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僕と姉の神話遭遇記  作者: 暁0101
第一章 少女と黒い巨人
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第二話 旅立ち広がる世界

数時間前、

昼過ぎ頃に知らせが入った。


「何じゃと!? それはどういうことじゃ」


村長の荒げた声が響く。


「3日前に、東の森からギム・ゼントの群れが、移動を始めたのが確認されたんだ。恐らくこの森にも入り込んでいるはずだ」


知らせに来た男が息を切らせながら答える。

近くの町から休みもせずに来たのだろう。

近くとはいっても、3日はかかる。

事態を確認してすぐに動いても3日だ。

村人に動揺が広がる。繁殖期以外でギム・ゼントが縄張りを変えるのは初めてだ。


「討伐隊は」


「セトが森に入ったままだぞ!」


「アズラを呼んで来い」


村人たちの声が騒がしくなる、村を守らなければならない。

なのに、対処に繋がらない。


「落ち着けい! 男たちは森に入る準備を、女たちは家の中に」


村長の的確な指示が飛ぶ。

長年の経験かトラブルに対して冷静に対応する。

男たちが武器を取り、森に入る準備を始めた。

ギム・ゼントは凶悪な魔獣だ。

セトを両親と同じ目に遭わせる訳にはいかない。

急がなければと、村人たちは焦る。


ゴォ!!と、突如、村の中心から怒りにも焦りにも似た圧迫感が膨れ上がった。

事態を知ったアズラが、全身から内臓を鷲づかみにするような圧を放ちつつ歩いてくる。

両手を中心に光る白いスジのようなものが浮かび出ていた。

目に見えるそれは、アズラの体に纏われていく。

誰かが、声を掛けようとしたが。

アズラはそれを無視し、目にも止まらぬ速さで森へと走り出す。


そして、現在。


森の中で凄まじい衝撃が広がる。

目の前に広がっていた絶望を粉々に打ち砕く。

セトを食らおうとしていた二体のギム・ゼントが下に落下し、

顔を砕かれた痛みで長い体を暴れさせていた。

アズラがギム・ゼントを弾き飛ばした勢いそのままに、再度攻撃を仕掛ける。

白いスカートの乱れなど気にせず、大胆に駆ける。

ギム・ゼントは、長い胴体で向かってくるアズラを押しつぶそうとムチのように叩きつけた。

木々を薙ぎ倒し、圧倒的な速度で迫る。

だが、アズラは、当たる寸前で体を回転させ、胴体にとりつき拳によるカウンターを叩き込んだ。

攻撃を仕掛けたはずのギム・ゼントが悲鳴を上げる。

さらに、追撃を叩き込む、反撃の暇を与えない。


セトは目の前の光景に釘付けになっていた。

あれだけ逃げ回ることしか出来なかった相手をこうも簡単に手玉に取りつつある。

姉が強いのは知っていた、村での魔獣退治はアズラの役目だったからだ。

しかし、実際に目の前で戦っている姿を見ると、その強さが、その美しさが伝わってきた。

アズラの戦い方は美しい、敵の攻撃をことごとく避け、強烈な一撃を的確に決めていく。

体に纏う光る白い膜のようなものが、アズラが動くたびに優雅に揺れ、

白を基調とした服と合わさり幻想的に踊っているようだ。


アズラは跳躍し、一旦距離をとる、

顔を砕かれたギム・ゼント6m級が一体。

目に片手剣が刺さっている5m級が一体。

でかい方が監視役、小さい方が獲物を取る役だろう、目に片手剣が刺さっているのがその証拠だ。

アズラの闘志が高まっていく、この怒りをぶつける順番が決まった。


「わたしの弟に何をした・・・」


小さく怒りの声を発する。感情をむき出しにしていく。

アズラを包む、光る白い膜が輝きを増していき、拳に集まっていく。

