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何もしたくない。それなのに、何かをしなければ落ち着かない

作者: 羽森ハル

『走りなさい 疾く もっと疾く 悲しみに追いつかれないように

 探しなさい 明かりの灯る道を それは それは 眩いでしょう』


「Ado」様(作詞「てにをは」様)の「エルフ」から引用させていただきました。とても的を得た表現だと感じます。


私たちはいつも走っているのです。立ち止まった瞬間、悲しみに――自分の無力さに、先行きへの不安に、気づいてしまうから。だから走り、探します。明かりに照らされたゴールを。そこにたどり着けさえすれば、悲しみはもう追ってこないから。


ただぼんやりと「頑張らなければ」と思うことがよくあります。その理由が分かった気がしました。自分でするべきだと思っていることをしているときには、悲しみを感じる余裕もありません。逆に、そうでないと悲しみに囚われてしまうのです。


これは、ちょっと物騒な私の初エッセイです。

組織で動くときの話をします。


大前提として、私はそこらへんにいる有象無象にはなりたくありません。もっと、組織にとって特別な人となりたい。


そして、自分の知らないところで何かが動いているのが嫌です。すべてを見渡したい、それが強い願望としてあります。


これを知ってもらったうえで、例をどうぞ。


――


文化祭などで揚げパン屋を行う場合です。


私はまずメニュー決め班に入ります。なぜならそれが一番、司令塔になって動ける気がするから。特別な存在になりたい、すべてを見渡したい……という私の願望は、すでにお伝えした通りです。


私はその場で、いったんは全力――とはいかないまでも、八割ほどの力は出して物事にあたります。


しかし、私の意見が反映されません。一番最初の方針決めの時点で、私の意見とは正反対の高くて具材盛りだくさんのピザになってしまう。(そういうピザが悪いというわけではない。ただ、ここでは例として。)


ここで私の前に、二つの選択肢が現れます。ひとつは議論を交わし、自分が良いと思っているメニューに変える。もうひとつはメニュー決め班から抜け、責任を放棄する。


私はいつも、後者を選んでいます。


だって、議論を交わしても結局変わらないかもしれないじゃないですか。そしたらその時間も無駄になる。


なにより、メニュー決め班に入っているとメニューに対して責任を持たなくちゃいけない。でも、他の人が決めた嫌なメニューの責任なんて持ちたくないのです。


具材盛りだくさんにするという方針が決まった後に、メニュー決め班の人たちが具材を具体的に何にするか決めようとしていても、どうでもよいと思ってしまうのです。


どうせ具材盛りだくさんの嫌いなピザになることは変わらないから。


もっと話し合えば、具材盛りだくさんでも素晴らしいものが作れるかもしれない。でも、話しても何も変わらないのが怖い。


そっか、怖いんだ、怖いんです。話し合って、それでも変わらなかったら、より自分の無力さを痛感するだけになりますから。


まあそういうわけで、そーっと抜けて別の班に入ります。途中で班を変えるのが推奨されていないとしても、メニュー決め班の集まりに参加せず、別の班の手伝いをしたりし始めます。


たとえば、買い出しする班とか? 理由は単純に、二番目に司令塔っぽいからですね。こうなっても全体を見渡したいし、特別な存在になりたいとずっと思い続けてしまう。


しかし結局、そこも抜けてしまいます。なんか嫌なことがあるんです、きっと。自分の意見を聞いてくれない、自分の理想とちょっと違う……。ちょっとしたことです。


一瞬でも自分と合わないと思うと、それだけで私はまたその班を抜けます。


そうこうしているうちに、私が大嫌いな、指令の通り手足となって働く班だけが候補に残ります。しかたなく私はそこに入るでしょう。


これはもう最後のほうですね。文化祭の一週間前とかに、と想像していただければ構いません。

まあ私はテキトーにその班で働いています。


しかし、組織の頭になるという願望はあきらめません。全体を見渡すことも諦めません。


最初に抜けたメニュー決め班が忙しそうに働いていると、ふと、私もそこに戻りたいと思ってしまいます。


もちろん抜けていた期間は長いものですし、今までの流れも知らない人が入ってきても戦力にならないでしょうけど、それでも入りたいと思ってしまう。


トマトソースが沢山は買えない、どうしよう。とか、ちょっとしたトラブルが起こっているのを感知し、緊急の話し合いに首を突っ込みます。


そうですね、そういうトラブルが起こったときは「放課後、メニュー決め班の人は教室に残って話し合いましょう」とかまとめ役が全体に言うと思います。そこで、メニュー決め班じゃないのに教室に残る感じです。


