神にも等しき才能。俺にこんな才能があったのか!
才能。それは一人一人に備わっているものである。
容姿だったり運動神経だったり学力だったり。
世の中のアホなやつらのなかには、「才能なんて関係ない! 努力が全てだ! 雑草魂万歳!」と宣うアホがいる。
だがしかし、それは間違いなく綺麗事だ。
才能は確実に人生を大きく左右する。
自分の才能を見極めることができるかで大きく変わる。
そんな俺の才能はというと発明だ。
「やった! できたぞ!」
俺の名前は平賀工。現在19歳。
高校卒業後、大学には進学せず父さんが経営していたリサイクルショップで働いている。
父親は一人出稼ぎに出て行った。
大学なんて行っても大して面白くもない。こうして適度に店番しながら発明をするのが楽しい。
あ! 忘れてた。さっき作ったのがこれ、才能引出し装置。
たんなる布の帽子のように見えるが正真正銘これは立派な機械で、被ると隠れていた才能が呼び覚まされる。
早速被ってみた。しかし、何も起こらない。
あれれー? おかしいな? 失敗したかな?
「すみませーん! お店の方いますか?」
カウンターの方からお客さんの声がした。
「はーい! 今行きます」
「これの修理をお願いしたいんですけど」
若い女性がテレビの修理を依頼してきた。女性は俺と同じくらいで金髪だった。
超絶美人という訳ではないが人気のありそうな容姿をしている。立ち振る舞いなどが実に色っぽい。
「はい、かしこまりました。よかったらこちらに座って待っていてください。すぐに終わりますから」
「そんなにすぐに終わるんですか?」
女性は驚いたような顔をした。
「もちろんですとも。今、お茶を用意するので待っていてください、お嬢さん」
なぜかいつもより流暢に言葉が出てくる。これは、接客の才能か?
お茶を淹れ、女性に出し俺は悠々とカウンターで作業をした。
「お嬢さん、お名前は?」
「宮古藍といいます」
「藍さん……あぁ! なんて素敵な名前だろう!」
我ながら何を言ってやがるんだと思った。
「そんな……素敵な名前だなんて」
藍は顔を赤らめた。は? 今のでグッときたのか?
「しかもとても麗しい! まるで地上の舞い降りた天使のようだ!」
「あなたもとてもカッコ良くて素敵な男性よ……あなたの名前も聞いていいかしら?」
「私はいつもニコニコあなたの隣に這い寄るリサイクルショップの店長、平賀工と言います。以後、お見知り置きを」
俺は藍の近くに行き、彼女の手の甲にキスをした。俺は一体全体、何をしているんだろうか。自分でやっておいてかなり恥ずかしいのだが。
「もう……積極的なのね」
積極的というかもはや行動力の化身だ、これは。
藍と雑談をしながら修理を行い、やがてテレビを直し終えた。
「藍さん、直りました」
「ありがとう! あなた、本当優秀な修理屋なのね!」
「いやいや、大したことはありませんよ。それよりもこれを見てください」
俺はテレビの配線をコンセントに繋いだ。
流れたのはディズニー映画だった。
「まあ! 美女と野獣じゃない! 私、大好きなの!」
「ちょっとテレビを改良して常時、ディズニー映画が放送できるようにしておきました。いかがですか?」
「とても嬉しいわ! ありがとう!」
藍は喜んでくれたようだ。え? 法律的に大丈夫なのかって?
あるが〜ままで〜姿〜見せようよ〜あるが〜オルガ〜ラララ〜止まるんじゃねぇぞ〜
な〜に〜も〜(以下略)
「藍さん、良かったらいつか僕とデートしていただけないでしょうか」
当然、俺はデートの誘いをした。勝手に口が動き、ここまで藍と進展させた。
「もちろん! 連絡先を交換しておきましょう!」
俺は藍とLINEを交換した。
とても満足気にテレビを持って藍は去っていった。
なるほど、俺にはナンパの才能があったんだな。まぁ、俺って結構身長高いし、イケメンだしな。自分でいうのもなんだけど。
しかし、別にモテたいという願望は今は特にない。個人的には何かこう、芸術的な才能を発揮したい気分なのである。
例えば、某小説投稿サイトで異世界者の超大作を書き、凄まじい人気により、書籍化そしてアニメ化!
そんなことをしてみたい。
もしくはとんでもなく素晴らしいイラストがかけるようになり、超天才イラストレーターとして名を馳せたらいいなと思った。
俺はパソコンを取り出し、小説を書いてみることにした。
題名は『異世界に行ってみたら性別が変わっていた』っと。
まず、主人公がエレベーターに乗って異世界に行く方法を試すっと。
次に異世界についたら性別が変わっていて、なんか商人と出会って、盗賊にあってーー
よし、辞めるか。9,000文字ほど書いたら飽きたので辞めることにした。
書いててあんまり楽しくない。第一、ここから話を広げられる気がしない。
俺には小説を書く才能はないな。
次にイラストを書いてみることにした。
真っ白な紙に何かを書いてみようと思った。適当にアニメキャラを見つけ、それを元にオリジナルのキャラクターを書いてみようと思った。
10分後、歪な形のキャラクターが生まれた。見ていて吐き気がしてきそうだ。
そういえば、中学時代、おんまり美術得意じゃなかったなぁ。
やれやれ、俺はイラストを書く才能もないのか。
しょうがない、いっそこれをつけたまま発明品でも作るか。
俺は倉庫から部品を取り出し、いつも通り発明を始めた。
やはりーー発明は楽しい。
ここの回路はこう接続し、電気信号を流すためにここを半田付けを行う。そして、適切に動作をするためにプログラミングを行う。体の負担を減らすためにリラックスするための脳内信号を流せるようにしてーー
夢中になって作業していると、自分の頭の異変に気がついた。
才能引き出し装置から黒い煙がでていた。
「わわ!」
俺はすぐに頭に被っていたその装置を脱いだ。バチバチと装置は燃えている。
危ない。あのまま被っていたら俺は禿げ頭になっていただろう。
俺は燃えている装置を見て理解した。
俺にはやはり発明の才能がある。そして、才能引き出し装置は俺の才能を引き出しきれずショートしてしまったんだろう。
他の才能にかまけている暇なんてない。
俺はバケツに水を汲み、消火した。
装置を片付けた後、俺は再び『身体能力倍増装置』の開発に取り掛かった。