表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

第10章 レース前夜 語り合うふたり"謝罪と理解"

静かな森の夜。

焚き火のぱちぱちという音だけが、ふたりの間に流れていた。


うさぎが小さく息を吐いた。

目は焚き火ではなく、地面の一点を見つめている。


「……あのとき、レースが終わって、お前に言ったこと。ほんとに……ごめん」


かめは顔を上げて、うさぎを見つめた。


「“お前のせいで退屈だった”って。あれ、嘘だよ。というか……ほんとは、自分でもよくわからなかったんだ。負けたのが、ただ……悔しくてさ」


うさぎの声は、少し震えていた。


「オレ、負けたのが恥ずかしくて、悔しくて、誰かのせいにしたかった。自分が眠っただけなのに、“お前が遅すぎたからだ”なんて言って……最低だった」


かめは焚き火に目を落とし、静かに言った。


「……僕も、声をかけなかったこと、ずっと引っかかってた。うさぎが寝てたのは、たしかにびっくりしたけど、もしかして具合が悪いんじゃないかって思った。でも……勝ちたい気持ちが先に来て、足を止められなかった」


うさぎは顔を上げ、驚いたようにかめを見つめた。


「……お前も、悩んでたのか」


「うん。ねずみに責められたときも、何も言えなかった。僕は“正しいことをした”って思い込もうとしてた。でも、心のどこかで、そうじゃないってわかってた」


うさぎは焚き火の炎をじっと見つめた。

その瞳の奥に、ようやく曇りが晴れていくような、やわらかな光が宿っていた。


「……明日、ちゃんと走るよ。今度は、お前のことも、オレ自身のことも、ちゃんと信じて」


「僕もだよ。うさぎと、ちゃんと向き合って走りたい」


ふたりは、静かに焚き火を見つめたまま、ゆっくりと目を閉じた。

その夜、森のどこかで風が優しく吹いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