また面倒なことに、話し合いにきちんと参加はせず、帰り支度が遅れている人のようなふりをして。交わされている議論に耳を傾けます。


これは、全体を見渡したいという願望からなるものでしょう。せめて、どういう結論になるかを聞き届けたい、と。


ですが、私がそれだけで満足する訳が無いのです。聞いていると少しは自分の意見と違うような意見が出てくるわけで、どうしても反論したくなってしまいます。


部外者なのに。


みんなが輪になって集まっているところに外側から頭だけ頑張って出して、声を張り上げます。それは違うと思うとか、自分の考えをぶちまけます。


一蹴されます。


それまでの議論の流れも何も分かっていない人が、的を得た意見を言えるわけがないので。急に現れた邪魔者が意味不明なこと言ってる、としか思われません。


メニュー決め班の人たちは、やんわりと私を拒絶します。「関係ない人は来るな」と直球で言う人もいるかもしれません。


私とメニュー決め班の間に透明なバリアが生まれて、私は入ろうとしても優しく押し戻されるのです。


私がバリアをぶち抜いてメニュー決め班に返り咲けるような人間なら、まず最初からメニュー決め班から抜けるなんてこともしないわけで。


急いで帰り支度をして学校から走って帰ってしまいますね。


そうこうしても文化祭は終わりません。メニュー決め班にも戻れず、やはり手足となるしかない私は特別な人になるために何をするのでしょうか。


答えは「何もしない」です。すべてをなるままに任せます。そこらへんにいるただの手足になります。役に立たない手足に。


ああ、でも観察は続けますよ。相変わらず、自分の見ていないところで何かが起こるのは大っ嫌いなので。


どこかで集まりがあると聞くと、たまたまそこにいる人に扮して話し合いの様子をずっと黙って聞いています。それだけですけど。


また思い立って発言しようとしても、やんわりと拒絶されるだけですね。


つまり、あれです。はたから見たらそんな私は、単なる手足――もしくは何でもかんでも首を突っ込んでくる赤の他人、くらいにしか思われないのでしょう。


私が一番軽蔑している存在に。

避ける余地もなく、追いやられます。


――


以上、例示終了です。

みなさんが思ったであろうこと。


すべて筆者が悪いだろ、これ。


だって組織の脳になりたいならそれ相応の働きをしてちゃんと意見述べればいいじゃないか。逃げないで話し合いにすればいいじゃないか。


その通りです。全面的に同意します。


ただ分かってもらいたいのは、こういう馬鹿な人間がそこら中に溢れかえっているということです。


人間はたいてい、自分の見ないところで何かが起こっているのが嫌いです。自分が無能になることが嫌いです。


だから、仕事を任されたら嬉々としてやります。自分が世界に存在しているということを認めてくれたようなものだから。


素晴らしい思考回路にしやがりましたよね、神も。だから過労死なんて方が出てきてしまうのです。


といっても、全員が全員仕事をしたがる奴なら、なんで無能ばっか世の中に溢れかえってるんだって話です。


そこで、私のさっきの例につながります。


無能――というか、無能にはなりたくないけど何をすれば良いか分からなくて、やることなすことすべて駄目なことばっかり。そんな感じなのです。


だから、どうか責めないでください。


難しいかもしれません。だいたい、まとめ役っていうのはとっても大変なのです。それでも、仕事をしたいとは思っているのです。


最初は、明確にどうすれば良いかがわかる仕事を与えてほしいな、と思っています。


結局なぜ全体を見渡したいかというと、どこかで「誰か来て!」って言われたとき助けにあらわれるヒーローになりたいからなので。

エッセイを書くのには抵抗があったのですが、投稿された短編エッセイをすべて読んでくださる方がいると知って、書きました。


何言ってんのか意味わからなくなっちゃいましたね。無能の思考回路はこんな感じ、という説明をしたつもりなんですけど……。


余談ではありますが、「エルフ」は歌詞も曲も歌唱もとても素晴らしい曲ですので、ぜひお聞きください。

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