第6話・無力感と野外学習
第6話・無力感と野外学習
フィアまでギルドチームの部屋に止まるようになって数日…
校舎までは同じ道を歩く必要がある上、朝食他を取るようなスペースも無い為朝を皆で出て外で済ませて…
当然と言うべきか、すさまじく見られるようになった。
「美少女さんを連れ歩いてるからかなー…」
「棒読みで無理して言わなくていいっ!」
事故の一件がついこの間の為少し褒める意味を含めて気晴らしに言ってみるが、逆に怒らせてしまった。
隣を歩くナードが小さく溜息を吐く。
「進んで地雷踏まなくても…でも確かに同棲の組み合わせとしては目立つかもしれないけどね。」
「う…やっぱり私が住んでるから?」
「苦情があったら大家さんに言うか家を貰うかするって。」
同棲って表現をすると問題かもしれないが、誰が資金を用意するわけでもない上実家がこっちにあるわけでもない。
学生で資金繰りをして生活するように出来てる場所なんだ、予算検討した結果なら文句言われる筋合いもない。
ない…
けど、なんかいつもよりずっと多く見られる気が…
さすがに若干気が滅入ってくる中校舎につくと、見知った人影があった。
「あ、あのー…」
「スタアさん?」
恐る恐る声をかけてくる研究者スタアさん。
竜の生態調査とか、こっちに来てたわけとか調べてるなら忙しいんじゃ…
「実はその…学生が竜種討伐したって事で呼ばれて…」
「え、あー…」
調査するには、多分現地にも行かなきゃならない。
竜を見せた結果、護衛を雇ったりなんだったりして行けたんだろう。
で、その結果、『最初にこれ倒したのは誰だ』って話には当然なるわけで…
「研究者の人と話してるぜ…」
「おいおいマジかよ…あいつら一年だろ…」
遠巻きに聞こえる声に、視線が多かったわけを察する。
あんまり色々言われないといいが…
Side~レイナード=マーシナルス
スタアさんが校舎に来た日から更に数日。
竜討伐の一件が知れてしまった結果、目立たないようにしていた僕にも視線が向けられるようになった。
簡単に答えられる質問程度には答えたものの、時間がないと言って質問攻めから逃げているうちにやがて直接は話しかけられなくなったが、心象は悪くなったようで遠巻きに嫌な言葉が届く。
もっとも、僕はフィアと違って『そんなもの』はどうでも良かったのだけど。
ただ…
「おい聞いたか?リトルフェアリーの二人、今度は上級魔法の制御に成功したらしいぜ。」
「一人で撃てたら人型の天災指定受ける奴だろ?…半分天災って事じゃん。」
盛り上がっていた二人のクラスメイトが僕に視線を向けてくる。
「オマケ君は良いねぇそんなとこにいられて。」
「数合わせに人を探してたネストに声をかけられたんだよな、それっきり誰も加えてないらしいし…何であいつなのやら。」
僕は胸の痛みを殺して…多分表情は歪んでしまっていたが、無言で席につく。
バカにされて悔しい…んじゃない。
彼らの疑問は僕自身の内にすらある真実だから辛いんだ。
魔法は天性の素養や才能に大きく左右される。僕は平凡もいいところだった。
機械側にしたって特別なにができるわけでもない。…フィアよりはましだけど。
『伝説の英雄』と『相棒の賢者』にくっついている『村人』。
リトルフェアリーにおける僕の立ち位置はまさにこんな感じだった。
名を上げたい訳じゃない、でも…力がほしい。
二人の力になりたい。
だから…回りの評が事実だと思い知っている僕自身が辛かった。
暇を見ては魔力を扱う鍛練と射撃の練習、リトルフェアリー内で資金稼ぎの為に受けた依頼の雑用をこなす。
魔法がらみか高位の能力者が必要なのか、時々二人だけで外に出る日は、二人が持ち込んでいる書物を読み漁る。
そんなある日…
「んじゃ野外学習の役割分担な。伝令、医療、警護…は、2年からか。」
