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音楽隊の真実

「あの、ルーク様。どういうことか説明いただけますか?」



そう聞かれたルークは音楽隊全員の顔を見渡しながら真剣に自分を見ていることに安堵した。


「セレン、良い質問ありがとうね。」


ふぅーと息を吐いてデハード大将軍からの命令とその真実を話す。


「実は音楽隊は二通りの命令を貰っていてね。」

「二通り?」


「そう、宰相様が頑張って交渉してマーラ王国国王様とスムーズに和平同盟締結してくれたらそれこそ、今までと同じような定期演奏会になるよ。ただし、マーラ王国の国王様が締結されなかったらその時は曲を変更して演奏するよ。」

「「「「「「「………」」」」」」」


ルークのその言葉で音楽隊一同は理解した。

今まで音楽隊は戦地で四種類の曲の内、二種類の癒しや治す作用がある曲を演奏してきた。


それは演奏している音楽隊としても気持ちの面でも演奏したいと思える曲だったからだ。


しかし、残りの二種類はあまり演奏したくない曲となってしまっていた。

なぜなら、人に悪影響を及ぼすものだったからだ。

ルークは部下を無駄に死なせたくない一心で話を続ける。


「皆、今名乗り出るなら死なないで済むんだ。どんどん言ってきて欲しい!」


そう言って音楽隊の顔を一人一人見ているとセレンがルークの前に出てきた。


「セレンか、良いよ。君に待機命令を「馬鹿にしないでいただきたいです!!!」……っへ!?」


今まで一度も声を荒げることのなかったセレンにこんな言葉を言われると思っていなかったルークは気がつくと音楽隊全員がセレンと同じように怒っているのが目に見えてわかった。


「ルーク様!貴方は私達が全員ここに残ると、死にたくないから残るのだと思っていたでしょう?」

「……っ!」


「私はルーク様を支えたいと思ってこの音楽隊に志願したんですよ!他の皆も同様です!ルーク様はご自分一人でも向かうつもりでしたでしょうが、私達は誰になんと言われようが貴方についていきます!」

「「「「「「そうだ!」」」」」」

「馬鹿にするな!」

「一人でかっこつけようなんてずるいですよ!」

「そうですぜ、ルーク殿はまだまだ俺たちを引っ張って貰わなきゃいけないんでさ!」


ルークは思い違いをしていた。

音楽隊は、自分の部下達は、三ヶ月前までは卑屈になっていた彼らはこんなにも成長していたのだと気づかされた。


音楽隊全員からの言葉で自然と眼から雫がこぼれるルーク。

つられて何人かも同じようだった。


「あはは、皆こそ馬鹿だなぁ…命なんてこんなことに懸けなくていいのに。」

「ルーク殿、我らは他の誰でもないルーク殿だから命を懸けてもいいと思えるでさ!」

「ロイ君、こんなときくらい、まともな言葉遣いをですね…」



わいわいガヤガヤと音楽隊の一人一人が楽しそうにしている光景を見て、ルークはできる限りのことはやってみようと思うのだった。



「皆聞いてほしい!ありがとう!」


音楽隊全員は照れ顔を見せながらも静かにルークに向き直る。


「正直な話、高い確率でマーラ王国国王は和平同盟締結に反対すると思うよ。したがって僕らのすることは国王やそれに従っている者達に第五○○曲を演奏すること。以上だよ。」

「やってやりますか!」

「音楽隊の実力をマーラ王国に見せてやりましょう!」



張り切っている音楽隊にルークは声をかけ離れる。


「じゃあ、楽器準備をよろしくね!出発は3日後の予定だからしっかりメンテナンスをしといてね!僕はデハード様のところへ行ってくるから!」

「「「「はい!」」」」

「お気をつけて!」

「行ってらっしゃいませ!ルーク様。」



デハード大将軍の執務室へ向かう道中、不可解な動きを見せる人がいた。

なにやら、水らしきものをが入った容器を持ってデハード大将軍の執務室前のドアに聞き耳を立てている。


「あの!何かデハード様に用事ですか?」

「…………」


返事がない。死んでいる訳ではないようだが。


「あなたの持ってるものって何ですか?」

「……………フヒャヒャフヒャ。」


ヤバい人がいる。

こんな人が帝国軍関係者な訳がないと対応を考えるルーク。

通路の奥からこちらへ歩いてくる人が見えた。


「あれは…宰相様か!」

「………できる!次こそはできるぞ!ヤツにこの液体を飲ませれば……フヒヒヒ。」



こんな人の近くにいたくないと思い、こちらへ歩いてくる宰相ラキュールに自ら近づいていき話しかけるルーク。


「宰相様!お久しぶりです。ルークです。」

「おお、君か!久しいな。君にも用があったので丁度いいな。デハード殿の所へ向かわないのか?」


「向かいたいのは山々なんですが、ヤバい人が執務室の前に居て…」

「………あんなヤツ私もみたことないな…どうしたものか。」



宰相ラキュールとルークが会話している間にも先程までと同様にラリってる人がドアの前に佇んでいる。


「………フヒャヒャフヒャ。フヒヒヒ。……」


意を決して肩に手を掛け話しかける宰相。


「君!何を持っているんだ?」

「…これか?これはな~、ヤツに飲ませるため改良した植物栄養剤だ!!普通の人間なら害悪だがヤツなら別だ。人類の進歩だよ!!!…被験体は多いほうがいいな…お前ら二人も飲んでみてほしいなぁ~。」


「………」

「………」


今抱えている問題はマーラ王国どうこうじゃなかった。

帝国軍はもう終わりのようだ。

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