音楽隊出発
出発日当日、音楽隊一同は帝国軍の小ホール劇場前に整列していた。
「皆!一応やることは伝えたけど、マーラ王国に入ったらもう後戻りはできないよ!大丈夫?」
「「「「「はい!」」」」」
「ルーク殿!皆はもう覚悟はできております。」
「ルーク様。ここで逃げる我々ではないですよ。」
三日前に既に決意を固めている音楽隊全員はルークにとっては心の支えとなると感じていた。
「では、その場で待機ね!宰相様が来るまでもう少し待っててね!」
「「「「「「はい!」」」」」」
その頃宰相ラキュールはデハード大将軍に捕まっていた。
「デハード殿。そろそろ私は音楽隊の所へ向かいたいのですが…」
「まあ、待てラキュールよ。君は音楽隊の力を疑っていたな?」
唐突に切り出すデハード。
「はい、実際にまだ見てはいないので。」
「音楽隊も今回の曲は敵に対して初めて演奏する曲なのだ。」
「そうなのですか?しかし効果は実証済みですよね?」
「ああ、ありすぎるほどにな。音楽隊一人ずつ検証確認したそうだが正直やる方も受ける方もキツいらしいとルークから聞いている。」
ルークからの報告書を見たときはデハード自身も驚いた。
効果がここまで強いと思っていなかったのだ。
「それほどまでのものですか、なるほど。つまり、音楽隊の作戦はほぼほぼ成功する可能性が高いと?」
「ああ、しかし演奏曲の効果を敵側に見破られる時間が早いと音楽隊は壊滅する。」
音楽隊が原因ということがマーラ王国側にバレてしまうと一気に被害が出ると予想するデハード。
「デハード殿、承知した。一応今回の和平同盟使節団の中には強い兵士も紛れているのでしょう?」
「おう、一応使節団警護の任務を任せているが、それの他に音楽隊もできる限り守るように命令している。」
ラキュールとしても帝国側に被害が出ることは避けたいと思っていたので、デハードからの言葉は有り難かった。
「ではそろそろ時間なので向かうとしますよ。」
「ああ、宜しく頼む!」
ラキュールはデハードに背を向け歩いていたが急に立ち止まり振り返る。
「デハード殿。話し方は今のほうがカッコいいですよ。」
そう言ってラキュールは急ぎ足で目的の場所へ向かう。
「……ルークにも同じことを言われたよ。無事に帰ってきて貰わねば感謝を伝えることもできないな。」
音楽隊一同が集まっている帝国軍劇場こと小ホール劇場の前に宰相ラキュールは小走りでやってきた。
ルークはそれを横目に見ながらロイとセレンに指示を出す。
「第四幸心曲!」
♫ ♪ ♪ ♩~
音楽隊の前にやってきたラキュールは先程までの急ぎ、焦った様子が嘘のようにキレイサッパリなくなった。
そして、ラキュールの心が癒され、音楽隊一人一人のこれまでの情景が見えた。
「なるほど、これはデハード殿が信頼するはずですね。」