野外学習の役割分担をする事になった。
オルミクスで中等部から行う野外学習…と言う名のキャンプ。
魔物が生息している関係から、完全に外に出ない職種でも選ばない限り危険なオルミクスでは誰でもやっておくべきと言うことで毎年ある。
自由度が高い為、遊びたい皆はこぞって色々と話していた。
…成績、素行に問題があると行けなくなるので、一人ふてくされている人もいたが、自業自得だろう。
ともあれ、人の事はいい。
「先生、僕は警護役にしてください。」
話が始まる前に、僕は自分から名乗り出た。
「…レイナード、そりゃ2年から」
「駄目なら野外学習に参加しなくていいです。」
きっぱりと告げると、周囲の視線が集まるのを感じた。
女子もいるし、本来無縁の目立つ行動に体が震える。
けど、これは譲れなかった。
皆思いで作りや楽しみで仕方ないと言った感じの中悪いけど、僕はそんなことどうでもいい。
ネストとフィアについていけなければならない。
その為にも、力が必須だった。
ペナルティで野外学習に参加できなくなるならその間勉強と練習に当てられる。
下手をするとそっちの方が為になるかもしれない位だ。躊躇う理由はない。
「あー…文句あるやつはいるか?」
本来なら無いわけがないだろう苦情。
けど、僕は別に野外学習にいけなくてもよくて、他の皆は僕と喧嘩するのにリスクを負いたくない。
文句は出ずに、僕は警護役につくことができた。
警護と言っても実際することはあまりなかった。
当たり前と言えば当たり前だ、実際には証明書取ったり名声ある人に頼んだりするべき荒事、まともな戦闘なんて早々あるわけがない。
更に、ある程度狩りに秀でた者は普通大規模な集団を狙わない。
だから、先生がいない箇所ではぐれてきたような狼一匹や毒虫を払う程度だった。
「さすがリトルフェアリーの一員なのね、頼りになるー。」
「レイくんカッコいいー!」
女子からの冷やかしに耐えるのが一番の苦痛だった。
聞けば聞くほど嫌になる、フィアもネストも単騎で二桁以上相手にできる狼一匹を破裂音で追い払った位で好評なんて、馬鹿にしてるのか…
でも、下手に関わると余計なことになる。無関心を装って僕は胸の怒りを圧し殺した。
そうして昼…役に着いている人以外で夜営の準備をすることになっているため、僕は機械クラスから離れて一息吐いていた。
「お疲れナード、調子はどうだ?」
と、同じく自クラスから離れてきたネストが僕に声をかけてくる。
「冒険談になりそうな依頼外出よりはよっぽど楽だよ。」
「そりゃそうか。悪いな準備ロクにできて無い内から無茶させて。」
謝られてまた胸が痛む。
僕が役立たずなのに気を使われても情けなくなるだけだった。
だからと言って、原因は自身の無能なのだから責められるわけがないが。
「ネスト!ベクトル先生と一緒に近場の露払いに…ぁっ。」
と、僕達の元に顔を出したフィアが言いかけた言葉を途中で飲み込んだ。
僕の姿が途中まで目に入らなかったのだろう。
「フィア、気にしなくていいよ。二人の邪魔や真似事をするために警護役に名乗り出た訳じゃないから。」
「邪魔って…そんなあえ?フィア引っ張るな」
「いいから!ナード、ここよろしくね。」
無理があるのが丸見えの作り笑顔で僕にそう言ってネストの手を引くフィア。
ネストは本気で否定しようと、フィアはそれを聞いた場合の僕の気分を気遣ってああしてくれたんだろう。
人の顔色や心中を伺うのが日常だった僕には…って言うか、誰でも分かりそうな位二人ともお人好しだった。
…とは言え、冗談や卑屈だけで言った訳じゃない。
二人について回ったところで、僕が安全圏にいる間に二人が片付けるだけで、邪魔になる上に僕の経験にならない。
