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盲目の少女  作者: 柳瀬
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調べ物と悩み事

ホテルの部屋に着いて、友人達と何だかんだと話し込み、皆が寝静まっても、何だか眠れないでいた。

スマートフォンを充電しながら、ディスプレイの明かりを1番暗くし、一生のお願いについて調べていた。


人は、一生に一度だけ願いを叶えることが出来る。その理由は未だ明らかになっていない。

正確には明らかになっていたかもしれない。

その一度だけ叶えることが出来る願いを「一生に一度のお願い」という。

どんな願いも叶える事ができるが、条件や例外や制限もある。何故例外や制限があるか分かるかというと、研究としてまだ一生に一度のお願いを使っていない人からその権利を金で買い、検証しているからだ。

まずは、一生に一度のお願いの概要について。

条件の一つ目、生まれてから死ぬまでの間に使う事。これは検証で明らかになったというより、ある種の常識に近い。一生に一度のお願いは、一生のうちに使えという事だ。

二つ目、本当に叶えたいという意思が必要になる事。強く、本当に叶えたいという意思がないと叶う事はない。例えば、人に「あるお願い」を使うようにに脅されても、「あるお願い」を本当に叶えたいという意思がなければ叶う事がない。ただし、命に関わる場合などは違う。頭に銃口を突きつけられ、一生に一度のお願いを使うように脅されたら、これで命だけは助かるのならという意思があるとその願いは叶う。

この理論を用いて検証も行われている。検証で人に一生に一度のお願いを使うように指示されても、本人に叶える意思がなければ叶うはずがない。ただ、本人が大金が手に入るのならと思っていれば叶ってしまう。

つまり、自分の本心でない一生に一度のお願いでも、それに見合う対価があると叶ってしまう。

三つ。声に出す事。

いくら心の中で強く願ってもそれだけでは足りない。強く願うと同時に、その願いを口に出す必要がある。

つまり、一生に一度のお願いの条件は「強く願い、声に出す事」だ。

言い換えると、その時に強く願い声に出せば願いが叶う。その後の人生で最も叶えたいと思う願いがあっても、その時に叶えたいと思う願いがあれば、その願いが叶う。

そのため、ほとんどの人間は小さい頃の駄々に一生に一度のお願いを使ってしまう。

早くパパに会いたいだの、あのおもちゃが欲しいだの、お腹いっぱいケーキが食べたいだの。

だから未だに一生に一度のお願いを使っていない人は珍しいし、何にお願いを使ったかをはっきりと理解している人も珍しい。


次に制限や効果について。

一つ目。人が叶えた一生に一度のお願いを覆すには、その人の一生に一度のお願いを無かった事にするようにお願いするしかない。

例えば、Aさんがが猫が大嫌いで猫を絶滅するようにお願いしたとする。その場合に、Bさんが猫を復活するようにお願いしても、Aさんが先に絶滅したようにお願いしているため叶う事はない。もしBさんが猫が復活するようにとお願いしたら叶う事なく、Bさんの一生に一度のお願いは使ってしまった事になる。

もし猫を復活させたいのなら、BさんはAさんの一生に一度のお願いを無かったことに、キャンセルするようにとお願いするしかない。

この制限があるため、一生に一度のお願いが叶う理由は明らかになっていたかもしれないという話に繋がる。

もしかしたら過去にCさんが「私だけ一生に一度のお願いの叶う理由を教えてください。」と願いし、Cさんが誰にもその知った内容を告げず死んでしまい、誰もCさんがそういうお願いをした事を知らなければお願いをキャンセルできずに、誰も理由を知る事ができない。

過去に検証で理由を調べようとお願いしたが、分からずにお願いも使った事になっている。

お願い使ったかどうかも、お願いで知る事ができる。人が一生に一度のお願いを使ったどうか分かるようにしてくださいとお願いすることもできる。

二つ目。一生に一度のお願いは自分だけではなく、他者にも影響する。

例えば、Dさんがトマトが大嫌いでこの世からトマトが無くなれとお願いすると、世界からトマトが消える。その事実について、誰も疑う事なく受け入れる。ある日突然トマトが世界から消えても、そういうもんだと納得し、誰も一生に一度のお願いだと思う事はない。

つまり、自分が生きてる間に消えてしまった食べ物や生物がいる可能性もある。

本人が全滅した事を知り得るかどうか。原則は知る。お願いをした本人だけがその事実を認識する。お願いした本人が本当にお願いが叶ったかどうか知る事ができ、本人以外は一生に一度のお願いによる変化について受けれ疑問を持たない。

本人すらお願いに疑問を持たないようにする事はできない。世界からトマトが消えて、その消滅に違和感を感じませんようにというお願いは二つのお願いをしたとみなされ、お願いは叶う事なく使った事になる。

さっきの例でAさんが猫が絶滅するようにとお願いし、Bさんが復活するようにお願いしていたが、そんな事はまず起きない。

何故なら、もしAさんが猫が絶滅するようにとお願いしたのなら、その絶滅に他の人は違和感を持つ事はない。ある日突然猫が絶滅しましたとニュースが出ても「そうか。」としか思わない。誰も一生に一度のお願いが原因だとは思わない。

もし仮に、猫が存在しないようにとお願いしたのなら、人々の記憶から猫が消えていき思い出す事はない。

この、他人の一生に一度のお願いの影響で記憶や実体験が変えられてしまうのを防ぐには、一生に一度のお願いで影響を受けないように、または影響を受けたものを思い出すようにお願いする必要がある。

この際に、一生に一度のお願いで他人のお願いに干渉しているが、そのお願いを否定するものではないため叶える事ができる。


調べた事をまとめて、少女の事について考える。少女はその当時、一生に一度のお願いを使っても良いという思いがあり、望んで目が見えなくなったのだ。

今、少女が目が見えるようになりたいと言う事は、当時の自分の覚悟だとか決意だとか、上手く言えないそういったものを全て否定する事になる。

他人が可哀想だとか、見えるようになると良いだとか言うことも、少女のお願いを馬鹿にする事になる。

ぐるぐるとそんな事を考えていたら、いつの間にか眠りに落ちてしまった。


次の日、夜にホラー映画観賞第二弾が始まると同時に散歩に出掛けた。

何か話しがある訳ではないが、少女と話をしたいと思った。せめて名前を聞いて名乗って、それだけで終わっても良い。そんな気持ちで携帯を持ち、外で出る。

空は曇りで星は見えない。月がぼんやりと見える。

ふと、少女が自分を声だけで昨日会話した人だと分かってもらえるか不安になる。きっと分からないだろう。こちらからそうだと声をかける必要がある。

そもそも、少女は俺と話をする事が嫌だと思っていないだろうか。昨日数分だけ話をした男とまた話しがしたいと思うだろうか。きっと思わないだろう。

そうは思いつつも、昨日少女がいた所へと歩みを進める。わざわざ砂浜を歩く必要はないとアスファルトの歩道を進む。

薄っすらと砂があり、ざりざりと音がする。そう言えば、従兄弟にお土産を買っていなかったなと思い出す。明日忘れないようにしなければ。

遠くに目をやる。昨日と同じ場所に少女の後ろ姿があった。

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