商業都市ボルドへ
ルークはボルドの街の中規模商会の会長達に連れられて個室がある高級レストランへとやって来た。
「ささ!ここは遠慮せずに注文してくださいませ。」
などとハワードが言ってきたが部下たちに楽器の片付けなどを押し付けてしまっているからか、呑気に食事しようとは思っていなかった。
「いえ、まだ音楽隊でやることが残ってますので本当に少しで大丈夫ですよ。」
「いやはや、あれだけの演奏を聴かせて貰ったのですからお礼をさせてください。」
「そうですよ、我々は初めて音楽がこんなにも素晴らしいものだと感じたのですから。」
「まったくですな、商人足るもの物だけではなく音楽にも精通していないとと思わされましたからね。」
ルークは先ほどの演奏した曲の効果を分かってくれた人が居たのだと感じ、嬉しくなった。
「実は、ボルドの街のことについてデハード大将軍から頼まれていたことがあったのですが…」
「おお、それはそれはこちらからもお話しなければと思っていたのですよ。」
それはどういうお話ですかと前のめりになりそうだったが抑えた。
商人達から好意的な視線を感じたため、悪いようにはならなさそうだと思い話しを聞いてみた。
「まずはお三方からお話しいただけますか?」
「はい、それでは私が代表でお話し致します。」
とハワードから説明された。
「実はですね、元々帝国軍ではなくマーラ王国に肩入れするつもりでおりました。」
「ということは今は…」
「はい、あなた方の演奏を聴かせていただいて心変わりしまして、我々ボルドの街の中規模商会は全力で帝国軍をサポートいたします。」
「演奏を気に入って頂けたようで良かったです。」
「はい、帝国は必ず平和になるのだと確信しました。帝国軍音楽隊を信じます。」
「はい、その為には音楽隊だけでなく帝国軍一同精一杯できる限りのことはやっていきます。」
こんなにも商会の人から言って貰ったら頑張るしかないなと決意するルーク。
「ではその後のお話なのですが。実はですね、このボルドの街を我々の商会主体で大規模な改革をしようと思っておりましてね。今までは大規模商会がおりましたが戦争で他の街に行ってしまった為、我々中規模商会が纏めざるを得なかったのですよ。」
「なるほど、そのような経緯があったのですね。」
「はい、それでこの街は元々商業が盛んではありました。ですから今までを越える規模の商業都市として発展させようと商人一同考えておりました。」
「なるほど、読めました。帝国軍は直々に皇帝陛下からこのボルドの街の大規模改修の許可を貰っています。帝国軍と足並みを揃えてボルドの街の改革・改修をやりたい訳ですね?戦争が終わった後に帝国軍がボルドの街とその他の街との連携の為の道路整備を国家事業として動く予定ですからね。」
「はい、その通りでございます。流石ですね。ルーク中隊長殿。」
「いえいえ、そこまで褒めて頂かなくても大丈夫ですよ。街の発展を成し遂げたら帝国としてもかなり良い効果を生みそうですね。」
「やはり、帝国軍音楽隊を率いている方は頭も回るのですね。やはり敵にしなくて良かったですよ、本当に。」
ルークとしても商人達ががあっさりと悪人や敵にならずに、帝国軍と手を取り合いボルドの街を発展させていくことにとても安堵した。
音楽隊の演奏を気に入って貰って本当に良かったと心の中で思う。
その後は暫く他の前線での音楽隊の様子や、美味しい食べ物などの話で談笑することができた。
三人と別れた後に、戦後の未来へ向けて、やるべきことをしっかりやろうと決意を新たに動き出すのであった。
その頃のデハード様はというと。
「うーむ、ルーク君達の活躍であともう少しで戦争終結できそうなのだが…」
手元の資料を見ながら、ルーク達、音楽隊に所属の部下を思い浮かべていた。
「出来ることならワシが…」
いろんな考えを巡らせるもののまだ良い案が浮かばないデハード様。
「こんな大人になどなりたくなかったものだな…」
仕方なく音楽隊のこれからを左右する決断を下すデハード大将軍。
皇帝陛下の許可を貰いに行くデハード大将軍はいつもの子供っぽい言動とは違い、真剣な面持ちで歩いていく。
せめて戦争終結までは――――と願うことしか出来ない大将軍であった。