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時の女神と社畜な俺~女神に騙され扱き使われる…~  作者: 村山真悟
第一章 社畜は上司に恵まれない
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File・7 先輩って言葉は最強でした…


「…何時までそうしてるつもりだ?」


 震えながら書類の束に埋まっている同僚の形の良いお尻を見つめながら俺は呟いた。


 うん、安産型だね。


 そりゃあ、男だもの見るだろ……ねぇ。


「あ、あ、あ、あんた誰なのさ?」


 書類の束の隙間からこちらを見つめる瞳、その視点は動揺のあまり定まっていない。


「誰と言われても……今日からこの部署で働くことになりました新人の板崎渉といいます…っで?そちらは?」


 俺の言葉に彼女はビクッと反応する。


「…この部署で働くの?」


 こっちを訝しげに見つめる瞳に俺は頷く。


「新人君?」


 またか…。


 そんなに新人が入ってくるのが珍しいのか?


 ガバッ!


 俺の頷きに書類の束から勢い良く起き上がる。


「ほんとに、ほんとに、ほんとに?」


 今度は目と鼻の先まで顔を近づけてきてマジマジと俺の顔を見つめてくる。


 近いよ……ってか、美人だな…。


 長い黒髪に目鼻立ちははっきりとしており、大きな瞳と長い眉毛が更に彼女を引き立てている。


「本当です」


 少し仰け反りながら俺はコクコクと頷く。


 何度か瞬きをして俺の言葉の意味を飲み込むと今度はバッと離れ、両手を胸元で合わせながら涙目で天井を見つめる彼女であった。


「ようやく、ようやく、ようやく………寝れる」


 お前もか!


 この部署は一体、何なんだ?どいつもこいつも寝ることばかりに執着しやがって……ってか、おぃ?


 彼女は立ったまま涙を流しながら眠っていた。


 その姿だけなら祈りを捧げる聖女の様にも見えるが服装がアレである。


 とりあえず…起こそう。


「すいませーん、ちょっといいですか?」


 俺は軽く肩を叩く。


「はっ!?」


 身体をビクッと震わせ瞳を見開いた。


 その動作に俺は確信する。


 本当に寝てやがったな。


「あなたはダレ?」


 不思議そうに俺を見つめる瞳に唖然とする。


 多分に寝ぼけているのが分かる。


 ただね……。


 自己紹介をもう一回やるのか?


 俺が呆れていると彼女はじぃーっと俺を見つめ、思い出したかのようにポンッと手を叩く。


「集金屋さん?」


「違うわ!」


 思わず突っ込みを入れてしまった。


 その突っ込みに腕を組んで首を傾げる姿に俺はかなり不安を覚えた。


「…じゃあ、出前の「違うわ!」」


 最後まで言う前に否定する。


 言わせねえよ、絶対に言わせねぇからな。


「…じゃあ、ダレ?」


 本当に分からないのか彼女は首を傾げて、誰か分からず俺を不安そうに見つめている。


 しかも、眉間に皺を寄せながらだ。


 疑心暗鬼なのは一目で分かる。


 正直、唖然とした。


 マジか……ほんの数秒前だぞ。


「…はぁ」


 俺は大きな溜息をついて彼女を見つめる。


「この部署で働くことになりました、新人の板崎渉といいます……っで?そちらは?」


 二回目だ、間違いなく二回目だ。


 俺は理不尽さを飲み込みながら、それをおくびにも出さず自慢の営業スマイルを顔に貼り付ける。


「…この部署で働くの?」


 こっちを訝しげに見つめる瞳に俺は頷く。


 うん、二回目だ。


 何だか次の言葉も予想が付く。


「新人君?」


 ほぉ~ら、きましたよ。


 頭の中がおかしなテンションになっている。


「ほんとに、ほんとに、ほんとに?」


 俺は笑顔で頷く。


「本当です」


 その言葉に彼女は瞳を見開き、涙を溜めて両手を胸元で合わせながら……うんっ?このパターン…ヤバいだろ?


「ようやく、ようやく、ようやく……寝「寝るなぁ~!」……えっ?」


 俺の叫び声にキョトンとしている。


 いやいや、何を不思議そうにこっちを見るんだ。


「寝られない?」


 悲壮な表情に俺は無慈悲に頷く。


「…そんなぁ~」


 項垂れながら力なく床に座り込んだ。


 涙が止めどなく流れ床を濡らしている。


 いや、何だか絶望してるけど貴女、さっき寝てましたからね?しかも立ったままですよ?


 俺の心の声が伝わったのか、彼女は哀しげな表情でこっちを見つめてきやがる。


「何で駄目なの?」


 ウルウル瞳で見つめてきたところで駄目なものは駄目だろ…俺は三度も繰り返したくないぞ。


「そうですね…先ずはなんて呼べばいいのか分からないので名前を教えてもらえませんか?……先輩」


 先輩の言葉に彼女はハッとする。


「先輩?私が?先輩?……うふふふっ」


 どうやら、先輩の響きが功を奏したようだ。


 泣いていた瞳が爛々と輝き出す。


 よしっ、先に進める。


 俺は心の中でガッツポーズをした。


「そうですよ、せ・ん・ぱ・い」


 敢えて先輩を強調するとニヤニヤ笑いを浮かべながらスクッと立ち上がり俺を見下ろした。


 うん、チョロいな。


 単純な性格に心の中でほくそ笑む。


「そっかぁ、先輩かぁ~。うん、しっかりしなきゃね。えっとねぇ、新人君!」


 割と単純な性格なのか、ふんぞり返りながら俺を見下ろし精一杯、威厳に満ちた表情を浮かべる。


「私はリル・カルエダ、あなたの先輩です!」


 豊かな胸を揺らしながら名前を名乗る。


 うん、揺れたね…。


 俺の目はその豊かな胸に釘付けになる。


 正直、名前なんてどうでもいい。


 だって、男だもの。


 そんな感情は心の隅に押し込みながら俺は得意の営業スマイルを浮かべる。


「よろしくお願いします。リル先輩」


 しっかりと頭を下げる。


「せ、先輩…まっかせぇなさい!」


 ドンッと豊かな胸を叩き、満面の笑顔を俺に見せてくれる。先輩って言葉…スゲぇな!?


 ようやく本題に入れる状況が出来たことにホッとしながらも俺はこの部署に不安を感じた。


 リル先輩は先輩と呼ばれることで我を忘れているが、俺と会ったとき服装に恥ずかしさに書類の束に隠れたことをすっかり忘れている。


 教えるべきか…いや、先ずは煽ててこの職場の業務内容というか何をするかを知るべきだな。


 なにせ、仕事内容は書類の束に触れることで理解する事はできたが実際に何をすれば良いのか俺にはまるで見当が付かない。


 上手いこと煽てて、このチョロ先輩からやり方を教わるのが得策だ。


 なんせ、今なら何でも教えてもらえる自信がある。魔法の言葉『せんぱい』があるからだ。


 そうして俺はチョロ先輩、もといリル・カルエダから業務内容を聞き出すことにしたのだった。


読んでいただき有り難う御座います

(o_ _)o

ブクマ、評価していただけると嬉しいです

(*´▽`*)

では、失礼いたします

(o_ _)o

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