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第七話 刻まれた想い

なんで私は2人を同室にしたのだろうか?

と苦悩しながら書きました←

作品変わってもうっかり属性は継続するんですね…

え?

うっかりじゃない?

ハハ、ソンナマサカ……

気のせいですよ。それでは~


翌朝


隼人は布団に包まり視界を閉ざしていた。

しかし、いくら視界は閉ざす事が出来ても、聴覚は閉ざせず、着替えの際に布と布が擦れる衣擦れの音が酷く耳に残る。


意識を何とかを逸らそうとしながら、隼人は思う。


――どうしてこうなった…






  †  †  †






「サヨ様、ハヤト様。お召物のお着替をお持ちしたしました」


最早習慣となっていた早起きで二人はほぼ同時に起き。あれこれ話し合って居た所、ドアをノックされ聞き覚えのある声がしたので中に通した所、案の定、老執事で様々な服がハンガーに吊るされている移動可能の衣装棚を運んできた。


「……着替える必要ある?諸見の間だったかで私たちの答えを聞くだけでしょ?」

「ええ、ありますとも。『勇者様』の正装ですから。お着替えが終わりましたら呼んでください、私は外に居ますゆえ」


小夜は嫌そうに目を細めながら言う。けれど昨日ほど険悪な雰囲気は発していない。

それに気付いた隼人が笑みを漏らす。更にそれに気付いた小夜が睨む。

老執事はメイドたちが衣装棚を全て運び込むとそう言い残し部屋を出て行った。


「…全く、どう考えても、客寄せパンダじゃない………なんでメイド服まで吊るされてるのよ……!…これ…いいわね」


老執事が出て行ったあと早速悪態を吐く小夜。

衣装棚の中に吊るされたハンガーをかき分けながら衣装を確認する。

その中に、異様な物まで見つけてしまったが、その隣に目を目を瞠る物があった。


「ははっ、まぁいいじゃないか、何時までも制服のままだと堅苦しいし、そんな事より何時の間にあの執事さんと仲良くなったんだ?」

「仲良くない。話が合うだけ」


反対側から浮かれてる声が聞こえ、聞き捨てならない事を言われる。

不機嫌に眉を吊り上げ速攻で切って捨てる。


「私、服決めたから、着替えるわ。判ってると思うけど覗いたら削ぎ落とすわよ、両方」

「早くないか!?削ぐって何処と何処を!?」






  †  †  †






小夜の事だから何するか判らないと悟り、布団に包まり今もこうして視界を閉ざしていた。


シュルシュルと紐を解く音から紐を縛る音、様々な音が耳を通りすぎる。

隼人は眼をきつく閉じ、早く終わってくれと心の底から望む。


「終わったわよ。ああ、少し出かけてくるから後で会いましょう」

「あ、ああ…って本当に、それで行くのか…?」


行先は問わない。

聞いたとしてもはぐらかされるだけだろうし、機嫌を損ねるだろう。

小夜の選んだ服は一言で言い表すならゴシック&ロリータ。


黒を基調とした、レース、フリル、リボン、に飾られた華美な洋服、靴は編み上げのブーツ。

白いブラウスが全身の黒を強調している。

右胸元に付けたパール・ホワイトの翼が上にウェーブを描くように2本、横に2本伸びているバッジがシャンデリアの燈火を反射しキラリと光る。


「何?」

「い、いや…何でもないよ」


黒いレースのリボンで括ったロングポニーをたなびかせ、小夜は振り返る。

服装も相まって、元々発していた人を近づけさせない雰囲気が格段に上昇している。

普段見慣れぬ姿からか、隼人も思わず言葉を濁してしまった。


「そう。なら、また後で――――執事さん」

「おお、見違えましたな。大変美しゅうございますよ。サヨ様」

「ありがと、それで、諸見の間に向かう間に私たちが昨日、召喚された部屋まで案内してくれる?」

「承諾しかねますな。何分、時間がありませんゆえ」

「………諸見の間の後の予定は確か…街の方に出るのよね?」

「然様にございますな。ですが、途中で抜ける…と言うのは余り宜しくないかと」

「……まだ、何も、言ってないじゃない」

「いえいえ、はっきりとお顔に書いてありましたよ」

「――――着替え、終わりました」


白い手袋をはめた右手で口元を覆い笑う老執事。

不意にドアが開き、隼人が姿を現す、白い礼服の胸元に小夜と同じ色違いの銀バッジを付けている。

