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盲目の少女  作者: 柳瀬
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改めて言うこと

「こんばんは。」

声を掛けると少女はゆっくりと振り返った。

「こんばんは。」

うっすら笑いながらそう言った。その笑顔が作ったものではないと感じる。何故かは分からないが、ただなんとなく。

「僕がわかりますか?」

「はい。声で分かりますよ。」

耳が良いのか、良くなったのか。聞きたいが聞かない方が良いと思う。

「いつもここに?」

「天気が良ければ。」

空を見るが曇りで月がぼんやり見えるだけだ。天気が良いとは雨じゃなければということなのだろ。

隣に腰を下ろす。ぎゅっと砂が鳴る。風が少し吹いて、少女の匂いがする。何だか少し申し訳なく思う。

「今日は風が少しありますね。」

自分の考えが漏れ出てしまったかと少し焦る。冷静に考えてありえないと結論付ける。

「少しね。困るほどじゃない。」

「昨日の夜、何してました?」

「一生に一度のお願いについて調べてた。」

「折角の修学旅行なのに。有意義でしたか?」

「思いの外、楽しかったよ。」

嘘は言ってない。あの時の気持ちが楽しいかどうかは確かじゃないが、今するべき事だと思った。

「一生に一度のお願い、使いました?」

「分からないけど、おそらく適当な事に使ってると思う。」

「大多数ですね。」

「そうなる。」

ほとんどの人は、一生に一度のお願いをしょうもない事に使ってしまう。きっと俺も小さい頃に使ってしまっただろう。

「私、今の生活が満足だって言ったら嘘になります。でも、後悔はしてないです。」

「俺も昨日一生に一度のお願いを調べてた分かった。一生に一度のお願いは、本当に叶ってほしいという願望が必要になる。」

「そうです。だから、あの時私は本当に目が見えなくなっても良いと思ったんです。私は、あの時の自分を愚かだとは思いません。」

確かにそう思う。だが、それだけで良いのかとも思う。まだ幼かった頃の少女の覚悟は本物で、それが望みだった。それは揺るがない。

「俺もそう思う。ただ、凄い陳腐で良く聞いた話だと思うけど、人の考えは色々変わるし、数年前の自分とはまるで違う。」

「私はそれが分かりません。」

「心を曲げたくないとか、意地じゃ無く、純粋に成長なんだ。」

少女は言葉を出すのをやめた。しばらく沈黙し、何かを深く考えているようだ。

波の音を聞き、行き交う人が砂を踏む音に何度か苛立つ。スマートフォンを取り出し時刻を見ると思っていたよりも時間が経っていた。

「俺が何を言ったって結局他人事だと思って言っている事に変わりない。俺はそこまで献身的じゃないし、人の気持ちを考える事が苦手なんだ。」

そう言うが、少女は何も言わない。

「だから俺が言う事は気持ちのこもってない他人が言う意見だと思って聞いてくれればいい。」

「…はい。」

何か教訓めいた説教な事を言おうかと思ったが、少女は散々言われてきたはずだ。

「そういう、ある意味頑固に見える一途さ、凄く良いと思う。」

そう言って立ち上がる。

何か言うのも聞かず、どんな顔をしたのかも見ないで踵を返す。

叶うはずも無いのに、少女に聞こえるのも構わず声を出す。

「どうか、この子のお願いが叶わなかった事にして下さい。」

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