強敵退治に同行するより、大丈夫な雑魚相手に必要なことを学ぶ方が大事だと思って警護役に名乗り出たんだ。二人と同じことができるなんて思い上がってはいない。
接近の音を聴いたり、守りたい対象と敵の間に入ったり、基本することは変わらない筈だから。
(早い話、銃なら的に確実に当てられるようにさえなれば相手用の弾選択さえ間違えなきゃ役に立てるんだ、位置取りと集中判断だけ出来れば今二人の真似はしなくていい。)
だから、二人についていく必要はない。僕は僕で…
「あ、あのっ!レイナード君!」
「っ!!」
唐突に女子の声。
人は少し離れた場所から見ていたのは知っていたけど、まさか声をかけられるとは思っていなくて身体が跳ねる。
振り返るとそこにいたのは同じ機械クラスの女子だ。
「な…なに?」
「話があるの…ちょっと良いかな?」
軽くも笑いもない声かけに、さすがに言葉に詰まる。
正直突っぱねたいところだったけれど、それは僕のトラウマのせいであって彼女に落ち度はない。
僕は恐る恐る頷いて、彼女の先導に付き従った。
人波から外れた見晴らしのいい場所。
そこで…
「あ、あのっ…好きです!付き合って下さいっ!!」
僕は、望んでもない、告白を受けた。
「じ…冗談じゃない!誰がそんなのっ!!!」
僕は叫んで後ずさる。
嫌だ嫌だ嫌だ…
折角、折角逃げてこられたのに、緊張と逆らうことへの恐怖で頭が真っ白になるあいつらから逃げて逃げて漸く嫌だまたあんな
「そ…っか…」
震え混じりの寂しげな声色。
元いた場所で絶対に聞くことのないそれに、歪んでいた視界が少し戻る。
目の前、少女の、泣いている
「ぁ…」
ネストに連れられて泊まる事になった、初日のフィアの見せた、今にも壊れてしまいそうな姿が、目の前の女子に被り漸く意識が晴れた。
違う…彼女はあいつらじゃない…
「ご…ごめん…そこまでやだって…思わなく…っ!!」
泣きながら顔を背けて駆け出す彼女。
その背が森へ消えていくのを僕は呆然と見送るしかできず…
…森?
「ちょっとあんたねぇっ!!いくらふるにしたって言い方ってもんが」
「先生に伝言を、僕は彼女を追いかける!!!」
様子を離れてうかがっていたらしい女子にそれだけ言うと、僕は彼女を追って駆け出した。
魔物の生息域の森だぞ!?非戦闘員なんてあっという間に餌の仲間入りだ!!
「くそっ…こんな理由で足引っ張ってたまるかっ…」
正直な話彼女自身は大して興味ない。
けど、リトルフェアリーが死人を出したなんて結果は冗談じゃない。
「きゃああぁぁぁぁっ!!」
悲鳴が聞こえたほうにかけていくと、崖のようになっている場所が見えた。
覗き込むと、落ちたらしい彼女の姿があった。
滑れる程度だったらしい。とりあえず落ちた彼女がスプラッターにはなってなかった。
厚めのナイフを片手に適当に手足を木の根や石に引っ掻けながら斜面を降りる。
下っている僕を見つけていたのか、涙目で僕を見てくる。
「…名前。」
「え?」
「人の事、出来るだけ意識の外に追いやってたから、君の名前も知らないんだ。」
一応はクラスメイトなのに間抜けな話だったけど、今はしょうがない。
「シイル…」
「…今だけそう呼ぶよ、死にたくなかったら僕を信じて。」
僕の言葉にコクコクと首先だけで頷くシイル。どうやらまだ信用はあるらしい。
…ばつが悪い話だ、僕が人を守れるなんて、僕が一番信じられないのに。
何もなければ僕が上から蔦かなにかで引き上げればすむ話なのだけど、耳を済ませばそんなことのんびりしていられないのがわかる。
「…向こうへ全速力で。」
「う、いたっ…」
「怪我は治せる、死ななきゃ無理して行って!」
足を痛めたらしい…下手すると折れた彼女には酷かもしれないが、僕はネストじゃない。
武器なしとは言えオークに囲まれて全部捌ける自信なんかなかった。
シイルが動き出すのと同時に、森から一匹の豚顔が姿を見せた。
