まだ、希望はあるはずと
ボルドの中規模商会のハワード、ラムソン、タイラーは広場のステージにて演奏していた音楽隊を見つけ隙を見て話しかけようと近付いて行った。
近付いている途中で三人の足が止まる。
自分の意思に反して動けない…訳ではない。
「心地良いな…」
「癒される…」
「幸せですな…」
三人とも音楽隊の曲によって心が洗われて綺麗になっていった。
音楽隊の演奏が終わると割れんばかりの拍手喝采が鳴り響き、中には涙を流すものまでいる。
「帝国軍音楽隊ですか、辛かったでしょうな…」
「我々も何か力になりたいですな…」
「最近は私こういうのに弱いのですよ…」
三人とも涙もろかった。
ルークは音楽隊一同を起立させ、反転してお辞儀をする。
ルークがお辞儀をした後に一斉に一同もお辞儀をする。
それを見た市民達は音楽隊に微笑みながら声をかける。
「最高だったぜ!人生で一番な!!」
「あなた方は心からの聖人ですね!」
「今日は気分が晴れやかですよ!ありがとう!」
「かっこよかったよ~」
「帝国の未来は明るいぜ!」
音楽隊は顔を上げそのまま端の人からステージ横に去っていく。
ルークは指揮者台から降りて観客に手を振る。
こんなに沢山の人が集まると思っていなかったルークはこの光景を音楽隊の皆に見せたかったんだったと今までの日々を振り返る。
まだ、戦時中ではあるものの、帝国の勝利が見えて街の人が喜んでいる。
自分達の音楽が人の癒しになっている。
戦争が終わってからもこんな活動がしたいと思ったルークは終わりの挨拶をする。
「ボルドの街の皆々様。いかがでしたでしょうか?」
良かったよーなんて声が聞こえるが気にせずに話すルーク。
「我々帝国軍音楽隊はウルド前線に始まりガルド前線、そしてボルド前線でも音を鳴らし続け兵士に希望を与えることが出来ました。」
真剣に話を聞いている市民や帝国軍兵士。
その中の三人組の人が涙を流し首をブンブンと上下して頷いている。
「しかし、まだ後1つ前線が残っています。そちらに我ら音楽隊が赴きそちらでも出来ることをやってきます。本日はあなた方の顔を見られて良かったです。こんなにも音楽隊のことを考えてくれる方々がいるのだと分かりました。我々帝国軍音楽隊は音楽で演奏で曲で戦争を終らせます。どうか、見ていてください!本日は本当にありがとうございました。」
再度割れんばかりの拍手と歓声を浴びてそのままステージ横に退避したルーク。
すると、ルークに涙混じりに詰め寄ってくる音楽隊一同。
ルーク様のお話感動しましたと何人も興奮した様子で声をかけてくる。
「流石ですな!ルーク殿。」
とロイが言うと
「ええ、本当にルーク様が上官で良かったです!」
とセレンが声をかけてくる。
ルーク本人としては音楽隊の、部下達の頑張りを少しでも市民にも分かって欲しかっただけなんだよと思っていた。
そんな、良い雰囲気の場所に入ってくる三人組。
中規模商会のハワード、ラムソン、タイラーの三人組はまだ目をウルウルさせながら声をかけてきた。
「音楽隊の指揮者の方ですね?」
「はい、そうですがあなた方は先ほど演奏を観ておられた…」
「はい、このボルドの街に商会がありますハワードと申します。」
「同じくラムソンです。」
「私も同じくタイラーです。」
まさか、こちらから後で話そうと思っていた商人の人達だったとは。
「詳しいお話は場所を移してからに致しましょうか?」
「そうですね。ロイとセレン、後はお願いできるかな?」
「はい、了解ですぜ!」
「はい、承知しました。」
そのまま三人組の商人についていくルーク。