6話
チャリン!
「ん…」
翌朝、トウヤがスマートウォッチの音に目を覚ますと、ディスプレイに映った男が言っていた通りまたコインが20枚配当されていた。
トウヤは身体を起こすとカンパンの残りを口にして、空になった袋を丁寧に畳んでポケットへとしまいながら有り余る時間の使い方を考えていた。
まだまだ確認していない事が多いがとりあえずはたった今切れた食糧の確保だな…。
トウヤはカンパンの追加購入の為校舎から食堂へ向かった。
途中、食堂前のアスファルトの段差に腰掛けてトランプをしている男女3人が目に入った。
「え!?またエリの負け!?」
「いいから早くコイン払えよ?」
「お前本当に運がねーな、ヒデトも手加減してやれよ」
トウヤが彼らを横目に通過しようとした際、ヒデトと呼ばれていた金髪オールバックの男がトウヤの視線に気がつき声をかけた。
「一緒にどうだ?」
「俺はいい…」
トウヤは断ると真っ直ぐに食堂へと入りカンパンのみを購入した。
食堂の中では皆が昨日の今日で当たり前にコインで購入した食事を摂り、悠々と時間を過ごしていた。
トウヤは彼等の様子を横目に思いに耽りながら食堂を後にした。
ここに来てまだ2日目っていうのに大事なコインで好きな物を食べ、更には暇つぶしとはな…順応速度が早いというか短絡的というか…。
そういえば金髪オールバックのあの男…ヒデトだったか?
『いいから早くコイン払えよ?』
確かそう言っていたな、個人間でコインのやり取りが出来るようになってるのか?
トウヤは校舎へ向けて歩きながらスマートウォッチを確認すると『送る』という項目があった。
馬鹿馬鹿しい…何故他人に自分の限り有る財産を送る必要がある…
いや…このコインもいつまで供給されるかわかった物じゃ無い…依存したらダメだ。
トウヤは不確かで外部の影響を受けるコインが信用しきれないと考えた。
もっと永続的で外部の影響を受けない食料の確保、自給自足で手に入る穀物等を育てるべきだ。と。
確か倉庫の横に畑跡があった筈だ。
畑を作る事を決めたトウヤは校舎前で足を止め倉庫横の畑跡に向かった。