幕間・穢れた夢の果て
注)ミルアーク視点になります。
幕間・穢れた夢の果て
魔法国でも優秀だったあたしは、さりとて色々限界があるせまっくるしいやり口を嫌って魔法国を飛び出した。
機器が使えないから車も病院も限界があるせいで死人まで出るような国馬鹿げてる。
とは言え、科学国は即物的かつ色々無視しすぎてて好きになれるわけも無い。
だからあたしが入ったのはオルミクスだった。
幼馴染のメリアが何かあたしについて来たがって、彼女の家自体も厳しくないから許されて二人してオルミクスに来たが…凄い人に会った。
スウィーティア=エリウス校長先生。
人手不足か何か、あまり優秀な教師と言える人がいない中…もしくは、魔法か科学かどちらかに偏りがちな中で、その人の話だけは驚くほど凄かった。
まるで存在自体が答えみたいな魔法と科学の平行運用法、複数人での運用前提の上級魔法を単独で扱うその姿に加えて必要があれば権力を振るうものの決して自身の為なんかでなく、地位を笠にきて偉そうにする事は絶対なくて…
オルミクスのために存在している公務の場所に自室を設けてそこでだけ暮らしているような…
名家の姿って、ああいう物を言うのだと思った。
オルミクスに名家と呼ばれるような特別扱いされる枠組みがあるわけではないのだけど、権威や名を人や国の為に使う姿はあたしがそれまで見る中で最も尊敬できるものだった。
魔法国で名家と呼ばれるような連中は、一応国の為には動くものの、一般人に関しては完全に馬鹿にしてかかる様相で、はっきり言って気に喰わなかったのだ。
しかも、メリアの友達には適正の高い者を見つけられなければ恋愛を許可されず苦しんでいる娘もいるらしくて、話では聞いていた『位が高い故に責務を負う姿』等とはかけ離れていた。
どうせそいつらあたしより弱い連中ばっかりだったし。
だから、あたしより色々とずっと優れていて優しい彼女を追いかけたくなった。
科学の方の知識が少なかったから重点的に集めたが、新しいものへの抵抗なんかが少ないあたしは科学側の知識もスムーズに使え、教員に両方を使いこなす類が少なかった事もあってか魔科学の使い手としては1年ほどで最高位に近づけ、2年ほどで満足に使いこなせるといったペースで成長できた。
上級魔法を単独で使えるようになるにはさすがに日が要ったが、そこまで辿り着くと校長先生の目にも留まっていた。
魔科学として学ぶに当たって色々不都合だった事を振り返ってあたしは教師になれば役に立てそうだと思った。
事実当たりだったようで、学園都市で魔科学技師として高位置にあったこともあって、教師と要職を担うようになった。
それ自体には不満は無かったが、それ故に不満があった。
要職ゆえに顔をあわせるスウィーティア先生が何か隠しているのが見えて来たのだ。
事務的な話でも、幸せな事でもない事まで悟った頃には、あたしはさすがに苛立っていた。
先生に近づきたくて力になりたくてこうしているのに、近づいて苦しんでいるのが分かるなんて情けない話だ。
詳細を知りたいと真っ向から聞けば、課題を出された。
不老化しろなんて無理難題を。
そんな事が出来たら後継者やら何やらの揉め事なんて一切起きていないだろうに一体何をと思ったが、校長先生はそれが出来てしまっている。
故の課題なのだと納得して、研究した。
武装製作も高位魔法修得もできたのに、その能力ですら進まない研究に業を煮やした私は竜種の素材を求めて単身竜素材を求めて竜の住む山近くへ向かい…
誓って暴れるつもり自体は無かったが、あたしを警戒した竜の群れと戦わない訳にも行かず、惨殺現場を作る事になってしまった。
それからは散々だった。
元々禁止されていなかったとあまり責められなかったが、それ故に禁止事項として作らなければと人型の天災なんて枠組みが作られ、あたしは行動を縛られた。
校長先生はその管理をするに当たって人並みの活動からは殆ど外れなければならない立場になってしまい、変わりに度が過ぎた能力者の断罪者のようになってしまった。
