表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANOTHER REALITY  作者: マンドラゴラ
第二章 善悪が交差する口
56/90

第二十九鐘 村長の頼み

 祭りの準備が終了し、人の輪から離れて休憩するハイトの元に、同じく準備を手伝っていたウィルが近寄る。会話の途中でウィルは、自分が地球人である事を明かした。一先ず敵味方どちらになるかを判断する為に、ハイトは様子を見る事にした。その後、ロゼがハイトの前に姿を現し、村長が呼んでいる事を二人に告げ、一向は村長の家へと向かった。

 ロゼに案内されて数分。他のよりも一回り大きい家が見えた。


「あれがそうか?」


「うん、あれが村長さんの住居だよ」


 やはり、あれが村長の家のようだ。他の家よりも色々な所が立派なその姿は、初めて見る俺でもこれだと分かる。

 家の前にまで来ると、一人の少女がこちらに向かって来た。


「ロゼ、やっと戻ったか!」


 嬉しそうに喋りながらロゼに向かって突進し、そのままの勢いでロゼに跳び付いた。


「ミリアちゃんお待たせ~」


 ロゼは避ける事無く、その少女と抱擁した。

 道理で見覚えがあると思った。その少女は、あの時俺を怖がらなかったミリア本人だった。

 てか、ロゼはもうミリアと仲良くなっているのか。俺には出来ない芸当だ。


「おお、ウィルも来たのか!」


「久しぶりですね。昨日ぶりでしょうか」


 ウィルが俺に会った時と似たような事を言ってミリアに微笑んだ。どうやら、ウィルもミリアと面識があるようだ。

 そうなると、ミリアとあまり面識が無いのは俺だけか?

 案の定、ミリアは俺の姿を確認しても、さして笑顔にはならなかった。


「お主は確か……ロゼと一緒にいた……」


 顔は覚えていたらしい。


「ハイトだ」


 交友を深める気は無いので、俺は簡潔に自己紹介をしただけで終わらせた。


「それでミリアちゃん、村長さんは何処にいらっしゃるか知ってる?」


 一通り全員との会話が終わったところで、ロゼが話を切り出した。


「うむ、父様は家の中におる。家の中に上がってくれ」


 そう答えると、ミリアは先に家の中に入っていった。少し歩いた所で、ミリアは俺達を待つように脚を止めた。


「では、行きましょうか」


 ウィルが俺達に声をかける。

 あまり待たせるのも意味が無い。俺はそれに頷くと、村長がいる家の中に入っていった。

 俺は無言で、ロゼとウィルは「お邪魔します」と一言断って入った。

 