構えを取り、必殺の一撃の体勢をとる。


アズラの武器は体術だ。

拳は岩を砕き、蹴りは大地を割る、

そんな力を実現しているのが、光る白い膜。


魔力。


人が皆生まれ持っている力。

可能性を実現させる力の源。

アズラは魔力で自身の体を覆い、超人的なパワーを発揮していた。

その超人的パワーを拳と脚に集中する、


「だぁあ!!」


ダンッ!と、脚を踏み込み、一気に接近する。

アズラの立っていた所が崩れ、土煙で覆われた。凄まじい速度で敵の懐に飛び込む。

狙いは目に片手剣が刺さっている方、

大きく飛び上がり、

回避行動を取らせる前に、拳を顔面にぶち込む。

怒りを魔力に乗せて解き放つ。

ドゴッ!!と拳がめり込む音が響き、ギム・ゼントの頭が砕け散り。

頭を失った体が力なく崩れ落ちる。


一瞬、

一瞬で目に片手剣が刺さっているギム・ゼントを撃破する。


アズラは、屠ったギム・ゼントの体を蹴りつけ、

着地位置を変える、

しかし、もう一体のギム・ゼントが敵を仕留めた時の、一瞬の隙を見逃さなかった。

鎌のような顎を開き、空中で体勢を整えようとするアズラに突っ込んでくる。

体勢の変えられない落下中を狙われた。

顎に捉えられ両腕で敵の攻撃を受け止める。


ギム・ゼントの顎がギチギチと音を立てて、両腕に食い込む。


「くぅ!」


「アズ姉!!」


セトは声を上げた。アズラが両腕から血を流し苦痛の表情を浮かべる。

だが、アズラは痛みで冷静になった。

セトを殺そうとした相手を見て、少し感情的になっていたようだ。

まずは、この拘束を解く。

再び魔力を高める、光る白い膜が輝きを増す。

腕に魔力を集中させ、ギム・ゼントの顎との間に魔力の膜を張り。

魔力を強固な鎧へとその性質を変えていく。

ググ・・・と、鎌のような顎を僅かに押し広げる。

隙間を生かして顎の拘束より脱け出し。

ギム・ゼントの懐に潜り込む。


「とどめ!!」


ギム・ゼントの腹にアズラの拳が決まる。

真っ二つに胴体が引きちぎれ、断末魔の声を上げた。

土煙を上げながら動かなくなる。


アズラは、舞うかのように綺麗に着地する。

セトは、助かったと胸を撫で下ろした。



----------



セトとアズラは森で、大人たちと合流した。

みなセトの無事を喜んでいるが、一番嬉しかったのはアズラだ。

間一髪だった、アズラの到着が一秒でも遅れていたら間に合わなかっただろう。

ギム・ゼントの甲高い鳴き声が聞こえたから、正確な位置を補足できた。

セトは生き残ろうと足掻いて、命を繋いだのだ。

何かご馳走を用意してあげようと、アズラは思う。

ロートラットを捕まえたみたいだから、肉料理だ、とアズラは考える。

怖い思い出をいい思い出で覆ってあげたかった。

そうセトには怖い思いを嫌な思いをして欲しくなかった。


村に到着し、二人は診療所へ向かう。

日はもう沈んでいる。

夜になってもアクリ村は、ギム・ゼントの件で慌ただしい。

セトは肩の傷が塞がるまで、安静にすることとなった。

アズラは応急処置だけで見回りに行ったようだ。


セトはとんだ初仕事だったとベッドに横になりため息をつく。

目を閉じると、まだ森でのことを思い出しそうだ。

明日を迎えることが出来なかったかもしれない。

そんなことを考えていると、

ふと、明日のことを思い出した。

明日、15歳となり、成人となる。

ケガのせいで、予定がずれるが、町に行くこととなる。

町に行けば国から仕事をもらい働くこととなるだろう。

しばらく村に戻れない。

アズラにも会えない。


セトは、それが一番不安だった。安心できる人が遠くなる。

そう思いつつセトは眠りについた。


・・・?

