2話
だが目的は何だ?誘拐か?
にしても大掛かりな上に向こうの利点がまるで見当たらないな…
トウヤはもう一度学校と外部を隔てる大きな壁を見てから、ゆっくりと立ち上がり校舎を出て頭上を見上げた。
すると、青い空を雲がゆっくりと流れていた。
なるほど…上は開いているのか…
続けてトウヤは周囲を伺った。
校舎の外壁は古びれたアスファルトでヒビが入っており、グラウンドには雑草が生い茂り管理され無くなって日が長い事が伺えた。
校舎からアーケード型の屋根が付く通路が別館のドアの外れた食堂へと連なっていた。
更には校舎の裏手には大きなグラウンド、そして壁の側には大きな倉庫と畑…こちらも長く管理されていないのか雑草が生い茂っていた。
そして、それら周囲を囲む大きな壁…その壁には汚れ一つ無かった事から新しい物だと判断できた。
壁は見る限り正方形をして居たが校舎正門の左の角だけは隆起していた。
壁の周りには二、三百人は人が居た。
どうやら他の教室にも同様に人が居た様だ。
…この人数を一体どうやって連れて来たんだ?
いや、何のために?…誰が?
周囲の確認を終えたトウヤは1人、何故ここに閉じ込められたかの仮説を立てた。
まず一つ目はあのディスプレイで男が話していた様に俺達を守る為に隔離した…。
守る…一体何から、ウイルスとか地球環境の変化とかか?
二つ目…実は仮想空間でゲームか何かの途中…。
そして、三つ目余り考えたくは無いが…俺達の命賭けの生を見て楽しむ、富裕層達の娯楽…。
一つ目であれば自分達でルールを作れなんて危険な事は言わないだろう…やはりアレはどう考えても嘘だ。
トウヤは自身の手を見つめ確認する様に指を動かした。
次に二つ目…無理がある、だいたいゲームならばゴールか何か示されるだろうがそれも無い…ましてや記憶を奪う事は出来ないだろうし、この感覚どう考えても現実だ。
となると三つ目の確率が1番高い…絶望的ではあるが『平和』な内に早く備えないとな…
そういえば国と認められたと言っていたが名称も聞いていない。
一方的に隣接する国に鎖国された国…
『サコク』とでも呼ぶか。
トウヤが考え込んでいると食堂の奥の壁を男が蹴っていた。
「クッソ…抜けれるとこねーじゃねーか!」