メイドたちにも僅かにどよめきが走り、中には呆けてる者もいる。

小夜は意味深に目を細め、老執事は拍手をしている。


「え…っと、変……かな?」

「いや、いいと思うわよ。貴方らしくて」

「そうですな。〝お二人″とも勇者らしい見目にございます」


困惑の表情を浮かべる隼人と相変らず無表情で腕組みをしている小夜に老執事は、お二人の部分を強調して言った。

それだけで小夜は不機嫌に眉を吊り上げ、諸見の間へ向けて歩き出す。

後から、遅れて隼人と、老執事、メイドたちが歩き出した。






  †  †  †






「ふむ。そなた等の答えは決まったのかの?」

「はい」 「ええ」


玉座に座る国王は2人に問う。

小夜と隼人は聞いていた通りに片膝をつき、右胸に付けたバッジに手を添え、頷く。


「よろしい。では答えを聞かせてもらおう」

「俺なんかに…『勇者』が務まるかどうか判りませんが、全力を尽くさせて貰います」

「ふむ。して、そなたは?」

「私は……『勇者』にはならない」


小夜が言い切ったその一言に諸見の間に集められた衛兵や、巫女、メイド、周囲にどよめきが走る。

しかし、小夜は言葉を紡ぐ事を止めない。


「私がなるのは、いや、私がなれるのは――――」


ずっと、考えていた。

私には『勇者』なんてなれない。

誰も救えないから。

手を差し伸べる事もできない。

私は荷物になるもの全てを切り捨ててきた。

だから、勇者なんて大層な物にはなれない。


「『魔女』よ」


再び、周囲のどよめきが大きくなる。


「ふっふっはっはっは!!!……良いではないか…面白い。『勇者』と『魔女』…ふむ。よい!実によい返事を聞かせてもろうた!!皆の者!支度をせぇい!!城下を回るぞ!!!」


国王は玉座から立ち上がり、豪勢に笑い、諸見の間に居る全員に命令する。

どよめきは収まり、数奇、憧れ、軽蔑、嘲笑、侮蔑、様々な視線が2人に向けられた。





  †  †  †





その夜。


小夜は老執事に案内してもらい魔法陣の部屋に居た。

隼人は連れて来ていない。むしろ、連れて来れなかった。

魔女より勇者の方が最初から信頼されているようで、様々な所に連れ回された結果、ベッドの上で呻っているのだ。

水に濡らしてもらったタオルを絞らず隼人に投げつけて小夜は此処に居る。


紅いペンライトを片手に持ち、まず部屋を一通り眺める。

魔法陣が描かれている部分はよく見ると他の所より高くなっていて、その部分の天井にも同じ魔法陣が描かれている。


床に膝を付け、ペンライトで照らし、魔法陣を眺める。

そして、ある一つの事実に気が付く。


「これって……もしかしてルーン文字?……間違いないわね…『テイワズ、カノ』…闘いの開始……?…駄目ね…私じゃ解読できないわ…せめて神田さんなら読めたかもしれないけど」


正座の足を崩し、俗に言う『女の子座り』で床に座り込む小夜。

左腕の袖を捲りLを逆さに書いたルーン文字『ラグズ』を見つめる。

そして思いはせる、これを彫られた時の苦痛に誓った願いを。言われた事を。


――お前の願いは、端的に言えば『生きる意味を見出す』だったな。なら、このルーンがいいだろう。

――あっぅ!?……逆さ…のL?

――『ラグズ』だ。ラグズは水を表す。水は古来から感情や感性、霊能などのシンボルになっている。自分の勘を信じて行動すると良い。きっと答えは見つかるだろうさ。


あの時もこうして床に座って痛む左腕を抑えていた。

真紅の長髪をだらしなく揃えた所長が、頭を撫でてくれたのを覚えている。


「自分の勘を信じて行動する、か……そうね、少なくとも魔女って公言した以上、人は近寄らないでしょうから、1人で動けるはず……後は……」

「サヨ様。そろそろ、ご就寝なさった方がよろしいかと」

「………判ったわ」


この執事は本当に後ろとるのが好きね、そもそも何時から聞いてたのかしら?

と頭の中では否定するが、それを不機嫌な態度で表すだけで言葉にはせず、素直に肯定した。

再び、老執事の横に並び、部屋に戻る道を歩く。

少なくとも『ルーン文字』の事は隼人に話すべきだと考えながら。

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