セトは、物音で目が覚める。まだ夜更けだ。

首だけを回し辺りを寝ぼけながら見渡す。

誰も居ないようだ。真横に安心できる家族がいるだけ。

愛おしいものでも見るかのような、安らいだ表情をしている。

セトを覗き込むような姿勢で、

自分が守った人を再度確認するかのような、

そんな気持ちの確認作業をしているのだろう。


セトを覗き込んでいるせいで、

慎ましき丘が衣服の間から、見えてしまいそうだ。

寝間着だから余計に・・・、

・・・、


「!? アズ姉どうしたの?」


セトはびっくりして体を起こす。

アズラは、子供を寝かしつけるようにベッドに腰掛けていた。

セトも男の子だ、隣に美人がいたらびっくりする。姉だけど。


「ごめん、起こしちゃったかな」


アズラは起こすつもりは無かったのか、少し申し訳なさそうにする。

診療所が月明かりに照らされて、アズラの灰色の髪が銀髪のように幻想的に輝く。

しばらく沈黙が流れる。

アズラは母親のような表情で、心の不安を口にした。

セトが聞くと安心できる声色で、優しさがこもった声で、


「セト・・・、わたしね、今日すごく怖かったんだ。セトが死んでしまうかもしれない。いなくなるかもしれないって。でも、セトは大丈夫だった、ちゃんと一人で仕事ができてた」


「そんなことないよ、アズ姉が来てくれなかったら、僕、死んでた」


「ううん、セトは最後まで諦めていなかった。武器を失っても、体が千切れても、生き残ろうとしていた。だから、わたしもがんばれた。セトががんばっているのに、わたしが、がんばらない訳にはいかないから」


「・・・」


「本当はね、セトが成人して、町に行って、ちゃんと仕事ができるか不安だった」


「むぅ・・・」


「でも、もうわたしが付いていなくても大丈夫なんだって、そう思えた」


「アズ姉と離れ離れになるのは嫌だよ」


わたしも、とは言えなかった。最も恐れる心の不安を口にして、

もうすぐやってくる現実の不安を口にできない。

口にしたらセトを自分に縛り付けてしまう。

そんなことは許されない、アズラはセトの母親代わりでもあるのだから。


「心配しないで、応援してるから・・・、ね」


子供を寝かしつけるように、安心させるようにセトを納得させる。


(嫌なのはアズ姉もでしょ・・・、でも、だから、僕がアズ姉を安心させなきゃ、がんばらなきゃ・・・)