偏見や固定観念を無くして願いを叶える力、何てものとして提唱している魔科学を用いて、願いを叶えようとして高い力を得た者達を裁く断罪者に。
あたしが、そうした。
あれだけ近年の名家を自分の家の事しか考えてないような連中となじってきたのに、目的地に辿り着くための無茶の結果、当の助けたかった人に負担を負わせ、挙句使えた竜素材でも不老化の術を見つける事は出来なかった。
そして、あたしは夢を見る事をやめた。
とりあえず仕事をしていれば補佐にはなるし、今のあたしがどうにも出来ない事は誰も出来ないだろうと、あの校長先生が詰まって困っている位なのだからと、そう思って。
生徒達には堅実な情報知識を与え、無理なく幸せに暮らせるように、それは考えて来たつもりだ。
無理が過ぎて被害を出しかねん奴には当たりが強くなったが、それを悪いとは思わなかった。
ネスト=グラスレインを見るまでは。
高い才能、キラキラと綺麗な事を惜しげもなく言える口、当初はまた止めなきゃならない筆頭かと思ったが…
『結果しくじっても、力になろうとあれこれやることを後悔する事は無いです。』
あっけらかんと言い切りやがった。
出来るまでやらないとと最終的に強迫観念に押されるようになってたあたしは、出た結果に心底後悔した。
ネストが手を抜いてるわけじゃないのは保有技能を見るだけで十分だ、命削るレベルで何かしてないとああはならない。
へらへらと笑ったかと思えば常人みたいに焦ってみたり、ただのお子様のようなのに何でああなるのかって…
何となく理由に気付いた時には、心の底からアホだと思った。
ど単純故に、やろうと必要と思ったらあっさりそうしてるんだと、そう気付いてしまったら。
必要な事を出来るまでやる、ある意味究極奥義。
言葉だけなら誰でもやってそうだが、自身の目を改造し、竜種と戦い、ミスリルを作り、禁術を編み出し、殺しにかかるスウィーティア先生と対話する。
こんなこと、誰でもがやるはずが無い。
実際、目をくりぬいて改造しろとか、あたしだって今言われても正直気は進まない。
そして…そこまでやっておきながら、あたしのように追い詰められてるわけでもない。
力じゃない部分で完全に負けている、そう思わざるを得なかった。
「…明日に決まったよ。」
例年のお祭り騒ぎもその後片付けも終わった翌日、後始末の終わった競技場でいつもの薬巻を吹かして感慨に耽っていると、静かに訪れたスウィーティア先生がただ短くそれだけ告げた。
確認するまでも無く、奴とアルラートさんの対決の日取りだ。
「急かも知れないけど、そんなに重要な仕事も無いはずだからミルアークも」
「あたしは行きません。」
「え?」
予定を空けられると思って日も高い内に伝えにきてくれたのだろうスウィーティア先生に、ちょっと冷たいかもしれない返答をきっぱりと明言する。
絶対に来るだろうと思っていたのか、先生は意外そうだった。
「会話勝負の見聞役を任されたときから思ってた事ですが、アイツがあっさり勝ってのけた時に確信しました。あたしはお呼びじゃないってね。」
「お呼びじゃないって…そんな事を思って止めたわけじゃ」
「分かってますが事実です、優秀程度じゃ、貴方達には必要ない…違います?」
「それは…」
卑屈な問いに顔を逸らす先生。
当たり前だ、世界の根幹に関わるほどの力なんてこの世に数人いれば多いほどだ。
スウィーティア先生が足りない所に、彼女にすら力が及んでない私が関われる筈も無い。
でも、出来る事もある。
「ネストのお情け無しで思ってた所…貴女の負う重責や仕事を少しでも片付ける事で貴女の力になる…自力で辿り着けたここまでをあたしの『領分』とします。」
元々の予定。
オルミクスの運営や雑事、国がらみの厄介ごとや面倒ごとを少しでも潰して無駄な心労を減らす事。
直接的に彼女をアルラートさんと過ごすのに役に立たないが、それでもくだらない事象は減った方がいいのは間違いないはずだ。
「だから…あいつらと仲良くしてやってください。ネストなら、きっと貴女の永遠の友達になってくれるでしょうから。」
「ミルアーク…」
吸っていた薬巻を放して、握りつぶす。
永遠の友達。