瞬間、その顔面に雷撃弾を放り込む。
直後、木の陰に隠れていたつもりらしい仲間が次から次へと姿を見せる。
「ひっ!」
「シイル走って!」
恐怖で周囲なんて気にしていられなかったのだろうシイルが弾かれたように動き出すのと同時に、僕はその後を追った。
痛めた足で必死らしいがさすがにそれだけだと追い付かれる。
僕は必然的に先頭になるオークの足元に時折振り返って雷撃弾を撃ち込んだ。
走っているときに痺れてつまづく豚。彼らもさすがに仲間を踏めないのか、止まらず転んだり立ち止まったりしていた。
だが、奴らが焦っていない理由もあるんだろう。何故なら…
「い、行き止まり…」
切り立った崖のようになっていた場所は、だんだん狭くなっていた。
自然、行き止まりにあたる。
僕はシイルを背に追ってきていたオーク達を見る。
二匹並ぶのがやっと程度の隙間。
彼らもぎゅうぎゅう詰めになりたくはないのか、一直線になっていた。
今しかない。
僕は銃を手放しながら両足につけていた飾りのような剣を抜いた。
塚を接続可能な二本の片刃剣。先端に筒がついたそれは、明らかに剣としては異質なもので…
テストすらまだしていない、僕の『切り札』だった。
「翔べ!死神の剣!!!」
魔力を通して筒を起動させ、僕は接続した剣を投げ放った。
死神の剣。
ブースターにより高速回転する刃を投擲するというだけの単純な兵器。
まだ一回も試してないが、これが効いてくれなかったらこの状況を凌ぐ手は無い。
…なんて心配は完全に杞憂だった。
手放した瞬間にアクセル全開の車みたいに走り出した剣。
ブースターから放たれる光が輪を作るように結ばれたそれは、一瞬で僕の視界から消えた。
直線上にいた豚人間の胸元辺りを次から次に深々と切り裂きながら。
頭じゃないから即死はできなかったのか、倒れて苦しそうに悶えるオーク達を前に、僕も膝を折った。
「はは…」
緊張が途切れたのと同時に痛み。
真っ直ぐ飛ばす事ばかりに気をとられ過ぎたらしい。
剣を投げた右の脇の下を思いっきり斬ってしまった。
息が大丈夫なあたり肺まではいってないみたいだけど、骨は危なそうだ。
「レイナード君!血!血がっ!」
「分かってるから黙って…当たってない奴がくる…」
僕は涙目にグシャグシャな視界をまばたきを繰り返しながら銃を握る。
右はダメだ、痛くて話にならない。
どうにか左片手で握って悶えるオークたちの先を見る。
気が立ったうなり声が聞こえてきた。
…当たり前だ、道が段々狭くなってたからこっちに来たんだ。
途中で止まらず直線全てを斬り裂いたとしても、無事なやつは出る。
二匹が、姿を見せた。
「くそっ!!」
滲む視界と力の入らない身体で左手の銃を撃つも、雷撃弾はわずかに的を外れ…
咆哮をあげて、二匹が駆け出し…
僕達とオークの間に、割って入るように雷撃が落ちた。
「よっ…と。」
崖から人影が降りてきて、落雷で穴の空いた地に降り立つ。
「悪いな、そこから一歩でも来るなら加減できないぜ。」
「ネスト…」
涼しげで優しい聞きなれた声。
それを最後に、僕の意識はぱったりと途切れた。
SIDE OUT
死神の剣。
戦闘能力が無いからってナードが案を出した携行武装。
片刃の剣の先端裏にブースターのついた、剣として取り回すのには不都合な剣。
持って振るう間にブースターを吹かせば、腕の力以上の斬撃を振るえ、接合して回転投擲すれば、プロペラのように高速回転しながらすっ飛んでいく。
現地の惨状は中々エグイ代物で、中級魔法もびっくりな威力だった。
本人としては自由操作にしたいようだけど、そこまでやるなら魔力制御とか内部機構とか色々必要になってくる。
ブースターだけだから剣に搭載しきれて強度も問題なく今のナードでも扱えるんだ。
