を出しに行く。
時間的にまだ早いかなって思ったけど、家畜の世話があるみたいで、納屋のところでエルザさんを見つけられた。
「エルザさん、おはようございます」
「あ、テンドウさん。おはようございます。こんな朝早くからどうした、の、って。 目の下隈が出来てるけど、寝てないの?」
おー、このゲーム。隈まで再現するのか。芸が細かいな。バッドステータスで寝不足とかあるのかも。
「いやぁ、昨日別れた後、領主様に呼ばれて打ち合わせが長引いてしまって。終わったのがついさっきだったんだよ。今日はこちらに届けるものがあったから、それを渡したら寝るよ。という訳で、これ、今日来る子供たちに使わせてあげて」
そう言って、納屋の空いてるスペースにアイテムボックスから、スコップや手ぬぐい、子供用の木刀などを置いていく。合計40個ほど。ちょっと多かったかな。エルザさん、驚いてるし。
「テンドウさん、こんなにいっぱい。ありがとうございます」
「いやいや。紹介した手前、これくらいはしないとね。では、おやすみなさい」
そう言ってエルザさんの返事も待たずにログアウトしたけど、もう寝れる時間は数時間しかない。明日は寝不足確定だな。
お金の単位はイェンですが、貨幣社会です。
冒険者への報酬とか、貨幣で払い続けてたら、海外どころか異世界に流出していく社会問題です。
貨幣の価値はこんな感じ。
小鉄貨:1イェン
大鉄貨:10イェン
小銅貨:100イェン(パン1つ)
大銅貨:1,000イェン(素泊まり)
小銀貨:10,000イェン
大銀貨:100,000イェン(普通に見かけるのはここまで)
金貨:1,000,000イェン
白金貨:100,000,000イェン
この後はリアルと掲示板で1話とVR内で1~2話を経て2章に行きます。予定通りいけば。
ってVRゲームでまだ1度も戦闘してない。