みてごらん 秘密会議 (夏)
みてごらん 秘密会議 (夏)
♪めだかの学校は川の中
そーっとのぞいてみてごらん
みんなでお遊戯しているよ♪
秘密基地ができたのは、児童館「めだか」。
ゲームをこっそりやるための場所だった。
きっかけをつくったのは、ほかならぬ厳島哲郎。でも、最近は姿を見せない。
凛は、工作がしたくて児童館「めだか」へ行く。春江にくっついて。
始まりは、凛のおばあちゃん伸子が旅先から送ってくれたお菓子の箱。海外のその箱は、捨てるにはもったいなくて、凛は「何か素敵なものが作れるかも」と思った。
そのとき、ちょうど出会った子どもたちが言った。
「それ、秘密基地にぴったりじゃない?」
「『めだか』の中に、特別な場所をつくろうよ!」
常連の子たちは、春江たちの目を盗んで、ゲームができる空間がほしかった。でも、新しく来た子たちはそんな事情を知らず、ただ基地づくりに夢中になった。
けんちゃん、そして一つ年上のあかねちゃんも加わる。三人で「プロジェクト・凛」が始動。
基地には、リビング、台所、そして三人それぞれの部屋もできた。
凛の部屋は、異国の香りが漂う不思議な空間。おばあちゃんから届いた段ボールには、見慣れない外国の文字や大判の布が入っていた。
「これ、壁にしよう!」
凛のひらめきで、たちまちカラフルな空間ができあがった。
けんちゃんは、日本の箱を集める係。自分の家だけでは足りず、近所にも声をかける。「けんちゃん、この箱、どうだい?」と春江の相棒の児童館のスタッフまで協力してくれた。
そして、ひときわ未来をかんじさせたのが、あかねちゃん。
あかねちゃんは、牛乳パック集めに夢中。一リットルパックをメーカーごとに分け、詰め物をしてまるでレンガのように積み上げる。
「これなら、しっかりした壁になるね!」
牛乳パックで作られたその世界は、一リットルサイズの長方形が、まるでドイツの街並みのように、きちんと並んでいた。無駄がなく、でも、どこかあたたかい秩序があった。
重さを持った、ひとつの「部品」。
「リットル牛乳レンガ」の作り方はこう。
水をジップロックに入れて空気を抜き、ぴったりと封をする。それを空の牛乳パックに差し込めば、たちまち重みと安定感を得た“レンガ”がひとつ完成する。あかねちゃんは、その重さをメダカのうがいコップ2杯分で測る。ときには4杯分の「ヘビータイプ」も作って、基礎部分に使う。
「ヘビータイプ」の名は、じゅうしょう(「十勝」)基礎部には牛が並ぶ。
牛乳パックという単位が、まるで積木のように整い、整然と並ぶ姿はまさに未来都市の骨組み。メーカーごとの違いを活かして色味のパターンまで設計されたそれらは、ただの廃材ではなく、誇り高き建築素材になっていた。
ひんやりとした重みが、箱の底にしっくりとおさまると、それはもう、ただの箱ではなりあかねちゃんの作った未来資材。
秘密基地づくりの最初にあかねちゃんたちが作ったのは、じつは“ロッカー”だった。
ドジャースのロッカールームにあるような、大人のプロ仕様をまねた、憧れの棚だ。
「ランドセルをここにおいてジャンバーはここ!」
「ぼっこがあればいいね。」
(ぼっこってなに?)
次の週行ったら、棒がとおされていた。
「ペッパーさん。ランドセルは、ここに、おくことにするよ。」
けんちゃんが自慢げに見せると、春江は思わず手を叩いて笑った。
「すごいじゃない、かっこいい!」
「はいってくるときは、ノックをしてね。」
秘密基地のスペースはひろまていった。大人たちに「秘密基地の中では、スマホ禁止」と張り紙がはられた。最終的には、給湯室だけしか、スマホはつかえなくなった。
牛乳パックでつっくった、ロッカーは、子どもたちの秘密基地の出発点となり、次第にキッチンやオフィス、カフェへと広がっていった。
秘密基地には“合言葉”があった。「ひらけぽんぽっきー」「おどるポンポコリン」「ひょっこりひょうたんじま」……。知っている子だけが入れる、特別なルール。
噂はすぐに広まり、基地は大人気に。三人は新しい仲間を迎え、にぎやかになっていく。
そんなある日、上級生の三人組が現れる。最初はルールを守っていたが、自分たちの合言葉を作って基地を占拠しはじめた。
「なんか、ちょっと違うかも……」しういつつも、
あかねちゃんたちの、新しい冒険の扉は、もう開かれていた。
秘密基地が完成すると、子どもたちは「おままごと」にたどりつく。けれど、令和のおままごとは、ただの家庭ごっこじゃない。
それは、「未来の街」づくり。
男の子も女の子も関係なく、基地にオフィスやお店ができていく。薬局カフェや「点滴ごっこ」も登場。上級生がこっそり持ち込んだドローンで、配達もできるようになった。凛のすてきな布の下も、ドローンがこっそり飛ぶ。
「未来の街をつくるには?」
子どもたちは真剣に考える。ソーラーカーやアミューズメント会社、そしてついには「ドームカラオケ大会」まで発案。
発案者は、凛とあかねちゃん。
きっかけは、おばあちゃん同士が大好きだった昭和のスター。SMAPにサザン……。五人揃ってのコンサートをまた見たい――そうつぶやくおばあちゃんの姿を、二人は見ていた。
「ママと伸子ちゃんのデートは、サザンとSMAPのコンサートなんだって。」
「札幌ドームで道民運動会があるなら、カラオケ大会もあっていいよね!」
大会はエントリー制、当日の観客投票で歌う人が決まる。おばあちゃんの好きな歌が、会場中に響く日を夢見て。
どうやって実現するか?
二人はお小遣いをためてチケットを作り、推しの芸能人に送ることに。資金集めの様子はYouTubeで発信。視聴者に応援してもらう作戦だ。
「芸能人が来てくれると。」
昭和の未来の歌が、はやりだした、秘密基地。
「めだか」川の中をのぞいてみると、、聞こえてくる。
「そう、僕たちが中心なら、スマホ禁止。大人も、スマホ禁止。っていうのは、どう?」
「いいね。」
「もう、返事きたよ。」
「スマホなしで、飛行機乗れるの?大人って、、、、、」
「うん、、、、、、?」
バケツの中誇らしげに
しゃんと胸を張っている
メダカたち
凛がつくった壁はとっても立体的。海外のチョコレートの包みの数々とそれをつつむアルミ箔でできたのれん。それが幾重にもつらなり、秘密会議場へ。窓から差し込む光がアルミ箔に反射して、きらきら光る。
会議する、メダカたち、彼らの表情は、きらきら光っている。