投げた後の距離を考えると拾いにいかなきゃいけない関係で単発と見たほうがいいが、効果は十二分。
「だとしか言えないんだけど…」
「だけど…じゃねぇっつの!何だあのふざけた威力は…」
ナードのとこのクラス担任、ベクトル先生がガリガリと頭を掻きながらぼやく。
俺は怪我した事と携行武装にしては出鱈目な威力を発揮した死神の剣の説明の為に呼び出されていた。
「まぁ…悪いのはレイナードの奴じゃなくてシイルのほうなんだけどな…」
「泣いてた女の子あんまり責めないでやってくださいよ?」
「やかましい。大怪我しといて怒らいでか。」
怖い顔のベクトル先生だが、何だかんだ心配してるかららしい。
「笑ってんなこら!」
「いや怒ってるけどしょうがないじゃないですか!って言うか、しょうがないどころかナードが打てる手だての中では最善手だと思いますし!」
「そうだがな…ったく…」
学生だからほっとけと言うならシイルって娘は死んでたろうし、ナードが無傷であの群れとやれるわけ無い。
調子にのって活躍しようと無理したならともかく、今回は責められる謂れも無い筈だ。
Side~レイナード=マーシナルス
危険行為でのペナルティで強制送還されたシイルに、僕は看病されていた。
結構広く骨に罅が入るほどに切り開かれているから、包帯を代えてもらったりしている。
彼女は科学側でも薬学専行の上今回の野外学習でも医療班だった為、丁度良かった。
「…先生には、話したんだけどね。僕、女性にトラウマがあるんだ。」
彼女が逃げ出す原因になった全力の拒絶の理由。
強制送還に際してさすがに説明しておく必要があった為、返される前に先生には伝えておいた。
それで何処までシイルのフォローになったかは知らないけど。
「で、でも…フィアリスさん…」
「今はまだ、いつもネストに間に入ってもらって歩いてる。それに、仕事を捌くにしても話程度は出来ないとって…フィアにも承諾して貰って、距離感を保って協力してもらってる。」
「だから…包帯代えるとき強張ってるんだ…」
さすがにまだ無実の彼女を僕が罵倒して危険に晒したのだから説明責任位あるだろう。
僕の話を聞いて、彼女は申し訳なさそうに俯いた。
「大体なんで僕なんか?」
まだ明るい話になるかと思って問いかけると、顔を上げた彼女は笑顔を見せる。
「最初はかっこいいなって思ってた位だったんだけど、レイナード君…ずっと魔法の扱いとか銃の練習とか真剣にしてたでしょ?ず、ずっとじゃないけど時々気になって見に行ってて…」
つけまわしてたと思われたく無いからか、必死そうにずっとじゃないと言う彼女。
僕の、って言うのは趣味悪い気がするけど、ネストやフィアなら追っかけ位いそうだし、騒ぐ事もない。
「竜とすら戦ったって話を聞いて…それで…あの二人が凄いって話が知れ渡ってる中で、ずっと努力してたの知ってて…どうしようもないほど気になっちゃって…」
「それで僕なんかをね…人を見る目は養ったほうがいいよ。」
トラウマが無かったとして、あまり明るく人と関わる気にはなれない。
ネストに声をかけられて一緒に居るものの、実力以外に人としての面白さとかも無いと自分で思う。
「まぁ、君が何悪い訳でもないから…あまり気にしないでくれていいよ。どのみち、普通に話すくらいは出来るようにならないといけないし…」
「あ、ありがとう…」
別に告白を受けたわけでも無いのにホッとしたようにするシイル。
はぁ…僕、女難の相でも憑かれてるんだろうか?
そう言うのは人気の男性…僕じゃなくてネストの方だと思うんだけどな…
その辺の男子ならニヤニヤ喜びそうな、僕にだけ特別必要の無いイベントに、巡り合せってつくづく奇妙なものなんだと他人事のように思った。
SIDE OUT
実際中大型の獣より毒虫のほうが対策って大変そう…蜂怖いです(苦笑)