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第13章 ゴールではなく、向き合うこと

ぬかるみの森を抜けた先には、ゴールが見えていた。


けれど、そこに向かってただまっすぐ走ることが、今のふたりにはできなかった。


**


ぬかるんだ地面から手を引き、泥まみれになりながら「これで貸し借りなしだからな」と笑ったうさぎの言葉に、かめは言葉を失っていた。


ほんの数日前まで「勝ちたい」としか思っていなかった相手が、今は肩を貸してくれる存在になっている。それは、かめにとっても、うさぎにとっても、不思議な感覚だった。


「ありがと、うさぎ」


かめがそうつぶやくと、うさぎは一瞬だけ驚いた顔をした。


そして、ふっと視線をそらしながらつぶやいた。


「……別に、おまえを助けたわけじゃない。おまえに助けられたままだと、なんかムズムズするだけだ」


口調は相変わらずだったが、その言葉の奥には、確かな想いが込められていた。


**


ふたりは再び歩き出す。


もはや「勝ち負け」のために走っているのではなかった。


「うさぎ、今、楽しい?」


「……楽しいってほどじゃないけど、悪くはねーな」


それは、かつてのふたりには決してなかった会話だった。


一緒に走り、一緒に悩み、一緒に向き合う。


レースとは、本来こういうものだったのかもしれない。


**


ゴールまで、あと少し。


でも、ふたりは立ち止まった。


息を整え、同じ方向を見て、ふたりの間に流れる沈黙を大切にする。


「行くか、かめ」


「うん、うさぎ」


そしてふたりは、再び歩き出した。


**


勝ちたいから走るのではなく、向き合いたいから進む。


それが、今のふたりの「レース」だった。


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