「私について来てくれ」


 俺達全員が家の中に入ると、ミリアはまた歩を進めた。

 どうやら、俺達を案内するらしい。

 ミリアの後ろを追いながら木製の廊下を進んでいると、一室に辿り着いた。


「父様、連れて参りました」


 ミリアが父様と言った男性は、穏やかな顔付きをして、優しいイメージを抱いた。


「ご苦労だったミリア。旅の方もここまでのご足労、感謝する」


 なのに、言葉には荘厳の雰囲気が漂っていた。


「初めまして、村長さん。私はロゼと申します」


 初めに、ロゼが村長に挨拶をした。礼儀正しく一礼を忘れない。


「お久しぶりです、ロイドさん」


 次に、ウィルが村長に一礼をした。どうやら、村長の名はロイドと言うらしい。


「ハイトだ」


 最後に、俺がぶっきらぼうに、一方的に挨拶をした。


「は、ハイト……」


 ロゼが俺の言葉を咎めるように小さな声で窘めた。


「気になさるなロゼさん。どうぞ、寛いでくれ」


 ロイドは俺の態度に気にした風も無く、俺達に座る事を許可した。

 俺達はロイドに従い、その場に腰を下ろした。


「私はロイド。ここ“シンベル”の村長を務めている者だ。どうか、心行くまでシンベルに滞在して欲しい」


 俺達が座ると、ロイドは一礼をして俺達に挨拶をした。


「私はミリアだ。皆、仲良くして欲しい」


 ロイドの隣に座っているミリアが、父親同様に挨拶をした。


「まずは礼を言わせて欲しい。明日行われる祭りの準備に精を出してくれた事、心より感謝する」


 そう言って、ロイドは深くお辞儀をした。


「私からも言わせてくれ。皆の為に身を粉にしてくれた事、真に感謝する」


 ミリアも俺達に礼を言った。


「いえ、そんな……。大した事はしてません」


 ロゼは慌てたようにそう述べた。


「ロゼの言う通りだ。それに、俺はその言葉を聞きに来たんじゃない」


 俺はこの場の空気を凍らせるような発言をした。


「ハイト……?」


 隣で戸惑った声が聞こえた。


「……と申すと?」


 ロイドが俺に静かな声色で訊ねた。


「礼を言いたいなら、述べる方が出向くのが筋と言うものだ。アンタだってそれは分かっている筈。なら、どうして俺達を此処に呼んだのか」


 俺は視線を逸らさずに述べる。ロイドはそれを真っ向から受け止めた。


「俺の早合点なら謝る。アンタは何か祭りに関して重大な事を俺達に話す為に、村人から離れた場所に呼び寄せたんじゃないのか?」


「えっ……?」


「…………」


 ロゼの驚きに満ちた声、ウィルの待つような無言が室内に舞った。


「……ふむ、君は聡明な頭脳を持っているようだ」


 ロイドの顔に笑みが宿った。


「では、ロイドさんが私たちを呼んだのは……」


「無論、君達に礼を言いたかったのは確かだが、その他に私から頼みたい事があったからだ」


 ロイドは俺達一人一人の眼を見て、


「私から君達に頼むクエストがある」


 そう述べると、ロイドと俺達の眼の前に小さなウィンドウが現れた。


『クエスト 巫女の護衛

 儀式の洞窟に赴く巫女、ミリアの護衛を務めよ

 クリアー:特定人物ミリアの儀式開始

 ミス:特定人物ミリアの死亡

    特定人物ミリアの儀式不発

 タイム:祭り終了迄

 リウォード:1000G

        ミドルキューブ×3』


 宙に浮かぶウィンドウにはそう表示されていた。


「ミリアちゃんの護衛……ですか?」


 ロゼがロイドに確かめるように訊ねた。


「左様。君達は明日行われる祭りが、娘の為だという事をご存知か?」


「はい、知っています」


「私も知ってますよ」


「同じく」


 この祭りが次期村長、つまりミリアの為に行われるのは既知の情報だ。


「ならば話は早い。明日の夕刻、ミリアは次期村長として、そしてシンベルの巫女として、シンベルの北西にある儀式の洞窟に赴くのだが……」


 そこでロイドはやや視線を下げた。


「ミリアの護衛を務める筈の二人が、先日の魔物との戦闘で負傷してしまった。シンベルにはまだ魔物と戦える者はおるが、村の護衛に回らなければならん」


「なるほど、俺達に行かせようと言う事か」


「如何にも。このクエスト承けてくれるか」


「…………」


 俺はその言葉に返事をしなかったが、もう決まったようなものだ。

 何故かと問われれば、


「分かりました。私に任せてください」


 ロゼが威勢良くクエストを承諾するのを、予期していたからだ。ロゼが困っている人をほおっておけない性格なのは、あの時から分かりきった事だ。

 ロゼはロイドに意思を伝えた後、ウィンドウに表示されている『はい』を押した。


「私が断る訳無いじゃないですか」


 ウィルも笑顔でそれを引き受け、ウィンドウに表示されてい(ry。


「左右に同じく」


 ロゼが行くならば、何もしない訳にはいかない。俺もそのクエストを承諾する為、ウィンド(ry。


「恩に着る」


 それを見届けると、ロイドとミリアは深く一礼をした。


「クエストの開始時刻は、明日の十七の時だ。それまでは、我々の祭りを楽しんで頂きたい」


「分かりました。ありがとうございます」


 ロゼは礼儀正しく礼を述べた。


「シンベルのお祭り、楽しみにしています」


 ウィルが楽しげな声色でそう告げた。


「…………」


 俺は話す事も無く、無言のままでいた。

 何はともあれ、俺達は村長からのクエストを引き受ける事になった。


 <スタイル>

 このゲーム世界「ANOTHER REALITY」においてのスタイルの意味は、その人物の特徴を客観的に区別したものである。必ずしもその人物の全てを象徴している訳ではない。スタイルは例外を除き、己の意思で選択する事が出来る。なお、スタイルは三段階に分けられていて、一段階目は「ルーディ」、二段階目は「テリクス」、三段階目は「アテイン」と呼ばれている。それぞれの段階になる条件は、ルーディは、Lv10かつどのスタイルにもなっていない。テリクスとアテインは、それぞれのスタイルによって決められている。一度決めたスタイルを変更する事は不可能。その為、スタイルは職と同等の重要性を秘めており、今後の人生を左右する分岐点でもある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