マーラ王国国王の思惑
~マーラ王国視点~
マーラ王国国王ゼラルドはやっと集まった帝国調査報告書を見ていた。
「なるほどな、音楽隊が帝国軍兵士を治療していたと。」
「しかし、そんなお伽噺の話みたいなことなどあり得るのですか?」
そう聞くマーラ王国ゼラット将軍。
「いや、信じねばなるまいよ。そうでなければ帝国軍が持ち直した理由に説明がつかんからな。」
「今回の和平同盟交渉には帝国宰相の他に音楽隊が同行しているようです。私が接触してみますか?」
「いや、音楽隊が来るのであれば何か理由があるはずだ。それが判ってからでも遅くはないであろう?」
「そうですな。では直ぐに動ける直属部隊を交渉場所へ配置しておきます。」
二人は幼馴染みと言ってもいいくらいの小さいときからの関係性だった。
「ゼラルド国王。あなたにこの大陸の覇者として君臨してもらうまで私はこの身はあなたの剣として敵を切り裂きましょう!」
「ゼラットよ、久しいな、そのような言葉は。本当に。」
それは主従というより生死を共にする戦友みたいな関係であった。
「「マーラと共に!!」」
そんなやり取りをしていると帝国から和平同盟の使節団がやってきたと報告がマーラ王国国王の元へ届く。
~帝国視点~
「ここがマーラ王国首都カーラか、大きいな。」
「ええ、ここまで大きい町並みなんて私は見たことがありませんよ。」
ルークの声にセレンが返事をしてくれる。
たぶん、音楽隊全員こんな大きな町並みは皆初めて見るだろう。
「じゃあ楽器のメンテと準備よろしくね!」
「「はい!」」
ロイとセレンが応えてくれる。
「僕は宰相様と共にマーラ王国国王に挨拶してくるよ!」
「はいはい、了解ですぜ!」
「はい、お気をつけていってらっしゃいませ。」
宰相ラキュールが待っている部屋に向かう。
「お待たせしました。ルークです!」
「うん、入りたまえ!」
ドア越しに声をかけたが直ぐに入れてもらえた。
「ルークよ、それではこのまま国王様へ挨拶に向かおう。良いか?」
「はい、勿論大丈夫です。本日は挨拶だけでしたよね?」
「ああ、では向かうとするか。ラルクよ、私とルークを守ってほしい。」
「はっ!必ずや命に換えましても。ルーク殿もキチンとお守りしますので安心してくださいな。」
「…そうですね、ラルクさんなら安心ですね!」
ルークとラルクは初めてあってからは顔を会わせる度に打ち解けていき、今回のマーラ王国遠征でがっつり話す機会が道中にあった為お互いに信頼できる関係になった。
軽くラルクとも話しながら宰相ラキュールと共にマーラ王国の謁見の間へと進む帝国側少数。
宰相ラキュールはマーラ王国国王ゼラルドと軽く挨拶をし、今度はルークの番になった。
「私はルークと申します。音楽隊の代表です。よろしくお願い致します。」
「ほう、そなたが帝国の救世主であるか。」
「…救世主など、そのようなことはありません。出来ることを少しずつでもと我々音楽隊はやってきただけのことですから。」
「そんなに謙遜せずとも良い、今回の戦争では迷惑をかけたな。」
少し悲しそうに発言する国王ゼラルドはとても演技には見えなかったが…。
宰相ラキュールはお互いに挨拶が済んだから早々に切り上げようとする。
「ゼラルド王様、では本日はこれにて失礼します。明日に改めて話し合いましょう。」
「そうか、ではまた明日に宜しく頼む。」
ラキュールは国王ゼラルドの態度でルークと関わらせるのは危険だと判断した。
二人揃って謁見の間から出てつぶやく。
「「嘘くさいな!!」」