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第十五話 邂逅

段々と定期更新が乏しくなっている事に焦り始める自分が……


案の定、馬車を引っ張る馬に騎乗してくれる心優しい国民など居るはずもなく、少しばかり乗馬の経験があるシンが手綱を握っている。


リズミカルに蹄を鳴らす音、それに合わせて小刻みに馬車が揺れている。


「そう言えば、チーム名考えてなかったわね」

「なんかいい案あんの?」

「出来る限り、私達と判断しにくい名前が望ましいけど…」

「はいはいっ!」


ここぞとばかりにラミアが勢い良く手を挙げた瞬間、馬車が大きく揺れた。


「…話し合いの最中悪いが、魔物だ。ヴィンセント、手伝え」

「ええっ!? なんでさ?」

「雑魚だが、数が多い」


用件を言い終えると、シンは馬から降り、腰に下げていた剣を取り出し魔物の軍勢に向けて、走り出した。


「めんどいなぁ……うわっ、数多すぎだろ~……まぁ、しゃーないね…頑張ってきますか」


垂れ下がる白地の布の隙間から窺える外には、人と同じぐらいの大きさの紫色をしたカマキリのような生命体や、骸骨と化した戦士、腕と足に装具を付けた狼などの軍勢が前方にいる。


その中心、シンとヴィンセントは背中を合わせている。


「…なんかよぉ…前も剣闘士と背中合せてた気がするんだけど…?」

「気のせいだ。 それより、時間が惜しい。 速攻で終わらせるぞ?」

「剣闘士の動きについて行けるかッ!! ってか絶対気のせいじゃねぇ!!」


駆けだしたシンが剣を振りおろし、狼を両断する。

口答えしつつもヴィンセントも素早いリロードと速打ちで魔物を近づけていない。


「…まぁ、あの二人なら大丈夫でしょう。 私達はチーム名でも考えていればいいじゃないかしら」

「あはは、そうしましょうっ」






  †  †  †






「はぁーっあ!もう無理!疲れた!!」


数分後、馬車の中に疲労困憊と言った様子のヴィンセントが仰向けになりぜえぜえと息を切らしていた。

共に戦闘を行ったシンは毅然として馬に跨り手綱を引いている。


「…だらしないわね…少しはシンを見習ったらどうなの?」

「だから…剣闘士と比べんなって…」

「減らず口が叩けるぐらいなら大丈夫じゃない」

「大丈夫どころか…へとへと何ですけど?」

「えっと…? 大丈夫ですかっ…?」

「少し休めば大丈夫~かな」


心配そうなラミアを差し置き、労いの言葉すらかけない小夜。

資材の入った木箱に背を預け膝の上にラミアに薦められた陣魔術の入門書を広げている。

そんな調子で街道を進んでいく。

そんな折に小夜はふと気付いた。

自分はこちらに来てから、独りになっていないという事実に。

嬉しいとは少し違い、少しずつ変って行く周囲に驚いている。

その事実に若干戸惑いを感じていてた時、再び馬車が止まった。


「…? 剣闘士?また魔物でも出た?」

「いや、人間だ…尤も出逢いたくはなかったな…」


険しい表情をしたシンが馬から降り、逢いたくなかったと称する人物と対峙した。

背中の中間まで伸びた黒髪、病的なまでに白い肌が陽光を反射し、人形のように整った風貌。

背中に当たる部分に白い逆さ十字の入った黒いトレンチコートを羽織った女。


糸目を薄らと開いたシンと射抜くような僅かに視線を交えた2人。

一瞬で数メートルは離れていた距離が縮まり、鉄がぶつかり擦れる音、火花が散り、離れた。

女が空中で身を翻し、手に握ったナイフを投げ、シンはそれを弾き落とす。

数拍を置いて再び肉薄する2人。


目では追えない速さの攻防が行われている。

後天的直感を失った小夜にはそれしか判らない。

相手方の武器すら判らない。

気が付けば下唇を咬み、自分が無力さを噛み締めていた。

均衡する2人は鍔迫り合いになり、その時、初めて女が2本の大鎌サイスを操っていると言う事に気付いた。


右手の大鎌サイスは先端にダイヤ型の突起があり、三日月の刃が暗く嗤っているかのように鈍く輝いている。

左手の大鎌サイスと右手の大鎌サイスに大差はなく、三日月が2枚になっているだけだ。


するりと首を伸ばし、シンの耳元で女が何かを呟いた瞬間、ハッとしたシンが力の均衡を崩すために思い切り足を振り上げた。


「ヴィンセント!先へ行け!」

「了解ッ!」

「シン!必ず追付きなさいよ!」

「判ってるさ!」


疲弊した体に鞭打って馬に跨ったヴィンセントは見様見真似で馬を動かす。

急ぎ足で動き出した馬車の中から頭を出し、シンを視線を交えた小夜は静かに頷いた。

馬車を追おうとする女を塞ぐようにシンは立ちはだかる。


「…シンさん大丈夫でしょうかっ?」

「判らないわ。でもあのまま居ても私達は足手纏いになるだけよ。無事に合流できればいいんだけど」


激しく揺れる馬車の中で憮然としている小夜の中には小さな不安が芽生えていた。






  †  †  †






馬車が通り過ぎた後、異様なまでの静寂がそこに生まれていた。

大嵐の前の静寂。


「……俺たちの道が違えた時から、何時かこうなるんじゃないかとは思っていた」

「……囮になってまでも私のオーダーの邪魔をするのね?」

「ああ」


鞘に手を置き空を見上げたシンが僅かに哀愁漂う声で静寂を破る。

女が耳元で囁いた言葉が嫌でも耳に残り反響する。


『私のオーダーは魔女と勇者を殺す事よ』


たった一言でシンにある決意をさせる程にそれは重かった。


「それはどうして? 出来れば殺す前に教えてほしいわ」

「…魔女アイツはあの娘に似ている。お陰で忘れかけていた物を思い出す事が出来た。その恩を返す、それだけだ」

「…ああ、あの娘ね…所詮は猫でしょ。獅子、虎、豹の間に割って入ってきたのが悪いわ」

「お前にとってはそうかも知れんが、生憎、俺には重要な事だ」


シンはゆっくりと手を動かし、目元を覆い、前髪を掻き上げた。


「あら…『開眼』するんだ? 虎としては動かないんじゃなかったの?」

「悪いな。全力・・でお前を倒して俺は行く」


掻き上げた前髪が元の位置に戻り――――シンの糸目が開かれている――――黒金の焔が揺れる瞳がそこにあった。


旧友にして仲間、仲間にして戦友、戦友にして好敵手。

仲間としての道が違えた2人は『武』を持って相手を納得させる術しか知らない。


「『倒す』…そう…『倒す』でいいのね? なら貴方は私には勝てないわ。だって私は『殺し』に行くんだもの」


先程とは比べ物にならない程の力と力がぶつかり合い――――爆ぜた――――

最近、元々薄幸だったのが、悪化している気がします

原因は不明なんですが明らかに運が無さ過ぎて泣けてきます

…どうでもいいですよねー。すみません


本題です

登場人物のプロフィールとかを紹介した方が良いでしょうか?

閑話程度に纏めておくべきかなと思いまして、意見がありましたら申し出てください


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