「プロローグ」
―――200X年8月30日
この日は、空には雲ひとつない、晴天だった。空を眩しそうに眺めていた少年は、不意に視線を前方に戻した。そして、一礼をして少年はスタートブロックに脚をセットした。太陽がトラックを照らす炎天下の中、少年は無心と化していた。会場が見守る中…
―――バン!!!
八人の選手達はいっせいにスタートした。
その少年は、櫛風のように…いや、流れ星のように駆けていった。その光景は、見る者を魅了した。その姿はただただ美しかった。
そして、その少年はもうひとりの少年と並走しながらゴールへと飛び込んでいった…―――
――100m決勝 結果――
――追い風0.2m
1位 松舘 皐月 (3) 10.81
2位 倉持 大地 (3) 10.95
3位 天野 翔太 (2) 10.98
4位 星空 祐輝 (2) 11.00
5位 横山 仁 (3) 11.13
6位 山田 雄一 (3) 11.17
7位 峰岸 和哉 (3) 11.19
8位 見崎 亮 (2) 11.21
―――少年は自己新記録を出した。少年にとって、この日は喜ぶべき日だったはずだった。しかし、少年の知らぬ間に歯車は軋みだした…―――