あいつならきっと不老化の課題も片付けて彼女と共に進めることだろう。
「それに、要人が出てくるなら露払いも必要でしょうしね。」
「…ごめん。」
笑いかけたのに謝られて、あれこれ言いたくなったが、それは飲み込んだ。
ありがとうとか、喜んで欲しいと言うのは、あたしじゃなくてネストの専売特許だろうから。
「と言う訳で、邪魔して欲しいんだけどね。」
スウィーティア先生と別れてすぐ、あたしはスノウレールの坊やの下に顔を出した。
仕事は重要な事が多いものの多忙にはなり辛いのが人型の天災の特徴。
想定通り予定の空いていたフロースの坊やを連れて近場の喫茶店で伏せる事は伏せて一通りの話をした。
「貴女も中々無茶苦茶言ってくれますね、魔法国名家の人間に、国王の妨害をしろとは。」
「まぁ一応って所さね。アンタの所に要求が飛んでるのかは知らんが、触れたらまずいもんに触れてる事位は想像ついてるだろう?」
国王が何の理由もなしに保護する訳は無く、間違いなくネストを使って先生の秘め事を引きずり出す目的があっただろう。
出てきた以上、何をするかわからんし、そもそも観測される事すら危うい。
その妨害に当たって欲しいと、魔法国名家のお坊ちゃまであるフロースに依頼。
いい顔できないのは当たり前だった。
「ま、自分のとこの代表様に逆らうなんざ気が進まんで当たり前だがね。」
「それが分かっていて来るという事は…」
「アンタの大事な妹、人型の天災指定受けてるよ。」
向こうも予想程度は出来ているんだろう。特に隠す意味も無いからフィアリスについてさっさと言ってしまう。
「人質…ですか?」
「馬鹿言うね、誰が大事な教え子を。それに、アレは今指折りに入る世界最強の一角だよ。ま、脅迫っちゃ脅迫だけどね。アンタ、妹にぶちのめされたいかい?」
脅迫と言えば脅迫だが、フィアリスをどうこうすると言う意味でなく、彼女と戦った挙句叩き潰されると言う脅迫。
だが、自身の『下』に見ていた妹がそんな対象だと想像した事もないのか、フロースは小さく首を横に振った。
「…いくらフィアの才が高いといえ、炎使いに私が負けるとでも?」
「あぁ負けるさ、掌の太陽を破る術はアンタに無いと思うがね。」
黒竜を溶かした禁術の名を聞いてさすがにフロースが硬直した。
当たり前だ、アレを本当に使えるようになるとは想定しきれていないのだろう。
それに、あたしの見立てじゃこの間の大会を見る限り魔法勝負限定ならアイツはもうネストとスウィーティア先生以外に負けそうにはない。勿論、あの正体不明の手袋の効果あってのものだろうが、それでも中級魔法が既に天変地異の域にある以上それだけでそうそうの相手に負ける事は無い。
「ネスト=グラスレインの邪魔をする者にあの娘は多分怒るよ。さて、アンタ達はあの娘率いる一団を相手できるかね?」
「一団?」
「多少名の知れたガイズ含めてあの娘ら相手にするのは大変ってことさ。…万一下手な事したら、魔法国相手にあの娘達を借り出さなきゃならなくなる。」
正直な所あの娘等には裏事に関わらせたくないので、若干ハッタリも無くはないが、最悪どうにかしてもらう必要もある。
世界の根幹について余計な事を教えたくは無
「…オルミクスが戦争の火種になるのですか?」
あまり言いたくなさそうに告げたフロースの言葉は、あたしの頭を沸騰させるのに十分だった。
「それを本気で言ってんならいい加減にしとけよ。」
皆殺しでも構わない所をただそんなの見たくないからと奔走して、それを逆手に取られて振り回されてきた挙句、そんな先生の望みが恋人と一緒に居たいなんて拙いものだったって言うのに…
何も知らない人間が好き勝手言うのは仕方なくも見えるが、同時に知ってしまったあたしにしてみれば、他全てが全滅して彼女達だけが幸せになっても釣り合いが取れるようにすら思えてしまう。
尤も、そんな事を思いもしない人達だからこその怒りでもあるのだけれど…っ!
思考の途中、感じた気配に入り口を振り返る。
丁度、店の鈴が鳴って、ソイツが堂々と姿を見せた。
あたしが転移でこっちに跳んだから感づかれたか、とは言えわざわざ来るかね?
