File・8 男は単純な生き物です…
ボチボチ書いてます
なかなか話が進まない……
長い目で見てください
(^_^;
では、お楽しみください
「さてと、それじゃあ私がせ・ん・ぱ・いとしてこの部署のやり方を教えてあげましょう」
胸を仰け反らせながらリルは先輩という部分を何故か殊の外、強調しながら俺の前で仁王立ちしている。
俺は生徒よろしく椅子に座り、彼女と向かい合いながら強調された胸に釘付けである。
…うん、やっぱりでかいな。
「じゃあ、説明しましょう」
リルがにんまりと笑みを浮かべた。
嫌な予感がするな……。
そんな嫌な予感はよく当たる。
目の前に満面の笑みを讃えていたリルが手に持っていた本革の鞭を振りかぶったのだ。
「…うわっ!?」
危機を察知した俺は顔を庇うように両手で覆いながら視線を逸らし目を閉じる。
ビシッ!
乾いた鞭の音が空を切る。
「…ぐっ!?」
思わず呻ってしまう。
身体のどこかに激しい痛みが来るはずだ。
そう、激しい痛みが身体に襲って……来ない。
「えっ?」
何時まで経っても来ない痛みに俺は恐る恐る固く閉じた瞳を開き状況を確認する。
俺の動作にキョトンとしているリルの姿があり、今の自分の姿が妙に滑稽に感じ「…こほんっ」小さな咳払いで何となく誤魔化した。
「いま、なにやってたの?新人君?」
不思議そうに見つめてくる瞳に無性に恥ずかしくなってきた俺はわざと真面目な表情を浮かべる。
「今から先輩に業務内容を教わるために気合いを入れていただけですよ」
さも、それが当たり前のように説明する。
もちろん、魔法の言葉『先輩』を強調して。
「あっ、そうなんだね!私てっきり鞭で叩かれるのを防いでいるのかと思ったよぉ」
おぉ~!鋭い…図星ですよ。
ってか、違ったのか……赤っ恥だな、おい。
けれど俺にも見栄がある。
認めてなるものか。
妙な見栄が湧き上がる…負けられない戦いがここにある…認めたら負けだ。
「そんなわけないじゃないですかぁ~。やだなぁ、リル先輩はお茶目なんですから。あはははっ」
乾いた笑いでとりあえず誤魔化す。
もちろん、先輩は強調ね。
「そうだよね、あはははっ」
釣られてリルも笑いだす。
二人して何故か笑い合う光景。
なんだ…この茶番。
妙に冷めていく。
それより、さっきリル先輩は何で鞭を振り上げたんだ?意味が分からないんだが…なんだ、あれ?
周囲を見渡し違和感に気付いて瞳を瞬かせる。
だってね、空間に裂け目があるんだよ?
分かる?この違和感…。
まぁ、今に始まったことじゃないけどさ。
でもさ、空想の世界の話が現実に起きれば誰だって冷静には慣れないでしょうよ?
俺は目の前の歪んだ空間を指差す。
「これは?」
未だに笑っているリル先輩に声をかける。
「あはははっ、うん?あっ、これ?」
裂け目を指差すリル先輩に俺はコクコクと頷く。
「時空の裂け目?」
何故、疑問系なんだ?
もしかしてだが、本人も分かってないんじゃ…。
「えっと、先輩が創ったんですよね」
先輩の言葉にニンマリしながら頷く。
「そうだねぇ。こう、鞭でバシッとしたら時空の裂け目を創ることが出来るんだよぉ」
右手に持った鞭を振りかぶり空を斬ると、刃物で切り裂いたかのように時空の裂け目が出現する。
さっきのはこれを創るためだったんだな…。
しみじみと時空の裂け目?と呼ばれるモノを見つめながら自分の失態を思い出し顔が赤くなる。
だってねぇ、目の前で鞭を構えられたら誰だって叩かれると思うのが自然だろ?だろ!たのむ、そうですと言ってくれ!それで俺は助かるんだ……。
あんな格好してるだ。
……だから、俺は正しい。
そんな風に自分に言い聞かせないと毎晩、寝る前に思い出して悶絶してしまう……。
まぁ、それは良いとしてだからなに?な状況なわけで俺はとりあえずリル先輩を見つめる。
説明がきっと在るはずだと信じて…。
リル先輩と俺の瞳が見つめ合う。
暫しの無言が続く。
無言、無言、無言………おぃ、説明は?業務内容の説明は?まさか、これだけじゃないよね?
「っで、これが何を意味するんですか?」
思わず聞いてしまった。
「えっ?なにが?」
不思議そうにリル先輩は俺を見つめる。
「い、いや…業務内容の……」
これはヤバいやつだ。
本能が俺に告げている。
きっと、これはただの自慢だ。
全く意味のない時間だ。
社畜にとって無意味な時間ほど嫌悪するモノはない。だって、無意味だぞ?一文にもならない時間を無駄に過ごすことになるんだぞ?
俺には耐えられない。
けど、報・連・相は仕事の基本だ。
とりあえず確認をしよう。
「この時空の裂け目は業務内容に関係しているんですよね?だから、わざわざ見せてくれたんですよね?」
そう、あくまで確認だ。
語尾を強調してるのも誤認を防ぐためだ。
間違ってもイラッとしているわけじゃない。
「えっとぉ~………」
俺から逸らした目線が思い切り泳いでる。
気のせいか、変な汗も流してやがる。
ただ、あくまで俺は笑顔を絶やさない。
頬が引き攣っているけれども、それは気のせいだ。決して怒ってるわけじゃない。
「じゃあ、そろそろ説明するわね」
何かを誤魔化すかのように笑顔を浮かべ、リル先輩は徐に黒い小さな箱を取り出した。
俺は箱より取り出した場所をガン見した。
いま、胸の谷間から取り出したよね?
ほら、取り出した余韻で揺れてるよ。
……男は単純なイキモノだと思う。
揺れる胸を見て引き攣っていた頬が満面の笑みになり俺の心が満たされる。
うん、良い職場かもしれない。
社畜にありがちな勘違い…苛酷な労働条件で働く俺らは小さな幸せを糧にする。
もちろん、俺もそうだ。
勢いよく椅子から立ち上がる。
「ご指導のほど宜しくお願いします!」
俺は今日一の声で元気に頭を下げたんだ。
ははっ……俺って単純。
読んでいただき有り難う御座います
(o_ _)o
面白いと思えればブクマ評価いただけると作者が小躍りしながらニヤニヤします
(≧∇≦)b
では、失礼いたします
(o_ _)o