干支達の夢 その一a【ねずみ】
干支に関するショートショートです。今回はねずみ編です。長さはほぼ葉書一枚分。一分間だけ時間を下さいませ。
「あなたってまるでねずみのようね」
タクシーのドアが閉まる瞬間、女がそう言った。知り合って
からまだひと月。初めてのデートの後、での事だ。
「えっ?」
振り返った時にはタクシーは走り去った後で、そこには微か
に甘い排気ガスの匂いだけが残っていた。
ねずみみたい? このオレが? 道路に突っ立ったままで男
は自問自答した。この言葉は褒め言葉なのか? そう、今日の
オレは充分紳士だったはずだ…
アパートに帰ってからも男は考え続けていた。まるでねずみ
のよう…
これはいったいどんな意味なのだろう?
男はネズミと聴いてのイメージを改めて並べてみた。おそら
く世界で一番有名なねずみ、ミッ●ーマウス。それに続くト●
とジェ●ーのジェ●ー。大人も子供も大好きな可愛いヒーロー
だ。
他には、と。日本で考えれば庶民の味方の義賊ねずみ小僧。
これも華やかで陽のあたるメジャー級か。
ここまで考えて男は反省した。今オレはいい気になっている
ようだ。オレは自分の分というモノを知っているはずではなか
ったか。
それでは、あ、ゲゲゲの鬼●郎のねずみ男! 途端に暗い気
持ちになった。ああ、干支!
だが、一番最初なのは、お人好しの牛を利用した小狡い作戦
のお蔭だ。
いやいや、お話の世界だけじゃなく、実物のイメージは、と。
やっぱり男は眉をひそめた。何だよ、薄汚く、暗い下水を逃
げ回る卑怯者じゃないか。
でも、待てよ? 男はふと思う。実験動物のモルモット。あ
れもねずみだ。奴らのお蔭でどれだけの科学的医学的な進歩が
あったことだろう。それにオレが一番好きなバンド、ブ●ーハ
ーツ。彼らも唄っていたではないか。ドブねずみみたいにキレ
ーになりたい、写真では表現できない美しさがあるから、と。
男の脳裏に様々な考えが浮かんでは消え、また浮かぶ。喜怒
哀楽の繰り返し。このままじゃとても安心して寝られない。
男は携帯電話に手を伸ばし、女にメールを打った。【最後に
言った言葉、あれ、どういう意味? そりゃ、オレは大した男
じゃない。でもあれは酷い】
すぐに返事が返ってきた。【酷いって? あれは褒めたのよ。
泉のように次から次へと話題が尽きないって♪】
いずみ? ねずみじゃねえのかよ! ホッとしたのと同時に
少し淋しく思えたのは、男の中に潜んでいるねずみ達のせいば
かりじゃあるまい。
固有名詞のミッ●ーマウスやト●とジェ●ー、ねずみ男、そしてブ●ーハーツのドブネズミみたいに~などは著作権違反になるのでしょうか?もしそうなら一部を伏字にしますけれども、どうなんでしょうね?