「貴様が本気なのは分かったが、喫茶店で話す内容か?」
「お、王…」
今正に、『裏切れ』と交渉されていたような魔法国国王を前に、坊やはあたしと王を見比べてうろたえる。
別にやらなきゃならん事があって二箇所見てられないから顔を出しただけだ、別にあたしにコイツが止められない訳じゃない。
やるって言うなら真正面からでも…
「ネスト=グラスレインは、彼女の支えになれるのか?」
「あ?」
だが、警戒するあたしに対して、歩み寄ってきた国王が投げてきたのは問いかけだった。
抽象的過ぎるが、向こうはアルラート=エクスの存在すら知らない筈なのだから無理も無い。
「…そんな事が出来るとしたらアイツしかいないね。」
彼の事を伏せる限り、ネスト以外にスウィーティア先生の力になれる奴はそうそう居ない。
何れなら、フィアリスやレイナードも辿り着くかも分からんが、今は間違いなく奴の独壇場だ。
伏せた所も汲み取ろうとしているのか、しばらくあたしを見ていた国王だったが…
「では任せよう。貴様は科学国の老害へ対処しろ。」
こっちの妨害を人任せにしなきゃならん理由まで見透かされた上で、任せるとか言い出しやがった。
「は…おい、ちょっと待て、一体どういう了見だ?」
「大した事ではない、私が彼女の力になりたかっただけだ。」
今の今まで、世界の根源に関わる所を握っている先生を暴き、その情報を欲しがっているものだと思っていたが、まるで思っても無いセリフを聞かされた。
鵜呑みにするのは甘すぎる。だが、確かにコイツは先代と異なりオルミクスの方針にそこまでかたくなに否定的では無かった。まぁ融通が利いていたかと言われれば考える所だが…
それでも、その理由が額面通りだとするなら…
「…もしかして、アンタ昔は先生に惚れてたり?」
表情を変えないつもりだったんだろうが、眉が撥ねた。
…あらま、ビックリ。
いや、先生はあちこちとずっと交渉してて、その頃から先代について回っていた少年だったこの国王様なら可愛い綺麗で色々苦心しているスウィーティア先生を見てなんかあっても不思議じゃないけど。
人前演説用の外衣の下はスタイル丸出しのボディースーツでネストの奴も目が行ってたし。
「未婚の中年がはしゃぐなうっとおしい。」
「手袋叩きつけるぞこの若白髪…」
理由の想像をしてついにやけていた所に二重で地雷踏みにきやがったクソ失礼王を睨みつけるが、無視して踵を返す。
ちっ…格好つけてるつもりかマセがき二号め。いや、一応王族としてもう嫁を娶ってる奴にあたしがガキとか言うのも…
「…魔法国は、コレでも騎士を残す、誓いの重い国です。明言していった以上、国王がそれを破る事もないでしょう。もし他の邪魔者が出るようなら、私も対処しましょう。…フィアと戦いたくないのは勿論、彼の晴れ舞台位見届けさせてあげたいですしね。」
シスコンの言う通り、ああまでして裏をかくことはそうそうないだろう。
ましてそこまでの不義はフロースも許すまい。
さすがに無警戒には出来んが、あたしは後一つを止めるのに集中してよさそうだ。
そして…決戦当日。
大気圏を抜けて宇宙まで来たアタシの前に、奇妙なカプセルに入った老人の肉体があった。
アタシはカプセルに接近して頭を…大気圏外活動用防護服の頭をくっつける。
空気がなく振動しないから会話するには接触してないといけないとは言え、顔が近くて嫌になる。
「やぁ、息災かねクソジジイ。」
「貴様…ミルアーク、何故ここに…」
科学国国王…老体ながらに実権を握り続けている妖怪ジジイ。
「何故って、アンタの本体を探し当てたからに決まってるじゃないか。ネストを突いて引きずり出したこの一戦、覗かない訳が無いと目を見張らせたが地上の何処にもいないって…地上にいなけりゃいいさね。成程、平気であちこち挑発できた訳だ。」
アタシの解説にカプセルの中で表情を歪めるジジイ。
生体の劣化を防ぐ為にカプセルに身を押し込んだのはともかく、それで活動そのものを続けるわけにはいかない。
