マーラ王国の革新派
マーラ王国国王ゼラルドとヴァイラス帝国宰相ラキュールの二人で話し合いが行われていた。
「すまないな、その条件はのめんよ宰相殿。」
これで、何回断られたか数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいにはしてやられている宰相ラキュール。
再度頭の中で計算し和平同盟の許可を貰うためにどのように進めていくのか導き出す。
「ゼラルド国王様。あなたの望みは何ですか?」
「……それはな、この大陸の安寧だよ。」
この国王は鼻から和平同盟交渉などするつもりはないと最初に会ったときとはうって変わった態度を貫いていた。
「大陸の安寧ということであれば帝国と友好的なこの和平同盟を結べば済むのでは…」
「そうであろうな、しかし帝国は信用足る国かを見定めない限りは首を縦に振れんな。」
なぜ国王はこのような強気に出れるのかが判らなかったラキュールはどう説得したものかと悩んでいた。
「ラキュール殿、我が王国も好きで敵対したい訳ではないのだ。」
「…そうですか、ではどうしたら和平同盟を結んで貰えますか?」
一応この交渉が決裂しそうなときのために音楽隊を引き連れてきた宰相ラキュールだが、それはマーラ王国国王ゼラルドが話が通じない人であったときと決めていた為なんとか話し合いで解決したいと考えていた。
「ふむ、そうだな…そういえば音楽隊を連れてきておりましたなラキュール殿。是非ともルーク殿率いる音楽隊の演奏を聴かせていただきたいですな!」
「…ええ、それは勿論帝国として友好の証としまして是非とも帝国軍音楽隊の演奏を楽しんでいただきましょう。」
願ったり叶ったりな状況に自ら進んでくれたゼラルド国王に内心感謝をするラキュール。
「それでは音楽隊に準備させます。いつ頃がよろしいでしょうか?」
「ふむ…そうですな、本日の夕食なんかはいかがかな?我が王国で取れた食材を是非とも食べて貰いたいのでね、その合間に曲を披露していただきたいですな。」
「ではそのように手配させます。」
「では本日はここまでということでまた夜にお会いしましょう。ラキュール殿。」
二人とも握手を交わしその場ではお開きとなった。
宰相ラキュールはそのままルークが宿泊使用している部屋に向かう。
コンコンとドアをノックし返事を聞かずに入る。
「失礼するぞ、ルークよ!」
「…デハード様みたいに入ってこないでくださいよラキュール様。」
ここ数日でラキュールとも仲良くなったルークは畏まらずに話せるようになっていた。
「それでこちらへ来たということは…」
「ああ、音楽隊に頼むことになった。」
ルークはやっぱりこうなったかと思ったが、まだ音楽隊全員が死ぬことが確定している状況ではないと頭を働かせていた。
「日時はいつですか?」
「今日の夕食会の時だ。私はゼラルド国王と一緒に飲み食いするからその時に演奏してほしい。」
「なるほど、わかりました!」
そう返事をしたルークは準備を始めるのだった。