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カイル大将軍

私はカイルと言います。


今は帝国の大将軍となっていますが、私だって駆け出しのひよっこの時があったんですよ。


今はもう平和になりましたがね。


マーラ王国と戦争をしていた時期があるのですよ。


今から二十数年前、必死で帝国がマーラ王国と戦っていた時代がありましてね。


今の時代じゃあ考えられないと思いますよ。



もういろいろと絶望しましたよ。そりゃそうですよ。


なんたってマーラ王国はその時代大陸中の国を制圧してもう残りは帝国だけとなっていましたから。


私も一般兵から必死に努力して部隊長に成り立ての時期でした。


死ぬかもしれないと思ったことはその時でしたね。


周りの部下や同僚、上官までもが圧倒的な物量になす統べなく倒れていくのですから。


マーラ王国から攻めてきた兵は殆んどが小銃でしたけど、見渡す限り地平線を埋め尽くすほどの人の数でしたよ。


後に知るんですがあの時対峙していたマーラ王国の兵力は30万程でした。ガルド前線だけでですよ。


こちらの帝国兵は5万、他の前線も似たり寄ったりと言われていました。



部隊長に成り立てでも、まだまだ軍では下のほうでしたからまだ覚悟なんてしていなかった。


武器の質では圧倒的にこちらが有利でしたから他の兵士も同様に覚悟なんてなかったんですよ。


死ぬかもしれないと思ったのはマーラ王国と戦い始めてからでした。


数の暴力とはこのことを言うのでしょうね。


倒しても倒しても倒しても…まだまだ攻めてくる敵兵。


気がつくと自分の周りには血を流している者ばかり。


堀を何重にも掘って守りを固めていても対処しきれない数ですよ。


それでもなんとか必死で持ちこたえてましたよ。


なんてったってこれでも部隊長でしたからね。


頑張りましたよ。


自分の部隊の仲間を忘れるはずがありません。


休息の為の部隊の入れ替えをして前線から後退するときに初めて気がつきました。


部下が半分しかいない。


100名が50名ほどしかいないんですよ。


悔しさと哀しみとかいろいろ込み上げてきて。


駄目ですね。今でも顔が思い浮かびます。


ガルド前線での戦いをなんとか凌いで1ヶ月くらいでしたか、それくらいで連絡が届いたんですよ。


違う前線、ウルド前線のほうがなんと敵を一時的に退けたと。


そして奇妙な情報も伝えてきたのですよ、神様が遣わした音楽隊がいたとか、諦めていたが神の奇跡を目の当たりにしたとか。


どういうことか分からなかったのですが数日後に私も目にすることになったのです。


私の部隊が休息中の出来事でした。


私の部下の怪我の具合を見に医療テントへ向かい、部下と話が終わり前線へ戻ろうとしたときでした。


「ちょっと君いいかな?」


なんて声をかけてきた人がいました。


自分に声をかけてきた人はなんと中隊長殿であったために驚きました。


中隊長以上の階級の人がまだこの場所に居たのだと一瞬思いましたがどうやら違ったみたいでした。


なんと音楽隊を率いている方で医療テントのほうに用があるというのです。


数日前にウルド前線から伝えられた情報に音楽隊の情報があったと思いましたが、そのときの自分はよく知らないまま音楽隊の行動を見ていました。


そのときの光景は未だに覚えてます。


忘れることが出来ないですね。


絶望しかなかったガルド前線で希望が見えたと思いましたよ。


重傷を負っていた兵士達の傷が無くなっていくのです。


神様の奇跡とでも呼べる光景を目の当たりにした我々帝国兵の士気の上がりようと言ったら…もうすごかったですね。


戦争に勝って、また、愛する家族に会えるかもしれない。


そんな可能性が見えたからこそ帝国兵は士気が上がったのでしょうね。


音楽隊は聖楽隊、帝国の聖楽隊なんて呼ばれ始めたのはこの時ですね。


帝国聖楽隊天晴れ。


帝国はこの方々がいる限り負けない。


そんな時代がありました。


あったから今があるのです。











ああ、音楽隊の方々ですか?


あれは本当に残念でしたね…






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