マーラ王国夕食会
「みんな準備はいいかな?」
音楽隊全員は正装をして整列していた。楽器は前もって食事会場の演奏スペースに配置してある。
あとは合図がくればいよいよ入場して演奏するだけとなっている。
「ルーク様、心の準備まで済んでおりますよ。」
「ええ、そうでさあー、ここからが俺らの見せどころでっさ!」
セレンとロイが応えてくれた。
その言葉に他の人たちも頷いている。
すると、会場の警備兵が近づいてきてルークに声をかける。
「音楽隊の方々、お入りください!」
「はい、じゃあ皆行こう!」
会場に入るとマーラ王国のゼラルド国王、帝国宰相ラキュールの姿が確認できた。
その他は挨拶出来ていなかった為、名前や顔は知らない者が多かったが大半はマーラ王国の重鎮達だろうことが高級そうな服で判る。
「あれがそうなのか?」
「ほう、あれだけの人数いるのか…」
「我が王国でも音楽隊は欲しいものですな。」
「演奏がどのくらいすばらしいものか見せて貰おうか。」
思い思いに話している人たちがいるが気にせずに音楽隊全員配置に着く。
皆覚悟をしているとはいえ、これから起こるであろう状況を考える。
一応帝国側の警備兵にはラルク大隊長も含まれているので多少安心できるがやはりルーク自身も恐怖をほんの少しだけ感じていた。
(これからやるんだよな…)
皆の演奏準備が終わるのを見届けるとルークは食事している人たちに向け一礼する。
すると拍手が起こり、止むのを待ってから音楽隊に向き直る。
指揮者台に立ち演奏を開始させる指揮棒を握る。
幕明けの時間だ。