争いはどこまで
「衛生兵!!」
「もう駄目だ!前線がもたない。」
「退却するぞ!!」
「将軍!持ちこたえられません!」
ここはとある戦場、銃火器や砲弾などが飛び交い敵味方問わず血を流していないものなど殆どいない。
「衛生兵!衛生兵!!」
「駄目だ、止血しろ!!」
「まだ戦える!小銃構え」
ズドーーン!!!!!
「小隊長!!」
「グワー!!!」
「いてぇーよ!!」
「助けてくれー!!」
もちろん助けなど来ない。ここの戦場だけでなく各地の前線防衛戦地は増援どころか武器、弾薬、医療品その他諸々足りない。衛生兵などほとんどが敵に殺られている。そんな状況にあった帝国兵。
しかしそんな彼らを圧倒的窮地から救う者達が現れる。
「音楽隊第五交癒曲!!」
♫ ♪ ♫~
管楽器だろうか?シンバルの音だろうか?ヴァイオリンの音だろうか?
知らない音。知らない曲。しかしなぜか身体が癒されていく。
気がつくと自分たちの傷が癒えている、それどころか折れた骨など簡単には治らない筈の怪我まで治ってるではないか。
そう、帝国側から聴こえていた曲を聴いた帝国兵達の傷が癒え、前線に復帰していく者が多くなっていった。
対峙していた敵国マーラ王国の兵達は、帝国兵達の様子に戸惑い、段々と不利になっていく戦況に混乱し、逃げていく者まで出始めた。
「帝国はまだ負けちゃいない。」
「まだまだ戦えるぞー!」
「うおー!」
その日初めて帝国領土縮小が止まる。
帝国側の勝利に喜んだ兵達は癒してくれた音楽隊に礼を言った。
帝国の聖楽隊万歳!
魔法などない世界で音楽で人を癒すことなど今まではどこの誰にも出来ないことだった。それが出来る人、音楽隊に向けて聖人達と持て囃し、帝国の聖楽隊等と呼ばれるようになる。
兵士は思う。
帝国はまだ負けていない。
大陸全土にマーラ王国が争いを起こそうが帝国だけはなにがなんでも屈しない。絶対に。