地上にいるのはクローン体で、遠隔操作のような形で使っているのだろう。
高速戦闘でも行わなければラグの有無なんざ関係ない。
「こんなカプセルに押し込めてまで…そんなに長生きしたいかね。」
「死にたい奴などおらんわ、それは壊れておる生命体だけじゃ。」
さまざまな策謀、暗躍の割にはストレートな理由だった。
シンプルイスベスト…ある意味凝った理由より納得が行くところかもしれない。
「ふん、それでこんな所まで妨害しに来たのか、わざわざご苦労な事じゃな。」
「ま、それだけならよかったんだがね…」
鼻を鳴らすジジイを前に肩を竦める。
呑気な会話はここまでだ。
「先生を拷問にかけ、ナードを引きずり出す為に姉に手を出すよう仕向けたのはあんただね。」
殺意を持って睨むが、さして反応は無かった。
「やれやれ、何のことじゃ?」
「物的証拠が無いってか?アンタが宇宙に本体置いて偽物であちこち出向く技術持ってるのに、こっちが脳の一つも暴けないとでも思ってるのか?」
「…直接頭から吸い出したか、鬼畜じゃの。」
「畜じゃないさ、鬼にも悪魔にもなってやるけどね。」
言い切って、アタシは腰のプラズマカノンをカプセルに向けた。
さすがに驚いたようで、中でジジイは目を見開く。
「貴様正気か?」
「あぁ、アンタを殺しに来たんだよ。」
死にたくないと明言した所だはっきり殺すと言われて動揺なくはいられまい。
…と、思っていたら、突然笑い出した。
「くっくっく…オルミクスの人型の天災が国王を手にかけたとなれば大問題じゃぞ?お主の大事な大事な校長先生にも大迷惑、出来るわけが無い。」
普段なら的を得ている指摘だ、成程、殺されかけている状況でも冷静らしい。
だが、生憎こっちも恨み辛みで来た訳じゃない。それ位考えてある。
「そんな事は無いさ、アンタのお陰でね。」
「何?」
「自分大事が過ぎたね。アンタがここにいるの一体何処の誰が知ってるって言うんだい?」
カプセルの中でジジイの表情が凍りついた。
…想定自体していなかったらしい。そりゃそうだ、死人が出て隠蔽なんて、要人じゃなくたって簡単な事じゃない、まさか自分が殺された事に誰も気づかないなんて事態想定している訳が無い。
「地上のお人形はぶっ倒れて多分病死扱い。独立稼動した所でアンタ、『ミルアークが儂を殺した』何て地上で人形に喋らせる気かね?え?」
「…ま、待て…落ち着け…」
「落ち着いてる、冷静に出した結論さ。先生と肩を並べる英雄は既に足りている。万一アタシが老害になるようなら…地獄には後から追いかけてやるさ。」
残念ながら、アタシはこのジジイほど我が身が可愛くない。
震えるジジイを前に、バチバチと音を立てるプラズマカノンの引き金に指をかけ…
「プラズマカノン…フルパワー…吹っ飛べクソジジイ。」
「嫌だ!死にたくな」
悲鳴を聞くのもそこそこにカプセルから離れ、力をこめた。
カプセルが派手に砕けたが、割とあっけなかった。が、これでもあたしも人型の天災。
出力だけは並じゃない、溶解すらしているカプセルから何があったか判別するのは科学国が見つけたとしても難しいだろう。
「悪いね、あの人達を道具や餌、盤上の駒扱いするような奴の願いは叶えてやれないのさ。バチが当たるならちゃんとあたしが受けてやるよ。」
別にアタシが捕まりたくなくてばれたら困る訳じゃない。
オルミクスさえ上手く行くなら、あたし自体は今裁かれても構わないんだ。
科学国だってコイツがずっとのさばってこそいたが、脳がある人間が他にいないわけでもない、こんな事はちょっとした騒動と言う程度だろう。
「とは言え…アンタが上手くやる前提なんだがねぇ…今からこの手で学校教育なんて胸張って出来るほど図太くもないし、頼むよネスト=グラスレイン。」
青い星を他人事のように見下ろしながら…実際、他人事に位置づけてしまったアタシは、マセた希望の姿を思い浮かべながら呟いた。
表向き平和と言ってもこういう人も要るんだろうなぁと…