セトは、そんなアズラの不安を理解していた。

理解しているから、安心させてあげようと、思うのだった。


「じゃあ、おやすみ・・・」


「うん、おやすみ」


長い一日が終わった。



----------



2日後、

セトの傷も塞がり、町に行く問題も解決した。

まだ完治していないが、無理をしなければ大丈夫だろう。


今日、セトは成人として町に行き、洗礼の儀を執り行い洗礼名を授かる。

そこでさまざまな仕事与えられ、国に貢献する。

セトたちの国。

世界最大の宗教国家にして、最大の帝国。


ディユング帝国。


この国では、成人すると洗礼名という宗教の階級を表す名を授けられる。

与えられた宗教名に応じて仕事が与えられ、それをこなすのが帝国臣民の使命だ。


アクリ村の人たちも、元は帝国からの命で、

森の管理を目的に派遣されてきた者たちだ。

セトはもうすぐ、臣民として国から仕事をもらい働くことになる。

魔獣の討伐か、未開拓地の開拓か、兵士として戦場に送られるのか。

どんな仕事でもセトに拒否権はない。拒否するつもりもないのだが。


帝国では、自国民の仕事内容を完全に国が管理している。

自身が望む仕事をしたければ、帝国にある一定の貢献度を示す必要がある。

あるのだが、一般の平民には厳しい内容だった。

故に、帝国民のほとんどが成人の時に与えられた仕事を死ぬまで変えることは滅多に無い。


そして、その帝国を支える教え。

国教の名は、ツァラトゥストラ教。


人を創造せし神を信仰し、神に尽くすことを幸福とする教え。

全人類の4割近くが教徒であり、

7割近くがツァラトゥストラ教の影響を受けている。

名実共に世界最大宗教である。

もちろん、アクリ村の人たちも全員が教徒だ。

セトは、ツァラトゥストラ教の神話などは好きだが、

教えに関しては、誰かのために尽くすことが良いことと解釈していた。

間違いではないが、ツァラトゥストラ教では、優先されるのは神である。

神官になるわけではないので、問題はない。


これが、ディユング帝国。

世界最大の宗教国家にして、最大の帝国。

セトもその一員となる。


旅立ちの準備をする、部屋に忘れ物がないか確認する。

昨日、アズラが晩ごはんを異常に張り切っていた。

食べきれないほどのロートラットの肉料理の数々。

骨付き肉に、香辛料を加えて混ぜ合わせた肉団子、肉の野菜包みと、

盛りだくさんだった。


セトが取ってきたのは一匹なので、アズラが乱獲したのだろう。

森への立ち入り禁止はどうしたのだろうか。

ギム・ゼントはほかにはいなかったようだが。

哀れロートラットたち、なすすべなく狩りつくされたか。

ロートラットたちは大丈夫だろうかと、セトは心配するが、

久々の腹いっぱいの料理を食べた。腹いっぱい、胸いっぱいだ。

ロートラットの心配などあらぬ方向に飛んでいく。


セトは、昨日のこと思い出しつつ、アズラに感謝しないといけないと心で思う。

思うだけで恩を返せていないのはイヤだったが少しづつ返していこう。


準備が完了する。

もうすぐアクリ村ともお別れだ。


朝の日差しが窓から入り込み、部屋を明るく照らしていく、

今日からいつもと違う一日が始まる。


「よし、準備完了!」


セトは、旅立ちの準備を終える。

黒い上着に動物の皮で作られた胸当てをつけて、

脚は長ズボンに黒い甲冑のようなものが着いている物を履く。

左腰あたりに片手剣をぶら下げる。

最小限の荷物を持ち、食料と水に余裕を持たせた。

必要なものは現地調達だ。


「セトー? 準備できたのー?」


下からいつもの声が聞こえてくる。


「うん! 大丈夫」


セトは元気よくアズラに返事をする。

部屋を出て、階段を下りていく、アズラと目が合う。

アズラがやさしく微笑み、セトはちょっと照れくさそうに頬をかいた。

朝ごはんは用意されていない。

変わりに、弁当が渡される。

町に向かう途中で食べる予定だ。


靴を履き、旅立ちに必要なものは揃った。

セトは、アズラと一緒に村の出口に向かう。

長年暮らしていた我が家ともお別れだ。

幼少期の思い出が詰まった家。また、いつか戻ってくるだろう。


村の出口では、村人たちが総出で待っていた。

セトは少し緊張しながら村人たちの前で足を止める。


「もうこの日が来てしまったのね」


「寂しくなるな」


村人たちから別れを惜しむ声が聞こえる。

村で唯一の子供、若者が少ないこの村では、

セトとアズラは我が子のように大切な存在だった。

