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マーラ王国

「これはどういうことだ?ゼラットよ?」


そう怒りを抑え静かに問いただす一人の王。

マーラ王国国王ゼラルドである。


「はっ!帝国はどうやら戦力を追加で投入し徹底抗戦の構えを見せてきました。前線全てです。」

「それで?その結果がこれとは話しにならんぞ、詳しく話せ。」


部下からの報告で各前線での被害報告を聞いたマーラ王国国王ゼラルドはなぜこうなったのかと問いただす。

話を聞く相手は今回の対帝国遠征軍指揮を一任しているゼラット将軍である。


マーラ王国国王は軍事に関わるものは理解できる国王であった為に部下からの報告を聞かないことには責任は取らせられないと考えていた。

その為、部下一人一人の報告もしっかり聞いた上でこれからの作戦を立てるつもりであった。


「ウルド、ガルド、ボルド前線の三つは開戦当初からこちらが有利でした。しかし一ヶ月程経ってからはあっという間にこちらが不利な状況になってしまいました。」

「もう一つのクルド前線は帝国軍への囮、他の三つの前線が本命だったな?それらの前線で被害を出した理由はなんだ?」


「理由は二つありました。一つは何者かによって帝国軍の士気が異様に高くなったこと。そして、もう一つの理由ですが、推測ではありますが密かに即時投入できる戦力を敢えて温存しておいて一ヶ月経ったこのタイミングで投入した、ということです。」

「ん?それはおかしいだろう。戦力を温存しとくなど防衛をしていた帝国軍にそんな余裕はない筈だぞ。」


「…その通りですね、しかしその帝国軍士気上げと戦力投入がほぼ同じタイミングで行われており、そうとしか考えられないのですよ。」

「これは正確な情報が欲しいな。帝国に密偵を送り込め。」


「はっ!」


国王は近くに控えていた部下に命令を出し、またゼラット将軍との話しに戻る。

マーラ王国は国王の全権によって動いている為に少人数での話し合いしかしない。


「情報が入るまでは軍は動かせないな。」

「そうですね。」

「仕方ない。全兵士を帰還させろ!」


国王は今度は控えていた別の部下に命令を出す。


「はっ!全部隊帰還させます。」


「ゼラットよ、今回の責任は不問とする。」

「はっ!」


マーラ王国国王は自分の考えたことを直ぐに実行出来るように部下を適材適所に雇用や配置していた。

これによって素早く動けるマーラ王国軍は帝国以外の国を準備が整わないまま攻め落としたのである。


「とりあえず、建前だけで和平交渉は進めておくか。」





~帝国側では~


暫くしてマーラ王国全軍が各前線から王国領土に撤退して行ったと報告を受けたデハード大将軍は一言。


「流石に早いな、やはり他国を落としただけはある。」


などと口にしていた。

程なくして電報にて音楽隊のルークから報告が届く。


「クルド前線立て直しました。どうしますか?」


デハード大将軍は音楽隊の報告にニッコリと笑いながら電報にて返答する。


「ベルンに戻ってきていいよ!」





一通りの仕事を終えたデハード大将軍はコーヒーを飲み干す。







「にょーほほほバババー」



口からコーヒーを吐き出すデハード大将軍。

今日のコーヒーは自分でたっぷりどっぷり砂糖を入れたはず。

なのになぜ?こんなにもまずい、しょっぱいのか?



コンコン、とドアのノック音が聞こえた。

返事をしようにも出来ないでいるとドアが開けられ、この前自己紹介されたドナードが入ってくる。


ニタニタ笑いながらこちらの様子を伺っている。

ま、まさかこのワシに毒を?と考えた直後。


「デハード様、すみませんねぇー。そちらの砂糖を入れている容器ですが昨日間違えて塩を入れてしまったんですよ!これはうっかり、ついつい間違えてしまったどうしましょうねー?」


そんな事を言いながら水?を渡してくるドナード。

それを直ぐに受け取り飲むデハード大将軍。


「ごくごく。ん?まあ、いいか!」

「な、なんだと?それを飲み干せるのですか?」


焦っているドナード。

気にせず飲み干すデハード大将軍。


「ありがとう?お陰で助かったよ!そういえば君の名前はなんだったかな?」

「………ドナードです。…作戦本部所属の。」


「ああ、そうだったか?すまない、ワシは人の名前を覚え」

「私は用事があるためここで失礼します!!」


被せぎみにセリフを吐いて行ったドナード。


本日はデハード大将軍の勝利。




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