二年前にアズラが成人し、そして今日セトが成人する。

セトとアズラの両親から引き継ぎ、

二人を無事、大人にまで育て上げることができた。

そのことに、涙を流す者もいる。

長いようで短い時間だったと思う。

まだ昨日のようにセトがアズラの後ろをトテトテと、

付いて回っている光景が目に浮かぶ者もいるようだ。


「セトが洗礼名をもらえるか心配だわ」


ふと村人の一人がセトが洗礼名をもらえるかを心配した。

セトは、その瞬間アズラが顔を曇らせたのを見逃さなかった。


洗礼名を授けてもらえない。それは、国から仕事をもらえないことを意味する。

本来なら臣民全員が成人の時に授かるのだが、稀に授かれない者がいる。

帝国の役に立てない、意に沿わない力を持った者がその対象となる。


成人までに、ケガや病気で働けなくなった者と、

害ある異能を持った者だ。

前者は不幸なことだろう。働きたくても働けないのだ。


そういう者は神官になるか、勉学に励み教師になる道もある。

洗礼名を授かるチャンスは残されている。

だが、後者は違う。

国の判断で洗礼名を授けないのだ。

仕事がなく地位を得ることもできない。社会システムから弾かれる。

その末路は悲惨だ。


成人を迎えて二年も村に留まっているアズラがそうだ。

二年前の成人の時、洗礼名を授けてもらえなかった。

原因は分からない。聞いても答えてくれず。追い出されるように町を後にした。

人より高い魔力が原因か?おそらく違うだろう。

アズラよりすぐれた魔力の子などほかにもいるのだから。


アズラは幸運な方だろう。村人たちがアズラを励まし仕事を与えてくれたのだから。

村の恥として追い出されても不思議ではなかった。


セトは大丈夫だろうかとアズラは考える。自分と同じ血が流れているのだ、可能性はある。

両親は授かっていたのに、子はダメなことがあるのだろうか。


(・・・自分がそうか。)


アズラは考えるが不安が消えることはない。

不安で心配でセトの顔を見る。

セトが大丈夫といいたげに、大きく頷いた。

心配だと顔に出てしまっていたようだ。

アズラはちょっと恥ずかしくも気遣ってくれたセトに感謝する。


村長がセトの前へと歩いてくる。


「セトよ、御主も晴れて成人となった。これからは、自身で考え、決めて行かねばならない。

なに案ずる事は無い、姉弟二人で支え合い共に生きていくといい、いずれ道が分かれる時が

来るやも知れぬが、大切な家族なのじゃ大切にな」


「?」


セトは村長の言葉の意味をすぐには理解できなかった。

アズラが驚いた顔をしている。

村人が何やら荷物を持ってきてアズラに手渡す。長旅をするための荷物だ。

つまり、セトとアズラ、二人で町に行き新しい生活を始めろということだった。


「でも、わたしは・・・、仕事を貰えるかも分からないんですよ」


「アズラよ、何の仕事をするかは御主が決めたらよい。

他人に決めさせる必要などない」


「ーーーーッ」


村長の言葉に、アズラは口を紡ぎ泣きそうな顔になる。

どれだけ感謝しても足りない、溢れてしまった思いが涙として流れ落ちる。

村長たちは、セトのケガが治るまでの間、議論を重ねたようだ。

このまま、アズラを村に縛るのは良くない、今回の件はいい機会なのかもしれない。

セトと共に町に行けば、洗礼名を授けられなくとも仕事を貰えるかもしれない。

貰えなくともセトの手伝いをしつつ、実績を積めば認めてもらえるはずだと。

優秀なアズラならできると判断したようだ。

何より、仲のいい姉弟を引き離すのは心が痛む。


「あ、りがとう、ございます」


アズラは嗚咽を抑えながら感謝を述べる。


数分ほど待つと、アズラが身支度を終えてやってきた。

緑色の綺麗な服をローブのように白い上着の上から纏っている。

ベルトを胸の辺りに固定し、見事な着こなしでいかにも旅人な雰囲気だ。

ズボンは真っ黒で、足首から太股の部分を防刃用の皮が縫い付けられている。

腕の部分には、肉弾戦を得意とするアズラに合わせて手甲が着けられていた。

ギム・ゼントの甲殻を加工したもので、漆黒に染まった森のようだった


セトは思わずアズラに見とれていた。綺麗でかっこいいと素直に思っていた。

そんなセトの視線に気づいてアズラが咳払いを一つ、

セトは慌てて意識を自分に戻し、


「お世話になりました。行ってきます」


セトとアズラが村の外へ踏み出す。

まずは町へ、

旅は始まったばかりだ。

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